2011年8月19日金曜日

「推論のはしご」と「構造微分」でメンタルモデルをすりあわせる

自分や相手、あるいはグループ間で認識の違いから意見の対立(Conflict )が発生することは少なくありません。 


もちろんこれは、物事をどういった枠組みに基づいて、どういったプロセスで認識しているのか?という個人やグループの持つメンタルモデルに起因する話であり、解決策を探るためにこれをどのように擦りあわせれば良いのか?という話になってくるわけです。


それで、今日は、こういった対立解消を行うための具体的なフレームワークとしてクリス・アージリスの提唱した「推論のはしご」と一般意味論の「構造微分」について書いておきましょう。


メンタルモデルとは何か?

 メンタルモデルとは、私たちの心の奥に住みついているイメージや価値観、信念を含んだ認識の枠組みを指します。 (また、一般意味論で言う「地図は領土ではない」の「地図」に相当するものと考えても良いでしょう。)

 メンタルモデルは、私たちが世界をどのように観察するのか、意味付けるのか、という場合の枠組みとして機能し、その文脈での具体的な経験を形作るだけではなく、それを観察している認識の枠組み自体を強化していきます。 そして、メンタルモデルは、わたしたちが意識するしないにかかわらず、どのように行動するかというところにまで影響を与えます。

 日常生活やビジネスの場面でメンタルモデルが問題になるのは、ある個人、もしくは、このモデルを共有した組織において、メンタルモデルが非常に単純化され、文脈や状況を無視した「思い込み」によって結論が導かれ、そして行動に移される場合です。

 このとき、文脈や状況によって変える必要のある原則や常識は、いつしかその文脈や状況が忘れられた形式で固定されています。 このように文脈や状況を無視したメンタルモデルが支配的になると、しばしば文脈や状況を無視した行動が実行され、個人や企業の成長や学習を著しく阻害することがあります。

 そのため、わたしたちは、文脈に併せて都度メンタルモデルを検証することで、文脈に則したメンタルモデルを更新、獲得し続けていく必要があります。

 MIT経営大学院教授のピータ・センゲによれば、現在、個人もしくは企業のレベルにおいて、現在持っているメンタルモデルをよりよいメンタルモデルに変えていくために「内省」と「探求」が必要になることが指摘されています。

·           「内省」とは、認識主体の内側に意識を向け、自己再帰的意識(Self-reflexive Consciousness)を活用して自分のメンタルモデルがどのように形成されたのかそのプロセスに焦点を当て、それを明示することです。
·           「探求」とは、個人や組織の持つメンタルモデルを開放的に共有し、その背景にある前提、それから導かれる考え方についてダイアローグを通じて探求することです。

 センゲの著作である「フィールドブック 学習する組織『5つの能力』」によると、「内省」と「探求」を行うために、「推論のはしご」と,このはしごの段階に応じた思考を言語化して表現する「台詞」が紹介されています。[1]

推論のはしごLadder of Inference)=構造微分(Structural Differential)

 その文脈における、個人あるいはグループを主体とした「思い込み」を探るには、クリス・アージリスによって提唱された「推論のはしご」[2] が役に立ちます。

 推論のはしごは、その文脈における事実から、どのように情報が抽象化され、そして認識主体がどのような「思い込み」をつくっているのか?そのプロセスを明示している構造になっています。

 また、「推論のはしご」における情報処理のプロセスに着目すると、元々、一般意味論でアルフレッド・コージブスキーの提唱した、人が外的世界の情報を取り入れ、情報の抽象化を行いながら推論を行なって行く「構造微分」[3]の考え方と同等であることが理解できます。





 これらのモデルに共通することは、ある共通の出来事について、自分と他人の認識が異なる場合、推論のレベルにあると思われる、思考、信念、価値観、確信、結論などを見て話しあってもイデオロギー論争になって埒が明かないことを示しています。

 この場合、自分と他人の認識が異なる場合には、必ず、知覚で観察できる事実経験に立ち戻り、この場所で現象学的還元などの手法を使って、その事実や経験に対する解釈や意味付けを保留し、そして、その事実を観察する観測者の視点や範囲なども考慮した上で、再度推論のプロセスがどのように行われるのかをスッテプバイステップで明示、共有、再体験しながら合意の可能性を探って行く方法を取るということが有効であると思われます。 

文献


[1] 『フィールドブック 学習する組織「5つの能力」――企業変革をチームで進める最強ツール』 ピーター・M・センゲ、アート・クライナー、シャーロット・ロバーツ、リック・ロス、ブライアン・スミス=著/柴田昌治、スコラ・コンサルト=監訳/牧野元三=訳/日本経済新聞社/2003年9月(『The Fifth Discipline Field book: Strategies and Tools for Building a Learning Organization』の邦訳)


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