2011年8月22日月曜日

論理階型とマインドの理論(その2)

 昨日に続いて、今日も「論理階型とマインドの理論」について書いておきます。


 余談ですが、欧米のコーチングやファシリテーションの方法論もきちんとしたものはその根底の理論として何らかの認識論(Epistemology)に基づいて組み立てられていることがほとんどです。

 もし、現在お使いのコーチング手法に疑問をお持ちになられた場合、その根底にはどのような認識論が使われているのか? 調査してみていただいてはいかがでしょうか?  


月と指の論理階型

 禅に非常に示唆に飛んだ言葉が存在します。「師の言葉は、月を示す指のようなものである[1]」。


 この隠喩(メタファー)は非常に示唆的なのですが、グレゴリー・ベイトソンのマインドの理論に照らし合わせてみると更に示唆的です。

The name is not the thing named but is of different logical type, higher than the thing named.
名前は名前を付けられたモノそのものではなく、名前を付けられたモノとは別の上位の論理階型にある。

 と同じ要領で、
  
対象を示す指はその対象としているモノゴトそのものではなく、指が指しているモノゴトとは別の上位の論理階型にある。

 という解釈が成り立ちます。

 つまり、ベイトソンのマインドの理論によれば、心の世界では、論理階型の上位にある言葉のほうが下位にある実際の経験より影響度合いが大きいということから、ここでは、よほど注意してないと、指が指しているモノゴトではなく指自体に囚われてしまうということなります。

 もちろん、指を言葉と置き換えて考えてみると、私たちはある意味実体と切り離された形式でこの記号やシンボルを操作した形式で抽象的な概念を考えることが出来るという自由さがあるわけですし、ビジョン、ミッションなどといった実際には存在しない蜃気楼を使って目的、目標まで引っ張っていく力が生まれることになるわけです。


 一方、これが逆に作用すると、実態とは離れた言葉、看板、ブランドといった蜃気楼に囚われてしまうことになるわけですし、哲学のパラドクスのように外的な世界ではありえないパラドクスや矛盾やダブル・バインドを心の中に産み出してしまうという作用があるということになります。

 この隠喩(メタファー)の意図を考えると、心の中にパラドクスをつくり出してしまった場合、意識的な思考を停止し、五感の感覚だけで存在を感じる禅で言う純粋経験に在るという状態に戻るようにという示唆にも思えてきます。

 つまり、指ではなく、指が指している月の実態について認識主体の五感をつかって、しっかり見据えることが重要であるということになってきます。

メタ・コーチングの論理階型

 個人的に活用しているコーチングの手法は、マイケル・ホールの「メタ・コーチング」とディルツ&ギリガンの「ジェネラティブ・コーチング」です。


 メタ・コーチングは一般意味論の影響が若干強いのですが、両方のコーチングとも根底にある認識論の理論はグレゴリー・ベイトソンの認識論です。


 さて、こういった薀蓄を踏まえメタ・コーチングNeuro-Semanticsのサイトには、ベイトソンのマインドのモデルとして以下のような11項目の解釈が行われています。[2]

1.        Hierarchies of experience.
2.        Higher levels organize and control information on lower levels.
3.        The modulation effect of the system necessarily works downward.
4.        The modulation effect of the system does not necessarily work upward.
5.        Higher levels operate more encompassing and impactful than the lower levels.
6.        There exists a discontinuity between the levels a break.
7.        The relationship of logic between levels creates “paradox” if we don’t sort phenomena on different levels.
8.        Hierarchical logical levels function as a system, the higher levels arise out of the lower and feed back information into the system to influence the lower levels. This creates recursiveness within logical levels.
9.        As a cybernetic system, as information moves up logical levels new features emerge that does not exist at the lower levels. This emergence at higher levels involve, in systems language, summitivity. In other words, the emergent property does not exist only as the sum of the parts, but new properties and qualities arise over “time” within the system.
10.    Reflexivity describes one of the new features that emerge in logical levels. In living organisms this results in self-reflexiveness or self-consciousness.
11.     As a system with feedback properties, logical levels operates by self-reflexiveness, the whole system becomes cybernetic. It becomes a “system that feeds back onto and changes itself” (Dilts, 1990, 33). This makes it self-organizing.


1.         経験の階層(経験には階層が存在する)。
2.         上位のレベルは、下位のレベルにおける情報を秩序付けるしく、もしくは制御する。
3.         システムを調整する効果は上位から下位に向かって必然的に働く。
4.         しかし、その効果は下位から上位へは必然的には働かない。
5.         論理階悌(ロジカルレベル)は、内的な階層(ひとつのシステムの中の階層)であり、それぞれのレベルは(踏み上がるほどに)、より心理的に広範囲に影響を及ぼす。
6.         階層の間は非連続である。
7.         (対立する2つ以上の思考、概念などが)異なる論理階悌(ロジカルレベル)(論理階梯≒論理階型とひとまず考える)ではなく、同一レベルに存在する場合、パラドクスを引き起こす原因になる、(ベイトソンのダブル・バインド理論に関係している。)
8.         上位の論理レベルは下位の論理レベルから生成され、上位の論理レベルは下位の論理レベルに対して情報のフィードバックを行う。これが論理階悌に対して再帰性を与える。
9.         サイバネティクス・システムとして、下位レベルに存在する情報は、上位の論理にレベルに移動してそこで創発を起こす。この上位レベルの創発は、システム言語を含む。言い換えると、創発の属性は、部分の合計には存在しておらす、システム中に新しい属性、質が時間の変化に伴って発生する。
10.     再帰性は、論理階悌において出現する新しい特徴として記述される。生物においては、自己再帰性もしくは、自己意識の中に(自己再帰的意識として)現れる。
11.     フィードバックの属性を伴ったシステムとして、論理階悌は、自己再帰性を制御する、つまりシステム全体はサイバネティックである。 これは、自己の変容自体を自己にフィードバックする。 つまり、これが自己組織化を行う。

 この話の前提として、ベイトソン以外にも、構成主義、アフォーダンス、オートポイエーシスのように外的環境と認識主体としての自己とも言うような、「自己の投影としての世界と世界の投影としての自己」の循環を考える必要があると思われます。 

 ここでは、個人的には、オートポイエーシス的に環境と相互浸透しながら、自己と非自己を二分した自己の中のマインドのモデルとしての論理階型を考慮していくことにします。つまり、私たちはマインドは外的環境と自己(意識)の境界を設定しながら、環境と相互作用する形式で「自己」を設定しているように思います。


 もっとも、オートポイエーシスではシステムを記述するための階層という概念は設定されていないため、異なる幾つかのシステムが構造的カップリングを行なって作動するという図式を考慮していく必要があると思われます。 

 また、ここで重要な点は、この自己のシステムとして、生命システム(物理的な身体、神経システム、個々の臓器などを構成素とする)と意識システム(意識についての表象、スキーマなどを構構成素とする)、認識システム(言語、記号などを構成素とする?[3])が構造的カップリングして動作するシステムであると考えられますが、オートポイエーシス自体はそれぞれ閉じた入出力の無い次の産出プロセスを起動するだけのプロセスのネットワークということになるのでしょうから、ここではこのプロセス自体がフィードバック・ループを形成しているという構図になると思われます。[4]

いずれにせよ、このレベルのコーチングになるといかに新しい自己意識を創発させるのか?というテーマになってくるわけですが、具体的な質問の方法、それと連動した知覚の動かし方などの具体的な方法についてはまた後日にしたいと思います。


文献

[4] http://rossdawsonblog.com/weblog/archives/2010/05/autopoiesis_and.html


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