2011年8月24日水曜日

「なぜ?」という質問の使い方

 仕事や日常生活の場面で、「なぜ?(Why)」という質問は使い方を間違えると、事象として認識されている問題の根本原因にたどり着くことを難しくするばかりではなく、人間関係を壊してしまう原因になることがあります。

 今日はこの「なぜ?(Why)」の質問について考察してみましょう。

「なぜ?」という質問の使い方

コーチングなどで「なぜ?(Why)」という質問が禁じ手のようになっていることもあります。

‘Why’ questions do frequently lead to blaming and accusing. And true enough, many people ask why questions in order to escape responsibility.[1]

この理由は、 「なぜ?」の質問は、時折、(問題が起こったプロセスを事実として追求するのではなく)質問される側の非難や責任追及に至ることがあり、逆に質問者は自分の責任逃れを行うために「なぜ?」の質問を使うことが指摘されています。

 では、なぜ、「なぜ?」の質問は状況に応じて注意が必要なのでしょうか

·           注意点1:非難、責任追及、叱責のメタ・メッセージを伝えてしまうことがある。

 私たちは、本来は理由を問う」「なぜ?」の質問を通じて、過去の失敗を問責するメタ・メッセージを相手に伝えてしてしまう場合があります。


(メッセージ)「なぜ、そんなことをしてしまったんだ?」
(メタ・メッセージ)「そんなことするなんて本当にどうしようもないな。」
             

 例えば、部下が上司からこのようなメッセージを受け取ると、部下は、メッセージ通りの「理由」を聞いてその理由を答えるのか、あるいは理由というメッセージの裏にある「非難」なのかを状況に応じてどちらかを読み取るなり、確認する必要に迫られます。 きちんと確認できるスキルを持っている部下だったら良いのですが、そうで無い場合は、メッセージを理解すれば良いのか、あるいはメタ・メッセージを理解すれば良いのか悩むことがあるかもしれません。

 何れにせよ構造的に相手を建設的ではないジレンマに陥れる可能性のある表現は避けたほうが良いでしょう。

·           注意点2:その現象がどのように起こったのか原因が連鎖するプロセスを逃してしまうことがある。

 ビジネスのコンテクストなどで、その現象が起こったプロセスを事実に即して推測したい場合があります。この場合、以下のように、


(メッセージ)「その、課題を引き起こしている現象はなぜ起こったのか?」
(答えの例)「私たちは xx という前提でそれを考えていました。」


 と質問されると、現象を起こしている原因のプロセスの連鎖に焦点が当てられるのではなく、認識のより高次の論理階型に存在する前提、思考の枠組みに焦点が当たる場合があります。

 この場合、事実として、原因が連鎖するプロセスを知りたい場合は、


(メッセージ)「その、課題を引き起こしている現象はどのような原因が連鎖するプロセスで起こったのか?」
(答えの例)「Aという事象とBという事象が同時に起こったことでCという現象が起こりました。」


 と「なぜ(Why)?」の質問ではなく、「どのようにして(How)?」を行うほうがより有効だと考えられます。日本語であるとこの区別が付きにくいのですが、問題の解決にはこの区別を付ける必要があると思われます。

·           注意点3:エンパワーするような「なぜ?」の質問は有効

 コーチングのような場面で、クライントの信念・価値観を強化し、資源・資質に満たされた心身状態を強化し、自分自身をエンパワーするようなメンタル・マップを構築するために「なぜ?」の質問が役に立つことも示されています。

 Yet there are other kinds of why questions, why questions that increase your resourcefulness and enable us to create very empowering maps.

  Intentional Why: Why do you want that? What will that do for you?

  Value Why: Why do you feel that’s so important?

 Explanation Why: Why do you things fall to the ground when I release them?

 Causation or Source Why: Why do you repeatedly undermine your success in that way?  [1]

 ここで有効とされているのは、

(1) 意図を尋ねるなぜ: なぜそれが欲しいのか? それがどのようにあなたの役に立つのか?

(2) 価値を尋ねるなぜ: なぜそれが重要だと感じているのか? 

(3) 説明原理を尋ねるなぜ: なぜモノを離すと地面に落下するのだろうか?

(4) 因果、原因を尋ねるなぜ: なぜ、あなたは繰り返し成功することを阻害するそのようなことを行うのか?

ベイトソンが言うように世の中のほとんどの問題は、外的な自然の摂理と人の認識の相互作用で起きているわけですが、特に人の心の内側を尋ねる場合の「なぜ?」の質問はこれを尋ねるために工夫が必要だということが分かってきます。


 また、問題の解決のためにトヨタ生産方式の「なぜ?」を五回尋ねるという手法に対してもそれが機能する前提が存在することが分かってくるでしょう。

文献
  
[1] Hall, Michael (2001), Communication Magic Exploring the Structure and Meaning of Language, Crown House Publishing


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