2011年8月31日水曜日

短期・戦略・システム療法の手法をコーチングやファシリテーションに応用する

日常生活や仕事の場面で起きている課題、問題はベイトソンの言うように、「The major problems in the world are the result of the difference between how nature works and the way people think.」を実感している毎日です。


つまり、世の中の問題は外的世界の物理学的な法則と、人の知覚・認識との差異によってもたらされているため、それが原因で起こる多くの課題を解決するには、自己の投影として世界と世界の投影としての自己の循環を考えなければいけないということになってきます。

それで具体的にはどうしたら良いのか?を考えると、

個人的な答えは、ベイトソンがパロアルトのMRI(Mental Research Institute)で研究していた短期・戦略・システム療法の考え方を日常生活や仕事の場面の問題解決に適用してみれば良いのではないか?という非常に単純なものになったというわけです。
 
短期・戦略・システム療法の原則

短期・戦略・システム療法は、グレゴリー・ベイトソンがパロアルトの軍人病院、あるいはメンタル・リサーチ・インスティテュート(MRI)で行った認識論(Epistemology) に還元した心理療法に端を発しており現在は様々な分野に応用されています。

個人的にはビジネス上のコンサルティングから日常のコミュニケーションにまで応用しているわけですが、個人的に認識している問題、課題の多くは、コミュニケーションの齟齬、その背景にある知覚・認識・思考プロセスの違いが原因になっていることも多いため非常に役に立っているということがあります。

以下に短期・戦略・システム療法の原則をあげておきましょう。[1]


  • 地図/現地の区別を付ける  

これは、ベイトソンが一般意味論の創始者アルフレッド・コージブスキーの著作「科学と正気」から引用した概念です。 要は、認識主体の表象にある知覚からつくられた現実世界の事実と、それにラベリングされ、事実のインデックスとした働く言葉、記号の区別をつけましょうという意図で導入されています。余談ですが、プロジェクトなどで主観と客観の二元論の立場を超えた視点を持つという意味でトランスパーソナル的に視点を溶かすという方向もあると個人的には考えています。


  • 論理階型

上の地図/現地の区別を付けると関連するのですけれども、ベイトソンがラッセル&ホワイトヘッドの集合論の理論をマインドに当てはめて構築した理論ということになり詳細は以下に書いています。 


  • メタファーと表象

ベイトソンは現実を投影して認識主体に表象されるイメージ、音、言語などはすべて実態が何らかの形式で表象に投影されたメタファーと考えていたようです。これを認知科学的に考えるとメタファーを認知の中心に置いた認知言語学的な話になってきます。 このテーマは非常に深いテーマでもあるため、このBlog でおいおい書いていくことにしたいと思います。

  • アブダクティブな学習/学習のレベル

これはベイトソンの学習理論やダブル・バインド仮説の話になってきます。簡単に言うと、弁証法ではないですが、何か新しいことをやろうと思うと必ず矛盾が出てくるので、その矛盾を、正・反・合、と統合するか、さらに、その矛盾の起こっているシステムの外に飛び出してまったく新しい視座から新しい能力を得るというような垂直的な学習を目指しています。この話もこのblogのテーマとしておいおい書いていくことにしたいと思います。

  • システム(全体)の視点、エコロジー、コンテクスト

短期・戦略・システム療法は、ある意味デカルトから始まる近代科学のパラダイムから全体論的なパラダイムへの転換を要求されます。[2]

デカルト(近代科学)の世界観
ベイトソンの全体論の世界観
事実と価値は無関係。
事実と価値は不可分。
自然は外側から知られ、諸現象はそのコンテクストから取り出され、抽象化されて吟味される(実験)。
自然は我々との関係の中で明らかにされ、諸現象はコンテクストのなかでのみ知ることが出来る。(参加する者による観察)。
自然を意識的、経験的に支配することが目標。
無意識の精神が根源にある。叡智、美、優雅を目標とする。
抽象的、数学的な記述。数量化できることのみが現実。
抽象と具象とが混合した記述。量よりも質が第一。
精神は身体から、主体は客体から分離している。
精神/身体、主体/客体はいずれも同じひとつのプロセスのふたつの側面。
直線的時間、無限の進歩。原理的には現実を完璧に知り尽くすことができる。
循環的(システムの中の特定の変数のみを極大化することはできない)。原理的に現実の一部しか知ることは出来ない。
AかBか」の理論。情感は生理現象に伴って二次的に生じる現象である。
AもBも」の理論(弁証法)。情感は精緻な演算規則を持つ。
<原子論>
<全体論>
1.物体と運動のみが現実。
1.プロセス、形、関係がまず、はじめにある。
2.全体は部分の集合以上のものではない。
2.全体は部分以上になる特性を持つ。
3.生物体は原理的には非有機体に還元可能。自然は究極的には死んでいる。
3.生物体、もしくは<精神>は、構成要素に還元できない。自然は生きている。
 

  •  現在、制限を加えているメンタルマップをそうでないものに変える

上で説明した視点を考慮しながら、クライアントには今ココに焦点を当ててもらい、現象学的な手法を活用しながら、クライアントの認識している現在のメンタルマップを状況や思い描くゴールに併せて調整していくというのが短期・戦略・システム療法の要点というわけです。 [3]

ここでは具体的な方法やプロセスは書きませんが、個人的にはこういった原則をコーチングやファシリテーションの手法に落としこんで、ベイトソンの同僚であったポール・ウォツラウィックの言うシステム全体が大きく変化する二次的変化を志向してクライアントが変化のために活用しています。[4]

文献

記事の内容の正誤について、執筆者は一切保証いたしません。また、本書の内容、エクソサイズなどを実行した結果被った被害などについて著者は一切責任を負わないこととします。本ニュースレターの内容は、以下クリエイティブ・コモンズ・ライセンスに従うものとします。但し、引用元の著作権は引用元に所属します。ご意見、ご感想は次へ tritune'`@''gmail.com

0 件のコメント:

コメントを投稿