2011年9月15日木曜日

事実と感情

 短期・戦略・システム療法の要点の一つは、表象の中で「領土」=事実、と「地図」=その事実に対するラベリング、解釈の区別を付けることであるということを書いたわけですが、今日はこれについて少し具体的に書いておきましょう。


事実と感情のつながりに隙間を開ける

 たまにブックオフに出かけると、少し古い本、書き込みのある本、汚れのある本が100円コーナーで売られています。

 それで、単純に値段の安い本=価値の無い本と考えてしまいがちなのですが、全ての場合にこの考え方を当てはまえるのは非常に早計な考え方だと気付かされることがあります。それは、値段の安さにかかわらず、この中からより抽象度の高い原理原則を見つけることが出来ると、情報の古さや値段の安さにはまったく関係ない、今でも十分に役に立つ情報が得られるというようなことに気づかせてくれる本も例外として存在しているからです。

それで今日最初にご紹介するのは、100円コーナーで購入した例外的な良書「デュボア思考法」に紹介されていた、本当の自分に気づくために、何か感情が動いた出来事があった場合、事実と感情をそれぞれ別のノートに分けて日記を付けるという手法です。[1]

個人的にはこの著者、手法に対してはニュートラルな立場なのですが、一般意味論や短期療法に照らしわせて考えると、「地図と領土の区別を付ける」つまり、自分の表象の中の事実として認識されていることと、自分がそれに対してつくっている、感情を手がかりにして、その背景にある思考、解釈、意味思考の枠組みに気付くために経験を文字として記録した日記を書いてみましょうというのは非常に共感できる方法論だというわけです。

 つまり、ある事実に対する感情(場合によっては情動)は、自分の世界観から来ており、ついつい無意識に習慣化されたパターンから湧き出ているということになるのでしょうが、その事実に対する解釈や意味付けは自分で選んでそうしているということに気がついてくるというわけです。 


そして、それを一歩進めると、「事実と感情のつながりの隙間を開くことで」おそらくそれ以外のつながりとなる別の選択肢もあって、それを自分で選ぶことが出来る・・・・ということに気がついてきます。


http://ori-japan.blogspot.com/2011/08/blog-post_16.html 


もちろん、事実といっても以前書いた選択的注意によって認知バイアスがかかっている事実の可能性もあります。


http://ori-japan.blogspot.com/2011/09/blog-post_08.html

 余談ですが、事実として認識されていること、あるいは感情を言語化するベネフィットとして、ソシュールの言語学や一般意味論的に考えると、身体にある経験において意識された要素に対してラベリングを行いそのラベルで抽象的な思考を行うと、言葉で表すことの難しい暗黙知的な情報は失われてしまいますが、演繹的に推論を行うことで自動的に思考の抽象度は上がってきます。 従って、(意識的な思考に限定されますが)ベイトソンの Theory of Mind からすると言語化して客観的に眺めてみることでメタ認知を促すということが考えられます。
神経学的な研究

このあたりのことについて個人的に思い出すのはオートポイエシスの提唱者であるチリの神経学者ウンベルト・マトゥラーナの鳩の視神経の研究です。[2]

 簡単に言うと鳩に色々な色彩パターンを見せて、実際鳩の中枢神経内で起こる反応を調べた研究ですが、この研究の成果は、色彩パターンと中枢神経の反応との間には直接の因果関係は無かったということが分かったことです。

 後にマトゥラーナはオートポイエシスを定式化した時に、神経を外部から入出力の内閉鎖系のシステムとしていますがそれはここから来ています。

 これを多少強引ですが、潜水艦のメタファーで説明すると、外の様子は水深や進路にある障害物の有無などは潜水艦内の計器によって知らされるわけですが、外の様子を直接見ることは出来ないため、この計器を見てどのように反応するのかは、潜水艦の操縦士が決めるということになります。

 それで、最初の話に戻ると、事実は事実としてそれにどう反応するのか?は自分の世界観や認識の枠組みが決めているわけですしこれに気付いて、これを変えることが出来れば、反応自体を自分で変えられることが分かってくるわけです。

文献

記事の内容の正誤について、執筆者は一切保証いたしません。また、本書の内容、エクソサイズなどを実行した結果被った被害などについて著者は一切責任を負わないこととします。本ニュースレターの内容は、以下クリエイティブ・コモンズ・ライセンスに従うものとします。但し、引用元の著作権は引用元に所属します。ご意見、ご感想は次へ tritune'`@''gmail.com

0 件のコメント:

コメントを投稿