2011年9月20日火曜日

意図してセレンディピティを起こす



「ユーザーはグーグルに次に何をすべきか指摘してもらいたいのだろう.・・・・ セレンディピティは計算の対象になっている。私たちは実際にセレンディピティを電子的に生成することが出来るのだ。」 

エリック・シュミット Google CEO  

今日は、認知科学的にセレンディピティを起こす方法について書いておきましょう。

想定外の副産物は出来ていませんか?

Wikipediaを参照すると、セレンディピティについて以下のように説明されています。[1]


何かを探しているときに、探しているものとは別の価値あるものを見つける能力・才能を指す言葉である。何かを発見したという「現象」ではなく、何かを発見をする「能力」を指す。平たく言えば、ふとした偶然をきっかけに閃きを得、幸運を掴み取る能力のことである。
  

 とあります。 

 ここで少し、このセレンディピティが起こるコンテクストについて考えてみましょう。

例えば、何か新しい発見、発明をしようとしている科学者が居るとします。

それで、何かを目的として、仮説を立て、その仮説を証明しようと必至になって実験を行い、思わぬ失敗が起こったような状況を考えます。

例えば、ペニシリンの発見を考えた場合、ブドウ球菌を培養しようとして、容器に中に偶然青カビが生えてしまったような場合です。 しかし、ここで諦めずに視点を変え、一見失敗と思える実験の事実を冷静に観察してみると青カビの周りにブドウ球菌が繁殖しておらず、もしかするとこのカビに何らかの作用があるのではないかという新しい仮説がヒラメキにも似た方法で生まれるというわけです。 それで、その仮説は正しく、青カビの生成物を抽出したところペニシリンが得られたというようなことが起こります。

簡単に言うとこのようなことを起こす能力のことをセレンディピティというわけです。

(参考)


認知科学的にセレンディピティを考えてみる

これを認知科学的に考えてみましょう。

まず、セレンディピティを考える基本的な枠組みは以下のリンクで書いた「意図と選択的注意」で説明することができます。


一般的に、科学の実験では、通常、仮説を立てて「何が得られれば良いのか?」といった目的を決めるところから始めると思います。これを、ベイトソンのマインドの理論で説明すると、心の中にある高次の論理階型に目的、そしてこの目的の前提などが枠組みとしてセットされているということになります。また、この時、併せて定量的な達成指標もセットされる場合があります。 

これを、上のリンクのバスケットのビデオの例で言うと、「白いシャツを着た人たちの間で何回パスが行われたか?を数えて下さい」というように目的を設定するところにあたります。
 
 次に実験のプロセスを進めて行くことになるわけですが、この時、意図(Intention)にあたる目的、前提、成功指標などに照らし合わせて、実際に起こっている現象に知覚の注意(Attention)を向け観察していくということになります。 それで、これを上のバスケットの例で説明すると、目的を意識して、実際に何回パスが行われたのかを数える行為がこれにあたります。

 ここで、非常に興味深いことに気付くわけですが、目的やその前提などをかっちり考えれば考えるほど、意図⇔注意の範囲が固定され、例のバスケットの例で言うと、注意深く観察しているつもりでも、途中からコートに登場するゴリラが見えないということが起こってしまうことに気がつくことになります。

 但し、ここでペニシリンの発見の時のように想定外の出来事が起きてくると、設定された認識の枠組みが揺らぎ、本来目的としていなかったもの、あるいは本来意図していなかったものが見え始めるという現象が起こります。 これは、バスケットの例で言うと突然ゴリラが見え始めることにあたります。

それで、固定化された「思考の枠組み」が揺らいだ拍子に想定外のモノが見え始める。 つまり、これが基本的なセレンディピティのメカニズムということになるわけです。

セレンディピティを高めるエクソサイズ

  それで、Facebookで友達になってもらっている「Metaphors in Mind」の著者であり、Clean Language & Symbolic Modeling の推進者であるペニー・トンプキンスとジェームズ・ロゥリーの両者によって、セレンディピティを高めるエクソサイズが以下のリンクからダウンドード出来るようになっています。


 この資料を参照すると、セレンディピティを高めるための6つのプロセスが時系列的に示されており、最後のプロセスで認識主体が持っている思考の枠組みをメタ認識して明らかにし、知覚の注意の範囲を広げるようなエクソサイズとなっていて非常に興味深い構成となっています。つまり、現在、どのような枠組みで観察しているのか?という枠組み自体に着目して、場合によっては家族療法のリフレーミングの手法を用いてこれをいじってみるというわけです。

それで、今日のまとめですが、一般的に人は、当初想定した枠組みで想定した結果が得られないと、その現象に失敗という言葉のラベルを付け、それ以外の事実に焦点を向けなくなってしまいます。

それで、セレンディピティのメカニズムから学ぶことがあるとすると、一体どういった枠組み、どういった基準で失敗としているのか? それ以外に見方は無いのか?というように枠組み自体をいじって、事実をもう一度観察してみるということを繰り返してみる必要があるということになると思います。

Google のエリック・シュミットの言葉ではありませんが、自然言語処理、つまりNLP(Natural Language Processing)の技術を使ってコンピュータでセレンディピティが計算できるのであれば、個人的には人がそれをやってのけるはもっと簡単だし、具体的な方法はもう存在していると考えています。

文献
[1] http://ja.wikipedia.org/wiki/セレンディピティ
「参考]http://www.proveandimprove.org/new/documents/vermont_outcomes.pdf

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