2011年9月28日水曜日

Theory U: 3つの敵


何を切り捨てるべきかを知ること。
それを知恵という。
何かを手放す必要がある時に、それを手放せるだけの明晰さと強さを持つこと。
それを勇気という。
知恵と勇気をもって毎日を生きていこう。
そして生活をシンプルにしていこう。

ヴィルヘルム・ミュラー 詩人
 

  今日は、MITスローン校の先生であるオットー・シャーマ博士によって開発された「U理論( Theory U)」について書いておきましょう。[1]
U理論は未来創発の方法論

U理論を簡単に言うと、個人やグループを対象に、現在まで身に付けた、物事の見方、枠組み、常識、といった認識、そしてそれに伴う行動、反応を手放し、そして、新しい物事の見方、枠組みを得、新しい行動、反応を身につけることでいままでの延長線上に無い未来を創発させるための方法論です。

 この方法論の特徴は、ある出来事に対する、物事の見方、意味付け、反応を保留しながら内省を深めて行きます。 これをもう少し難しい言葉で言うと、現象学的還元をかけて出来事に対する意味を保留するということになると思います。

 それで、Youtubeに、内省を深めていくこのプロセスを行う過程で、ジョセフ・キャンベルの神話の法則に出てくるアーキタイプであり、通行人の覚悟を試す門番のような役割をしている「3つの敵」について説明した映像がアップロードされていましたので、今日はこれについて書いておきましょう。


 
 個人的にこの映像はとても氣にいっていて、つい何度も見てしまいします。  人は未来のことをイメージする場合、どうしても現在持っている既存の枠組みで見てしまいます。つまり、普通に未来を思い描くと過去の直線的な延長として未来を見てしまうということになるわけです。 

 しかし、現在のように外的環境が著しく変化しているような時代だと過去の延長では上手くいかないことが多いように思ってきます。 そこで、古い考え、思考の枠組み、常識、を手放し、そして新しい反応、行動を身につけていく必要があります。

もっとも、古い考えを手放し、新しい考えをハラに落ちるレベルで身につけるというところには、やはり抵抗があるわけでこの抵抗が「3つの敵」というわけです。

克服するべき3つの敵とは何か?

それで、この「3つの敵」というのは、映像にある通り、自分自身の内面にある声(内部対話)というわけですが、Uプロセスの心のレベルである知(Open Mind)→情(Open Heart)→意(Open Will) にそって自分の内面を探るべくUプロセスを底まで降りていく過程で遭遇す情動、思考パターンに伴う声というわけです。
 
 具体的には、自分の知につながった時に聴く、「VoJ:判断の声」、自分の情につながった時に聴く「VoC:嘲笑、皮肉の声」、そして意につながった時に聴く「VoF:恐怖の声」に対処しながらU底まで降りて行きます。
 そして、Uの底まで降りた後で、まさに生きるか死ぬかといったミッションクリティカルな状況で、これらの声(や情動、感情、あるいは思考パターン)を手放して境界(閾値)を超えていく決断を行なっていくことになります。
 
  この
映像では、この決断こそがリーダーシップであるとも・・・語られています。
 当然、Uの底でこの決断を行うために、強力なコミットメントと覚悟が必要なわけで、こういう覚悟が出来て、ハラを括った時に始めて、未来を創発させるために小さな自己(self:小文字)から大きな自己(Self:大文字)が現れてくるわけで、この時、未来を創発させる準備が整ったということになるのでしょう。
これは、神話学者のジョセフ・キャンベル神話パターンで主人公である英雄が「境界を超えようとしている」ところの覚悟のように思えてきます。
  逆に知(Open Mind)のレベルで「VoJ:判断の声」といった内部対話を止めるだけでは、次の情(Open Heart)を取り扱う準備が出来ただけでそれ以上の何ものでもないですし、「VoC:嘲笑、皮肉の声」を止めても、より心の深いところにある「VoF:恐怖の声」に取り組まなければいけないことが分かってきます。

 つまり、通常のコーチングの質問である「What  stops you ?」の答えを聞いただけでは、Theory U で言う知(Open Mind)にあるほんのとっかかりの情報をつかんだだけでしかない・・・ということになるわけで、より深いレベルでのクライアントのコミットメントを引き出す支援をする必要があるというわけです。
 それにしても、映像の冒頭で、スローン校の先生がUの底に到達した後、どこかの自己啓発のセミナーのように、「ソースに繋がる・・・」とやっているのは非常に興味深いと言えば興味深いのでしょう。もちろん、ここで「ソースに繋がるとは」、Uの内省のプロセスを深めていって、「VoF:恐怖の声」を克服し本当にハラを括って覚悟をし、自分より大きなフィールドや集合知に繋がった主客を超えた自己が創発した状態ということになると思います。


 ちなみに本来佛教用語である「覚悟」というのは、煩悩(ある考え、思考フレームに固執すること)の迷いから目覚めて、の真理・正法を悟る(現実を直視する)ことと考えると非常に興味深く思えてきます。


http://ori-japan.blogspot.com/2011/09/blog-post_18.html

余談ですが、U理論のファシリテーションは、デフォルトの設定だとケン・ウィルバーのインテグラル思想に基づいたインテグラル・コーチングを使うような設定になっていますが、個人的には、このファシリテーションでどの手法を使うのかが一つの課題となっています。[2] 

現在のところ、ギリガン&ディルツのジェネラティブ・コーチング、もしくはマイケル・ホールのメタ・コーチングでファシリテーションを行なっていますが、もう少し余裕が出来たらインテグラル・コーチングか、オートポイエシス・ベースのオントロジカル・コーチングに手を伸ばす予定にはしています。

文献
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