2011年10月14日金曜日

話の聴き方(その1)

今日は人の話しを聴くプロセスについて少し書いておきます。

 あまりまとまっていないので後で追記したり、構成を変えたりするかもしれないので予めお断りしておきます。

名詞化された言葉を経験のプロセスに戻す

最近、タイトルは忘れたのですが、部下のマネジメントなんとかみたいな本を読んでいたら、コーチングのプロセスと同じように"良い"と言われる上司は 1)観察 2)傾聴 3)共感 4)受容 5)承認 というようなプロセスを取るというようなことが書かれていました。

個人的には、言っていることは確かこの通りだとは思うのですが、例えば、「観察」ということについて考えると、一般意味論的には具体的なプロセスに対して言葉のインデックスを貼った「名詞化」ということになるわけであり、「観察」という虫ピンで固定されたように動きが止まったスナップショットに対して「では観察とは具体的にどんなプロセスで行うのですか?」という質問をしてみたくなるわけです。

l       観察のプロセスは?

もちろん、「観察」といった場合に、観察者は現象学的還元をかけて、自分の意味の解釈をいったん止めて、先入観や思い込みといったようなものを一旦こころの中から落として、自分の五感の感覚を研ぎ澄まして、観たり、聞いたり、感じたり、というプロセスを通じて観察対象の観察を始める必要があるということになってきます。

このあたりの話を始めると実は定量的な情報より定性的な情報を重視するエスノグラフィーのフィールド・ワークのような話になってくるわけですが、この話はまた別の機会に書くことにします。

l       傾聴のプロセスは?

それで、個人的には「傾聴」といってしまうと何だか具体的なプロセスがわからなくなってしまうのであまり好きな言葉でありません。 それで、でメタ・コーチング vol.1 を翻訳した時にこの監訳者の高野さんとディスカッションしてつくった造語「精聴」というプロセスについて説明したいと思います。[1]

メタ・コーチングは一般意味論に大きな影響を受けているため、この「精聴」を行う場合に以下のマインド・マップ関連の記事で書いた本の読み方とだいたい同じような聞き方をします。


それで、まずは、コーチといった聞き手がどうやって聞くかというと、「地図は領土ではない」つまり、「地図はそれが指している土地そのものではない」の一般意味論の原則に従って、相手の言葉に含まれている「事実と推論/解釈」を区別するところから始めます。


原則:相手の話の中の 事実 と 推論/解釈の区別をつける


例えば、赤いりんごがテーブルの上に乗っていた、だったらそれは事実と言っても良いですが。

美味しそうなりんごがテーブルの上に乗っていた、だったらそれは主観的な解釈が入っているという具合です。

そして、実は、相手の中にある(事実つまり出来事に対する)推論/解釈というが非常に重要なのですが、相手がどのような世界観や価値観をもってその推論/解釈を行なっているのか? 要は、ベイトソンのTheory of Mind の高次の認識がどう構築されているのか? もっと簡単に言うと、心の奥底がどのように出来事に反応しているのか?そのプロセスを探るために、観察者はメタ・モデルのフィルターを立てて以下の項目に当てはまっていないかを少し意識しながら相手の話を聞きます。[2]

この時のポイントは、質問を必要最小限に押さえて、相手の話が下の表のメタ・モデルの言語パターンに当てはまっていないかといった視点からひたすら聴くことに注力することです。ですから疑問点があったとしても逐一質問を返すようなやり方は良いやり方ではありません。



言語学上の区別
説明
情報を回復する質問
1.単純削除
Simple Deletion
削除された情報
具体的に何を?具体的に誰か?・・・・
2. 比較による省略
Comparative Superlative Deletion
削除された比較対象、比較基準
誰より、何より、優れているのか?どの手法よりよいのか?
3.曖昧な名詞/動詞(参照対象の未指定)
Fuzzy Nouns/Verbs
主語と行動の詳細が省略
どの男?具体的にどのようにして彼は~したのか?
4. 省略された副詞
Unspecified Adverbs
省略された副詞
具体的にどのようにそれが起こったのか?
5.省略された形容詞
Unspecified Adjectives
省略された形容詞
それはどのようなものか?
.普遍的数量詞
Universal Quantifier
全て、決して、いつも、で表現される事象
いつも?決して?~の時はいつもそうではないのか?
7.叙法助動詞
Modal Operator
~できる、~なければならない・・・といった叙法助動詞
誰がそれをしなければならないといったのか?それをしなければ何が起こるのか?
8.判断基準の欠如
Lost  Performatives
誰か知らない人によってつくられた基準による判断
誰がそういったのか?誰からそのアイディアを得たのか?
9.名詞化
Nominalization
行動が静的なもののように固められること
Xにおける行動は何か?もし私がYを見ると何が見えるか?
10. 読心術
Mind Reading
他の人の感情や思考を根拠なく推定すること
どうしてそれが分るのか?本当にその人がそう言ったのか?
11.因果
Cause-Effect
イベントと刺激-反応によって生じる信念における因果関係
何がXの原因か?いつもXがYを生じさせるのか?Yの原因は他にないのか?
12. 等価の複合概念
Complex Equivalence
内的ステートを引き起こすに等価な外的行動
Xは常にYと等価か?XだけがYと等価か?
13.前提
Presupposition
明示的に表現されていない仮定
あなたが、疑問をはさむことなく正しいと考えている前提は何か?
14.過大/過小定義の用語Over/Under Defined Term
過大もしくは過小定義の用語
Xは本当に実生活における行動や振る舞いとして考えられるか?
15.妄想的動詞の分離
Delusional Verbal Splits
システムの局面から分離された言葉
どのようにすれば、心は体から切り離すことが出来るのか?
16. 二者択一
Either-or Phrases
こちらか、あちらか?一か八か?
二者択一しか選択肢は無いのか?
17.マルチオーディナリー
Multi-Ordinary
言語はそれ自身に対して自己再帰的である。
恋に恋することは可能か?恐怖に対して恐怖することは可能か?科学についての科学はあるのか?
18. 静的言語
Static Words
グローバルラベルで凍結される過程
あなたが参照しているのは行動もしくはプロセスは何か?
19.偽りの言語
Pseudo-Words
現実世界のロジックや確証のない言語
Xは現実世界にも存在するのか?どのようなロジックや自然界に存在する事物を参照しているのか?
20. 自己認識
Identification
それがいつも同じであると扱うことによって生じる過剰な自己認識
かれはXでありそれ以上の存在か?YはXの品質やアクションに対する属性か?
21.パーソナライズ
Personalizing
他人の言葉を自分の現実や問題として適用すること
それは本当にあなたの問題か?どうしてその言葉による経験があなたの問題だと分るのか?
22.メタファー
Metaphors
あることを別のことに例えること
Xを例えると?Yと言えば何を思い出すか?



注:上表は1~13がオリジナルのメタモデル[3]、14から21までが一般意味論に関係した拡張メタ・モデル、22が認知言語学に関連した拡張メタ・モデル。

それで、次の原則が以下です。


原則:相手の話の中の(事実に対する)推論/解釈の中から、こころのより深いレベルにある、世界観、価値観、信念、思い込み、隠れた前提を浮かび上がらせます。


ある程度練習が必要ですが、このフィルターに慣れてくると相手の言葉にある推論/解釈の中にある、世界観、価値観、隠れた前提、思い込み、信念などについて、聞き手はまったく努力することなく自然に浮かび上がってくるようになってきます。


また、このフィルターはチョムスキーの生成文法を援用してつくられているため言語に関係なく適用できるのが特徴です。

 それで、次の原則ですが、この時、言葉と表情といったメッセージとメタ・メッセージが整合性の整合性がとれているのかにも着目するようにします。


原則:言葉と表情といった、メッセージとメタ・メッセージに不整合が起こっていないかどうかを観察する。

  
以下のリンクで書いたMRIに在籍した家族療法家のヴァージニア・サティアの技法ですが、言葉と表情があっていないところに重要なヒントが隠されている可能性があります。


 
さて、精聴については、個人的には、電車を待っている時間にとなりで何かちょっとした世間話をしている人がいても、このやり方を使うと空恐ろしいほど本音が聞き取れる「地獄耳」レベルになっています。 

 もちろん、テレビの討論番組を聴く場合なども、参加者の本音がかなり分かるようになるので、このフィルターは非常に役に立つので練習してみたら良いのではと思います。

今日は、最初の2つのプロセス、観察と傾聴(精聴)のさわりについて書きましたが、この続きは後日書くことにします。

つづく 

文献
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