2011年10月27日木曜日

「なぜ?」と「どのようにして?」の質問の違い



「なぜ ?」という質問と「どのようにして ?」という質問は認識論的にはまったく異なる答えを引き出す。

独り言


今日は、「『なぜ? Why ?』と『どのようにして? How ?』の質問の違い」というタイトルで少し書いておきましょう。

短期・戦略療法ベースのコーチングでは、Why ? 聞く場合と、 How ? と聞く場合の区別をつけて尋ねていることをクライアントさんに認識してもらうのがひとつのポイントなのですが、今日はこれについて少し説明しておきましょう。

Why ? と How ?との違い

日経BPから出ている結構有名なシリーズモノの本に「~はなぜ動くのか?」があります。

  もう少し具体的に書いておくと例えば、「コンピュータはなぜ動くのか」というタイトルの本があるわけですが、この本の英語のタイトルを見ると、なぜか「Why Computers Work ?」ではなくて「How Computers Work ?」となっています。

 確かに、日本語のタイトルから英語を考えると「Why Computers Work ?」になるように思えてくるわけですが、一般意味論的に、観察者から見た表現がなぜ Why ではなくてHow になっているか? 日本語だとこの違いが混同されているところもあるのですが、その違いを考えると非常に面白いことに気がついてきます。

How ?の質問

それでは、個人的には「心と体は別もの」というようなデカルトの二元論に陥るのは嫌なので、身体も情動も持った善意の第三者の視点から自分の外側の世界を観察した格好で、なぜ、原題が「How Computers Work ?」なのかを考えることにします。

 この場合は、How という質問になっているので、基本的にこの視点から観察した、事実(あるいは理論、モデルなど)に基づいた動的なプロセスがどう連鎖してコンピュータが動いているのか?尋ねているということになるわけです。

 つまり、ここでの答えは、キーボードから入力された文字列の情報が○○に渡され、つぎに××という処理が行われ・・・・プロセスの連鎖としての事実がどのように行われているのか?という答えを期待されていることになります。

 これを、ベイトソンのマインドの理論から言うと月を指す指ではなく、月そのものを観ている状態、あるいは一般意味論の「地図はそれが示している土地そのものではない」と言った場合の「土地」で起こっている動的現象のプロセスを直接、観察しているという具合です。


 余談ですが、コーチングの場面で、コーチがクライアントに対して、「それをどうやって知覚しているのか?」「その気持はどんなプロセスで起きているのか?」のような、その対象が人の内側にある場合にも、それを外在化して「手でザラザラした感じがして、それから~します」というように基本的に事実のみ焦点を当ててもらうようにする必要があります。

Why ?の質問

 一方、「Why Computers Work ?」になると、事情が違ってきます。 

このように尋ねると、当事者に対して、基本的には直接見えない奥底にある設計思想を扱う時に聞く質問となってくるように思ってきます。

 これを、もっと極端に考えて、コンピュータを擬人化して、このコンピュータが比較的静的で固定化された、信念・価値観を持っているとすると、例えば、コンピュータが「僕は、計算するためにこの世に生まれてきたからだよ・・・」というような状況によっては少しトンチンカンな答えがあり得るという具合です。

 こっちは、ベイトソンのマインドの理論で言うと月ではなく、月を指す指を見ている状態、あるいは一般意味論で土地よりも静的な「地図」についての情報を尋ねている状態というわけです。

 それで、短期・戦略療法ベースのコーチングでは基本的に初心者のコーチは「なぜ」と聞くなというのがお約束になっているようですが、その理由は以下のリンクで書いたとおりです。


短期・戦略療法ベースのコーチングの約束事

ここで、短期・戦略療法ベースのコーチングの約束事を書いておきましょう。

上で述べた区別をつけることは、実は短期・戦略療法ベースのコーチングを行う場合に特に重要です。

具体的には、コーチとクライアントの間で、Howのプロセスを質問されているのか? もしくは Why の信念・価値観を質問されているのか?をつけて質問しているのか?あるいは質問されているのか? をお互いが理解していないとまったく効果が無いということになってしまうからです。

 例えば、コーチがクライアントに、自分の内面に、現象学的に自己再帰的に意識を向けて、自分のベストな心身状態について考えるように質問した場合。(外に注意を向けることもあります。)

  How の質問は、抽象度を下げて、知覚に焦点を当てどの知覚をどの順番で使って激怒しているのですか? という知覚のプロセスがどう関係してベストな心身状態を作り出しているのか?を引き出す質問ということになるわけです。

逆に、Why の質問を聞いた場合、つまり、なぜベストな心身状態が必要なのか?を聞く場合も考えられますが、答えとして心の奥にある本音ではない理屈を答えてしまうことも多いため注意が必要です。


つまり、短期・戦略療法の場合は、より直観を重視し、基本的に抽象度を下げて、五感の感覚、あるいは気持に焦点を当て、ここから直感的な暗黙知あるいは身体知を引き出すというゲシュタルト療法[1]やフォーカシング[2]と同じような技法を使うお約束になっているため、Whyの質問を使う場合には注意だというわけです。
 
文献
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