2011年10月10日月曜日

対立の構造(その3)



ある時旗が風でなびき、それを見ていた二人の僧が、 一人は「旗が動くのだ」といい、もう一人が「風が動いているのだ」と言い、お互いに言い張って決着がつかないのを見て六祖が言った。

 「風が動くのでも、旗が動くのでもない。あなたたちの心が動くのだ。」

 無門関


今日は、昨日の続きとして「対立の構造(その3)」と題して、この対立の構造を抜けた後、1)論理的な世界でどんな心身状態を得ることができるのか? 2) その心身状態でどのような行動ができるのか? についていくつかのレベルについて書いておきましょう。 

ダブル・バインドを超えて得られるものは?

後にグレゴリー・ベイトソンによって禅と対比されて研究された催眠療法家のミルトン・エリクソンの手法がありますが、 「The Legacy of Milton H. Erickson」を参照すると3つのレベルについて書かれています。[1]

まず、この3つのレベルについて考える前に、ダブル・バインドの条件を考えると、単純に状況から逃げた、ということも考えられますが、ダブル・バインドの条件の中に、その場から逃げることは容易ではないということが前提となっていますので、ここでは基本的に単純に逃げる以外の対処を行ったと考えることにします。

それで、解決のレベルとして、はじめにあるのが、

l       Either Or (どちらかひとつ)

 という形式で落ち着くパターン。解決の程度としては一番低く、これはどちらかというと二者択一でAもしくはBを選択するようなケース。 冒頭に書いた無門関の例では、「旗がなびいているのか? あるいは、風がなびいているのか? 白黒はっきりつけよう」という対立について、「旗がなびいている」というようにどちらか片方を選択するという解決が取られることになります。 この場合、認識論的な視点からは主客二元論となり、相手が居る場合にはお互い自分の主張を譲らず、仮に何れかが選択されてもWin-Loseの解決になりやすいという特徴があります。

次に、

l       Both And (どちらも)

という形式で落ち着くパターン。これは、解決の程度として次のレベルになり、これはAおよびBというように、意見が対立しているような場合でもお互いの意見を統合したような案に落ち着くケース。無門関の例で言えば、「旗もなびくし、かつ、風もなびいているね。」というような解決になるパターンです。  相手が居る場合は、主客がわからなくなるところまで徹底的にダイアローグを行い意見や気持ちの融合を図るようなケースとなります。 もっとも、これが裏目に出ると中途半端な折衷案に陥る恐れもあります。

そして、最上なのは、

l       Neither Nor (どちらでもない別の何か)

という形式になるパターン。これは、AとBが対立している場合、その枠組に注目し、その枠組から飛び出て、まったく新しい次元の解が生まれるパターンです。 一般的にイノベーションと言われるアイディアはこのレベルのアイディアです。 無門関の例で言えば、「あなたたちの心が動くのだ」と言われて、禅の坊さんがはっとして覚りを得るというような状況です。 

 それで、仕事や日常生活の場面では、何も考えていないと、あまりその前提や枠組みというところを考えずに、白か黒かなどと考えて行動してしまいがちなのですが、逆に、困っていてニッチもサッチもいかなからこそ、普段気づかない高次にある別の解決策を見つけ、まったく新しい思考パターン、行動パターンを身につけるチャンスとも言えるのかもしれないと思っているわけです。

 このような既存の枠組みを超えて、新しい思考パターン、あるいは行動を身につけることがベイトソンの言っている「アブダクティブな学習」ということになるわけですし、


先ごろ逝去したアップルの共同創業者であるスティーブ・ジョブスが「Think different」を標榜して主客二元論を超えて創発されるイノベーションの源泉とした禅の本質となるわけです。


文献
[1]http://books.google.co.jp/books?id=10ZwjOtcAuwC&pg=PA57&lpg=PA57&dq=steven+gilligan+ether+of++both+and+niether+nor&source=bl&ots=OZFM_MyeI-&sig=Fhd2xTfoCwKDpk2loPRVPVo5niU&hl=ja&ei=rW6RTsmZFqbWmAXUn7gm&sa=X&oi=book_result&ct=result&resnum=1&ved=0CCAQ6AEwAA#v=onepage&q&f=false
記事の内容の正誤について、執筆者は一切保証いたしません。また、本書の内容、エクソサイズなどを実行した結果被った被害などについて著者は一切責任を負わないこととします。本ニュースレターの内容は、以下クリエイティブ・コモンズ・ライセンスに従うものとします。但し、引用元の著作権は引用元に所属します。ご意見、ご感想は次へ tritune'`@''gmail.com

0 件のコメント:

コメントを投稿