2011年12月5日月曜日

トランスの定義



トランス誘導したからといっても、効果的にメタファーを使って主観的な意味を変化させないと、認識や行動は何も変化しないよ(笑)

独り言


今日は、「トランスの定義」と題して少し書いておきましょう。

ベイトソンとエリクソンの接点

ブリーフ・セラピーの成り立ちとして、例えば、催眠療法家のミルトン・エリクソンや家族療法家のヴァージニア・サティアの心理療法の本質は何か?というところから研究が始まっている経緯もあり、特にエリクソンの心理療法からクライアントの認識論的変化を導くための心身状態であるトランス状態ということが語られることがあります。

これは、もともと人類学者のマーガレット・ミードとグレゴリー・ベイトソンがニューギニアでフィールドワークを行なっていた時にトランス状態を使った祭祀が行われていたため、このことについてミルトン・エリクソンに意見を求めたところから始まります。


それで、エリクソンもクライアントの認識や行動に変化をもたらすためにこのようなトランス状態を活用していたというわけです。

もっとも余談ですが、後にベイトソンの同僚であったMRIのポール・ウォツラィックらが「Hypnotherapy without trance[1]で明らかにしたところでは、トランス誘導を行わなくても、ダブル・バインドのような二項対立を明示し、ベイトソンのマインドの理論からすれば、別次元の論理階型にあるメタ視点に出て意味を変えることができれば、システム全体が変化する二次的変化(Second Order Change)を起こすことが可能であるというその条件が示されています。

 これは、一般的にはハーバードやスタンフォードの催眠の深さを表す指標[2]などから考えて、トランス状態が深ければ深いほど認識や行動の変化を起こすために効果があるいった誤解が存在するわけですが、トランス状態の深さとその後の認識と行動の変化の度合い、には因果関係も相関関係も存在しないということを明らかにしたブリーフ・セラピーが起こしたパラダイム・シフトということになるわけです。

 もっとも、このことからトランス誘導を行わないコーチングなどのコンテクストでも変化が起こる条件を作り出し、クライアントがそれを望めば、認識や行動に大きな変化が起こる可能性が高まるということになることになります。

トランスの定義

本題に戻ることにしましょう。「トランスをどう定義するのか?」それがここでのトピックです。

エリクソン催眠家であるジョン・バートン博士の以下の著書「Understanding Advanced Hypnotic Language Patterns: A Comprehensive Guide[3]を参照すると、

トランス状態というのが以下のように定義されています。
 

Here we will define a trance state as being a heightened state of focus or concentration on a single item of group of like items to the exclusion of all other items. 


 英語だと非常に簡潔に書かれているのですが、日本語で説明すると集合論[4]のクラスとかファジィ集合論[5]などを使って説明する必要があると思われます。

 まず、トランスとはある一つの要素、あるいはその要素が集合したグループに焦点を当てていてあるいは集中が高まった状態であると定義されています。 

 一般的には、トランスは自分の中にある要素、知覚の感覚、感情、思考などに注意を向けた状態ということが言われていますが、ミルトン・エリクソンの妻である故ベティ・エリクソンのエクソサイズ[6]を行うと、


 最初に外的な世界に存在するものの要素に、視覚、聴覚、体感覚の注意を向け、その状態で対象と自分の間にサイバネティック・ループを確率しながら、徐々に焦点を自分の内側に向ける、という具合に、対象が外的世界と内的世界の両方に存在することがわかります。

それで、まずはこれについて(意識の)指向性の話になります。「Patterns of the Hypnotic Techniques of Milton H. Erickson VOLUME2 [6]にこれを方程式のような形式で記述した 4-Tuple という形式で表記されおり、ベティ・エリクソンのエクソサイズと合致している形式になっています。尚ここでは外的世界に注意を向ける、アップ・タイム・トランスと自分の中にある知覚、思考、感情などに注意を向けるダウン・タイム・トランスが区別されています。(もちろん二値的な区別ではなく、それらが混ざった状態もあります。)





そして、次に(意識を向ける対象としての)範囲であるスコープ(Scope)の話になります。バートン博士の定義によれば、ある要素を含むグループに焦点を当てている、あるいは集中が高まった状態ということも同時に言及されています。 つまり、ある複数の要素を含む、クラスに焦点を当てている状態もトランスだ・・・と語られているのが非常に興味深い点でしょう。

 これは、スティーブン・ギリガン博士 Self-Relations の理論[7]において、外的世界にある個々の要素を含む西田幾多郎の言うような非常にマクロな「場」に中心視野と周辺視野の両方を使って焦点を当てるということになってきて、以下で書いた宮本武蔵のような武道の達人の話になってきます。

http://ori-japan.blogspot.com/2011/11/blog-post_10.html

もっとも、トランスは変化のための資源・資質を探し易くする一つの心身状態ではあるわけですが、地図とそれが指す領土の関係性を変化させ、その意味を変化させないと何も変化が起きないということについては注意が必要だと思われます。

 
文献
[1] http://www.amazon.co.jp/dp/1904424910 (文献は孫引き)

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