2011年12月20日火曜日

手本が無い時代に何を目指すのか?



1853年、浦賀に米海軍のペリー提督が率いた四隻の黒船が現れ、日本国中が大騒ぎになった。  

 しかし、その三年後の1855年に薩摩藩が、その五年後の1857年に宇和島藩が書物だけを頼りに見よう見真似で造った小型の蒸気船を走らせることに成功していた。

歴史上の事実
http://ja.wikipedia.org/wiki/蒸気船


今日は、「手本が無い時代に何を目指すのか?」と題して少し書いておきましょう。

手本があると、目標の実現は案外簡単なのかもしれない
 
 つい最近、昔何回が読んだことのある司馬遼太郎の小説「花神」を調べ物のついでに仕事場近くの図書館で再読していた時のこと。


   「花神」は幕末に活躍した大村益次郎[1]が主人公の歴史小説ですが、久しぶりに読み返してみると共感できるところが昔とかなり違ってきているということに気がついてきます。


 面白いなと思ったのは、大村益次郎が宇和島藩主、伊達宗城の命を受け、前原巧山[2]と一緒に、蒸気船の建造に取組むという場面。 

 確かに、その時代、米海軍のペリー提督が開国を迫るために黒船を引き連れて日本を訪れたため、その対応に窮した時の幕府をはじめとして、日本国中は右往左往の大騒ぎになった様子が書かれています。

  しかし、ここで驚くのは、この騒ぎの中で薩摩藩主の島津斉彬や宇和島藩主の伊達宗城ら当時のベスト&ブライティストの藩主達は、未来を見据えて既に蒸気船を自前で建造することを決めていたことでしょう。  

 そして、それから間もなく蒸気船を建造するための人・モノ・金・情報などのリソース(資源)を集めて実行に移したこと。  結果、小型ではあるのですが、蒸気機関まで含めた純国産の蒸気船の建造を、書物だけを頼りに、黒船来航からほんの数年で成し遂げたこと。  

 もちろん、この時代の欧米に手本を求めたというところが重要な成功要因なのでしょうが、明確な手本さえあれば、そして、そのプロセスを真似ることが出来れば、たとえ難易度が高くても、それと同じモノをつくるのは、案外簡単なのかもしれない・・・という確信が得られるように思います。

話は変わりますが、今度はワインの話
  
個人的にも好みでファンであることを公言しているカリフォルニア・ワインで、自宅にも何本が眠っている、極上のピノ「カレラ・ジェンセン」、 

http://www.calerawine.com/wines/current_releases.html
 

  価格は、同じカリフォルニア産ワインの最高峰の一つで、ロスチャイルド家の所有する畑から収穫されたぶどうでつくられる「オーパス・ワン」には及ばないものの、

http://www.opusonewinery.com/
 

DRC(Domaine de la Roman
ée-Conti)[3] を手本とし、そのクローンとも言われる、グラス越しに輝くルピーのような深い真紅の色、香水のような香り、滑らかな舌触り、そして、ピノ特有な気難しく、複雑で濃厚な味わいは、ちょっと感動ものです。

 

  もっとも、このワインがこの世に生まれた経過は、著作「ロマネ・コンティに挑む」に詳しく書かれていますが、このワイナリーの所有者である、ジョシュ・ジェンセンが、アメリカ人のガッツ・フィーリングで、DRCの畑と非常に近い条件の、ぶどう栽培に最適だと思われる石灰質の土地を衛星まで活用しカリフォルニア内で探すところからこの物語が始まります。

 そして、本書を読み進めると、「カレラ・ジェンセン」は、DRCを手本とし、緻密かつ徹底的にモデリングすることから生み出されていることが分かってきます。 もちろん人生をかけて・・・・

 そして繰り返しになりますが、ここからの学びも、明確な手本さえあれば、たとえ難易度が高くても、徹底的に必要条件と十分原因を調査し、同じ状況をつくり出すことができれば、手本と同じようなモノをつくるのは、案外簡単なのかもしれない・・・という確信のように思ってきます。 

手本が無い時代に何を目指すのか?

 さて、ここからが本題ですが、最近の日本は、東日本大震災からの復興、デフレ、不況、etc . というような国難にも直面し、政府、自治体をはじめ、企業・・・・もしかすると個人個人のレベルまで手本となるロール・モデルを完全に失ってしまったようにも思えてきます。 

 もちろん、政府や自治体の仕事をやったことがある方は、何か意思決定を行う場合に「それは前例があるのか?」で、いまだもって決定されているのは言うまでもないでしょう。

 つまり、誰かが成功したことを同じ抽象度で真似るということが前提になっているわけです。逆の言い方をすると、それはどんな状況、どのような前提、思考フレームで何を行えば良いのか?というようなそもそも論的なことはあまり考えてこなくても暮らしていけた良い時代だったというわけです。

 それで、現在はと言えば、過去の延長線上にある何か「成功」と言われたことを手本にしてそれを単純に真似していれば、上手く行くという状況が完全に消えてしまっているように思えます。

政府、自治体、企業、・・・地域コミュニティ・・・・個人個人がある意味、自らが主体となって、そもそも論として、前提やルール、思考の枠組み自体を変化させるといった何らかのイノベーション[3]を起こさなければ問題はますます深刻化し、負のスパイラルから抜け出すことがままならないとも思えてきます。 

 しかし、現在の課題を解決し、負のスパイラルを正のスパイラルに変えるような、本物のイノベーションのヒントはどこにあるのでしょうか? 

 その前提として、そもそも、手本なき時代の目標設定はどのように行えば良いのでしょうか? 
 この答えとしては、まずは、自分自身の内面に意識を向け、ゴールや目標のメタ・レベルにある自己認識や信念・価値観を徹底的に問い直すことで、自分あるいは自組織のビジョンやミッションを明らかすることから始まるのだろうなと思ってくるわけです。 

そう考えるとドラッカーの5つの質問に戻ってくるわけですが、

来年に向けて、まずは、ビジョンや使命を明らかにして、それから自分が当たり前だと思っている思考の前提について、それが本当にそうなのか?考えてみるのも良いのではないかと考えている年末だったわけです。

文献
[4] http://ja.wikipedia.org/wiki/イノベーション

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1 件のコメント:

  1. いま最も求められるのは、「機能する政治」―【私の論評】現在大転換期にあることを認識している政治家、企業経営者は少ない!!
    http://yutakarlson.blogspot.com/2011/12/blog-post_19.html
    こんにちは。いま最も求められるのは「機能する政治」です。現在の政府は確かに機能しているとは思えません。多くの政治家などが、既存の枠組みの中で物事を考え、そこから一歩も出ずに、発言しています。実は、ここに問題の本質があるのかもしれません。とは、いいながら、私自身も、これからの次世代の政治をはっきり示せるわけではありません。しかし、参考になる考え方などは、示すことができます。それは、何かといえば、ドラッカーの現在は転換期にあるという考え方です。今や、政治家も、企業経営者なども、現在は大転換期にあることを認識しなければならないのです。従来の枠組みの中でものを考えていては、機能不全から脱することはできません。このことを認識しているのとしていないのとでは、雲泥の差が出てくると思います。詳細は、是非私のブログを御覧になってください。

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