2012年1月7日土曜日

ラポール事始め



仕事の場面なんかで、やたらラポール取るのが上手いやつがいるけれど、その後きちんと実務をこなす能力なり技術を持っていないと問題が起こるよ。

独り言


今日は、「ラポール事始め」と題して少し書いておきましょう。

復刻「逆転の発想」
 
少し前のこと、本屋で日本の宇宙開発の父である糸川英夫博士の「逆転の発想」[1]が復刻発売されていたのでついつい懐かしくて読んでみたというわけです。

  個人的にはこの本を最初に読んだのは小学校の高学年、か中学生の時だったように記憶しているのですが、面白いことに精神科医や心理学者が「ラポール」といっている用語を始めて目にしたのも本書だったことを思い出したというわけです。


Wikipediaによると、ラポールは、後に科学的には完全に否定されることになる「動物磁気」仮説の提唱者として18世紀に活躍したオーストリアの医師フランツ・アントン・メスメルによって使われ始めたといった面白いことが書かれています。エリクソン催眠の本を読むとこの考え方がメスメリズムという名称で紹介されていたりしますのでご存知の方も多いでしょう。

それで、ラポールをもう少し専門的に解説すると、あなたが相手に「あなたを信頼していますよ」とか「あなたに危害を加えることはありませんよ」というようなメタ・メッセージを送ることで、あなたと相手との間に自然に無意識の同調が起こったような状態を指します。

つまり、相手はなぜか良く分からないけれど、何となくあなたを「悪いやつじゃなさそうだなぁ」とか「話くらいは聴いてやってもいいよ」という感覚が無意識から立ち上がってきた状態というわけです。

それで、具体的には何をしたら良いのか?というと非常に簡単で、「Ericksonian Approaches[2]を読むと。

相手と声の大きさ、トーン、スピードをあわせてしゃべる、相手の使っている用語使って話す、(失礼にならない程度に)相手と同じジェスチュアを行うといったことを上手に行うことでこれが達成されることが知られています。

また、逆転の発想」にあるように、上司が部下の相手の肩を叩くなり、声をかけるなりして、「あなたを心から信頼している」、「あなたの利益を損なうようなことをするつもりはない」・・・といったメタ・メッセージを送るような格好でも良いでしょう。

もちろん、こういったスキルは相手の意識に上がらないようにあくまでも自然に行う必要があり、逆に意識されると効果が無いばかりか逆に反感を買うということになるので注意が必要です。

やってはいけないアンチバターンの例としては、へっぽこ営業がお客さんに向かってとにかく商品を買ってもらいたいばかりにとってつけたような Yes Set を繰り返すとか、相手をバカにしているのかと思えるくらい相手のジェスチャーや言葉を繰り返すとかいったことが考えられます。

この場合、顧客は「あぁ、単に何かモノを売りつけたいわけねぇ」というようなより高次のメタ・メッセージを敏感に感じとってしまうので興ざめになることが少なくないように思っているわけです。

そして顧客はモノを買うどころか話を聴く体制にもなっていないにもかかわらず、ダブル・バインドの質問で「今、これを買わなければ一生後悔しますよ」とか「あなたはそうやって人生の決断を先延ばしして来ましたね」というようなことを言ってしまい、顧客が怒り出してしまうという具合です。

 逆の言い方をするとメタ・メッセージの何となく、を感じる人間の能力は非常に鋭いものがあり、これを舐めてはいけないということなのでしょう。

話をもとに戻すと、子供のころは、ラポールなんて気にしないで泥んこになって友達と遊んでいれば自然に仲良くなれるわけで、こういったことはまったく気にもかけていなかった方が大半でしょう。

それでも、やはり大人になってある程度大きなプロジェクトに関わるようになってくると、始めてお会いするような方も増え、こういったステークホルダーになっている人から何か情報収集を行ったり、何かお願いをしたりする場合、はじめのラポールが非常に重要で、さらに、ラポールを取った上で相手の世界観を理解することが重要だなと思えてくるわけです。

もっとも、大人の場合はどろんこになって一緒に遊ぶ代りに一緒にお酒を飲みに行くということになるのかもしれませんし、一緒にゴルフをするということになるのかもしれません。


個人的には、もう少しひねくれた別の角度から考えて、組織を動かすための悪役コンサルタントの役割を引き受けた場合は、ラポールを取らずにあえて突っ張りくんになって相手を挑発しまくるようなことになるのかもしれませんが・・・。

もう一つの面白い考察

それで、個人的に経験した話をしましょう。 ここでのテーマは「ラポールを取るのは上手いのだけれど、技量がないとその後どうなるのか?」です。

具体的には、個人的に遭遇したことのある、非常にラポールを取るのが上手いのですが、スキルが不足したエンジニアのお話です。

ついつい調子にのって変なことを言ってしまったり、技術的に出来ないことをつい出来るといってしまったりするわけです。

ラポールは上手いのだから、もっと事実を確認して、時には顧客に言い難いことも言い、少しでも確認できていないことは、それは確認できていないと言えばいいのですがこの能力が足りないというわけです。

こういう場合は、顧客はこの人の言説を信じてしまって仕事を進めているために、後で気づくとついつい大きなトラブルが発生してしまっているというわけです。もっとも、こういう人がいるのでその後、トラブルシュートを行う人の仕事が生まれるという面もあるのですが。

 もっとも、これはエンジニアだけではなくて、色々な場面でも成立つことなのでしょうから、個人的には例えば、ラポールだけ上手くて、技量がないセラピストのセミナーなんかに参加すると役に立たないことを役に立つと信じてしまう人が大勢いて、その後が結構たいへんなのだろうなと思っています。その意味では、情報源をよく確認しないで人づてのスキルを後生大事に信じてしまうのもある意味考えものだと思っています。

もっとも、心理療法だと「ドードー効果」というのがあって、


心理療法の学派による手法の違いと、クライアントと良好な関係が築けたかどうかを比較すると、後者による違いのほうが効果に及ぼす影響が大きいという仮説が効いてくるのでこれがさらに厄介なように思えてくるわけです。


何れにしても結論はラポールはきちんとした技量を持った上で、相手との関係性を築く上で正しく使いましょうということになるのでしょう。

文献

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