2012年1月23日月曜日

質問とリフレーミングだけで人は変化できるのか?



人や組織が大きく変化するためには、禅問答のようなパラドクスに対して、そのパラドクスの認識主体の視点を上げることで解く必要があるのですねぇ。 逆の言い方をすると、一見、不条理に見える「パラドクス」の中に変化の源泉が潜んでいる・・・
つまり、理屈では割り切れないので大きく成長する可能性があると・・・

独り言


今日は、「質問とリフレーミングだけで人は変化できるのか?」と題して少し書いておきましょう。

質問とリフレーミングだけで人は変化できるのか?

これは、カリフォルニア州のパロアルトにあるブリーフ・セラピーの研究機関で、人類学者のグレゴリー・ベイトソンや家族療法家のヴァージニア・サティアが在籍したことでも知られるMRI(Mental Research Institute )の研究で明らかにされたことです。

 元々、MRIの研究は催眠療法家のミルトン・エリクソンの研究を元にしているわけですが、MRIの研究の優れた点は、エリクソンの療法のエッセンス明示しており、他の領域に応用することができるようになっている点でしょう。

 例えば、コーチングや企業の会議におけるファシリテーションのようなコンテクストにおいて、クライアントがトランスの状態にあることを前提とせず、「よく練られた質問」や「リフレーミング」だけで、普段意識の当たっていない高次の認識を意識してもらい、良い意味で認識を変えていただく必要がある場合があります。

 それで、ここでの命題は、トランス誘導を使うこと無しに「質問とリフレーミング」だけでこの認識が変化するのか?ということになります。


 一般的にコーチングやファシリテーションではトランス誘導すること自体が適切でない場面が多いために、学術的な見解として「トランス誘導なしで人の認識は変化するのか?」がどうなっているのか?ということを知っておくのは非常に重要な問題だというわけです。

それで、孫引きになりますが「Ericksonian Approaches[1]を読むとMRIの研究者であったポール・ウォツラウィックの援用で「Hypnotherapy without trance」という章が存在しており非常に示唆深いことが書かれています。

変化のレベル

この本では、ウォツラウィックがサイバネティックのウィリアム・ロス・アシュビーの用語を援用し、変化の尺度としてとして、第一次変化(First-order change 第二次変化(Second-order changeの二つが定義されています。[2]

第一次変化とは、システムの一部が変わることであり、第二次変化とは「変化が変化」することでシステム全体が変わることだという記述がありますが、簡単に言うと、ベイトソンの学習理論(Logical Level of Learning)の簡略版だと思っていただければ良いでしょう。

つまり第一次変化は「変化」することであり、第二次変化は「変化についての変化」という具合に第二次変化は、第一次変化から論理レベルを一段踏み上がった「変化」なるわけです。

  もっとも、コーチングやファシリテーションのコンテクストでは、振舞が表層で変化するのが第一次変化、次に、信念や価値観のレベルつまり深層から変わるのが第二次変化を考えていただければ良いでしょう。  

第一次変化はそれほど難しくない

 ウォツラウィックによれば一次的変化のレベルであれば、質問とリフレーミングで変化が起こるとしています。

 これについては、表層だけならば言葉やリフレーミングで変わるだろうというのは想像に難くないのではないかと思います。

 ちなみ、行動レベルのフィードバックを与えて、行動を修正してもらうというコーチングはこのレベルになります。

第二次変化についての必要条件

 次に第二次変化になりますが、深層レベルといえる二次的変化はやはり予想どおり、言葉やリフレーミングだけではその必要条件を満たしておらずウォツラィックによるとリフレーミングとAND条件でパラドクスが必要であることが述べられています。

 前門の虎、後門のオオカミというように、あえて前にも後ろにも進めないような状態に対して、その状態を作り出している視点を抜けだして、新しい認識を得ないことにはその問題が解決しないという禅問答がないと第二次変化は起こらないと述べているのが興味深い点です。


The two primary methods for bringing about second-order change are reframing and the use of paradox.  In this section, we will go into some detail on four types of paradoxical interventions: (1) paradoxical intention; (2) ordeal therapy; (3) ambiguous-function assignment: and (4) provocative therapy.  ・・・(略)・・・ Paradox may be defined as a contradiction that follows correct deduction from consistent premises. 

Ericksonian Approaches P. 159 [1]


  ここでのパラドクスとは、前提条件を演繹していったことと矛盾する条件として考えていただくと良いでしょう。

それで、個人的にはこれを心理療法というコンテクストだけではなく、卓越性の発揮や問題解決、創造性の発揮というコンテクストでも同じことではないかと思っていますが上の(1)-(4)を読むと、あえて袋小路にあるパラドクスやこの特殊な形式のダブル・バインドを意識することでこの状態から抜けだして新しい認識を得ることが出来ると考えることができます。

 その意味で、これが以下のリンクで書いたように対立を解消しながら「アブダクティブに学ぶ」ということになると思います。


ウォツラウィックが言及しているのが4つの手法

話を元に戻すとウォツラウィックは、トランス誘導を活用しなくても第二次変化が期待される4つの手法あげています。 もちろん、それぞれの手法は、パラドクスを認識して、そのパラドクスがパラドクスとならないように視点の抽象度を上げるということで共通していることは非常に興味深いように思ってきます。

(1)Paradoxical intention 

ヴィクトール・フランクルの「Paradoxical Intention(逆説的意図)」を考慮する。

http://ori-japan.blogspot.jp/2013/12/blog-post_12.html


フランクルと言えば、第二次大戦中、ナチスの収容所で生死をさまよう経験をしたことで知られていますが、これもある意味、不条理というパラドクスからの学びということになるでしょう。

 (2) Ordeal therapy

これについては以下のリンクを参照してください。

http://ori-japan.blogspot.jp/2012/06/blog-post_24.html


(3) Ambiguous-function assignment

これは以下のリンクを参照してください。

http://ori-japan.blogspot.jp/2012/06/blog-post_07.html


これは以下のリンクでも書きましたがあえて曖昧な表現を使うことでパラドクスから抜け出す、視点やリソース(資源、資質、心身状態)を探ることになります。


4Provocative therapy

これは日本語で「挑発療法」と訳されていたりしますが、クライアントの持っているメンタル・マップを広げるために茶化したり、冗談を言いながら可能性を広げていく心理療法の手法の一つです。
http://ori-japan.blogspot.jp/2012/07/blog-post_03.html


まとめ

 まとめておきます。

質問やリフレーミングだけで第二次変化が起こせるのか?

答えは「NO」。  

 ウォツラウィックによると第二次変化を起こしたいのであれば、質問やリフレーミングと、パラドクスを併用することが必要条件となります。

そう考えると本当に第二次のレベルで変化を起こしたい場合は、パラドクスを認識してもらう状況設定が必要だと分かってきます。これには、以下のリンクで書いた「ダブル・バインドの言語パターン」が参考になるでしょう。


  もっとも、個人的には、TOC(Theory of Constraints)の3Cloud  Methodで矛盾を統合し、リフレーミングするということを行っているためにこの必要条件は満たしているわけで、個人的な経験として、これが上手く決まった時はオセロゲームのコマがパタパタ自分のコマにひっくり返るように連鎖的に組織やメンバーに大きな変化が起こるということの理屈が理解できたようにも思えます。


  それに、こういった論文などを読むと、流石にウォツラウィックというかMRIと感じていて、やはり彼らの研究内容は次元が他の何かとまったく違うようにも思えてきます。 

文献

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