2012年1月30日月曜日

ねぎらいの系譜


 
コーチングや心理療法で「ねぎらい」は日本独自のものです、なんて言う人が居るわけですが、実はそんなことはなくて、1930年代にベイトソンがニューギニアで行ったフィールドワークから人間関係における「ねぎらい」に非常に近い関係が取り出されているのですよねぇ。

独り言


今日は、「ねぎらいの系譜」と題して少し書いておきましょう。

コンプリメンタリーな関係

ミルトン・エリクソンの心理療法から派生した短期療法の流派の一つであるソリューション・フォーカスト・アプローチ[1]の中で「コンプリメント/コンプリメンタリー」という用語があります。

Wikipeidaにある出典を参照すると、セラピストがクライアントへ返す言葉のスコープというか粒度を抽象的にした「ねぎらい」や、もう少しそのスコープや粒度を絞った「承認」と解釈されていることが多いようです。

 確かに、アメリカ人に「ご苦労様」とか「あなたに感謝したい」というようなことを言っても「一体何がご苦労様なのか?」とか「私のどんな行為に感謝するというのか?」という怪訝な顔をされることも少なくないのでしょう。

そのため、実際にコンプリメントを行おうとすると、もう少し具体的な行為について相手の承認を引き出すとか、メタ・メッセージとして行間に含め、相手が意識しない形式で、相手とコンプリメンタリーな関係を構築していく必要があると、個人的には考えています。

 それで、何か自己啓発系のコーチング、心理療法もどきの方法を信奉する人の中には、アメリカ発のコーチングには「ねぎらい」が入っていない、「ねぎらい」は日本独自の文化であるなどとわけの分からないことを言う人達が居るみたいなのですが、実際にはそのような事実はありません。


このあたりの話をすると、元々グレゴリー・ベイトソンが第二次大戦前にニューギニアのフィールドワークを行った著作「Naven」でも明らかにされているように、人間関係、特にニューギニアの部族の分裂生成の関係性のモードを 1)シンメトリック と 2)コンプリメンタリーの2つとして取り出しているところからその考察が始まっていることになります。 [2]


 In short, the behavior of person X affects person Y, and the reaction of person Y to person Xs behavior will then affect person Xs behavior, which in turn will affect person Y, and so on. Bateson called this the vicious circle. He then discerned two models of schismogenesis: symmetrical and complementary. Symmetrical relationships are those in which the two parties are equals, competitors, such as in sports. Complementary relationships feature an unequal balance, such as dominance-submission (parent-child), or exhibitionism-spectatorship (performer-audience). Batesons experiences with the Iatmul led him to write a book titled chronicling the Iatmuls ceremonial rituals and discussing the structure and function of their culture.


 つまり、当時のニューギニアには中央集権的な権力を持たず、自律分散的に形成された部族単位でいくつもの集落が形成されているわけです、この中でその村がどのように維持されているの? この答えとして「Naven」という儀式をあげ、そしてその中から、1)シンメトリカル-対称的、2)コンプリメンタリー 補完的の2つの関係性の原型を取り出し、この2つの関係性を強めたり、弱めたりすることで集落の均衡が維持されているという仮説を取り出したということになります。

後に、この2つの関係性は、MRIの研究員であったポール・ウォツラウィックの提唱した「コミュニケーションの5つの公理」の一つの原則として取り込まれることになります。


もっとも、こういった関係性は、短期療法のセラピストとクライアントの関係、あるいは短期療法をベースとしたコーチングのコーチとクライアントの関係をどのように築くのかに応用されているわけですが、ベイトソンの「Naven」に遡れば、ベンチャー企業の立ち上げ、あるいは何かのプロジェクト組織を構築してそれを運用していく時にどのようなコミュニケーションのスタイルで、そのような関係性を構築していくか?といったところに応用できるでしょう。
もっとも、元々中央集権的でない結びつきということですから、最近だとソーシャル・ネットワークの世界で関係を構築し、そして維持していくというところで進化を発揮できるようにも思えてきますが、ここでも 1)シンメトリック 2)コンプリメンタリーそれぞれの関係性を具体的にどのように落としこんでいくのか?が課題となってくるように思ってきます。
 
文献
[1] http://ja.wikipedia.org/wiki/ソリューション・フォーカストアプローチ
[2] http://en.wikipedia.org/wiki/Gregory_Bateson 

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