2012年2月13日月曜日

ロジックとトランス・ロジック


 
伝えたいことに意識を集中してもらって横道にそれずに伝える技法と、その反対に、意識を混乱させたり、意識をずらしたり、勘違いすら上手く使って、あえて脱線することで創造性を発揮するような技法の両方を身につけておくことはとても重要なことのように思ってきます。恐らく、前者がロジックと言われるもので、後者がエリクソニアンが言うトランス・ロジックと言われるものだと思います。

独り言


今日は、「ロジックとトランス・ロジック」と題して少し書いておきましょう。

ロジック:ピラミッド・プリンシパルの基本パターン

最初に、「人の思考の性質」について少し考えてみましょう。 個人的な意見ですが、人は、自分の思考は非論理的あるいは非直線に考えていても少しも気にならないのに、相手の話を聞く時は論理的に話してもらわないと何をいっているのか?理解に苦しむことが多いように思えてきます。

そう考えると何か情報を伝えるという意味では混沌とした情報もロジカル・シンキングのフォーマットで伝えると混乱を最小限にできるように思えてきます。

それで、「じゃぁ、具体的にどうするの?」と考えた時に、ロジカル・シンキング、ロジカル・ライティングの古典的テキストにバーバラ・ミント著「考える技術・書く技術」という著作が思い浮かびます。[1]

個人的にはあるIT人材育成のNPOの設立を行った時に、協賛企業やお役所に提出する書類が山のようにあって、なんとか効率的に文章の作成を行うことができないだろうかと考えて、とにかく何度も何度もこのフォーマットに併せて書く練習をしたことを思いだすわけですが、相手に分かりやすいフォーマットで伝えるという意味では非常に優れた方法だと思っています。

それで、この本の英語の原題は、「The Pyramid Principle 」というタイトルで、まさに「名は体を表す」のように、結論をピラミッドの頂点に書き、その結論を裏付ける理由を帰納法、もしくは演繹法でその下辺に書いていくという基本的な形を取ります。

実際にはもう少し複雑な(主題-複雑化-疑問-回答のような)形式を取りますが論理構成のエッセンスだけを書いておくと以下のようになります。[2]

(1)  帰納法で理由づけして書く場合


メリーはウィーンに住み続けるべきだと思います。その理由は、メリーが現在ウィーンで良い仕事についていること、ウィーンは住環境も最適であること、そして友人も多くいるからです。


といった、途中で読み手が色々なことを類推する必要のない非常にすっきりした形式になります。もっとも、帰納法で書く場合は、以下のリンクでも書いたように、論理的には前提が真でも結論が真になるわけではないことには注意する必要があるでしょう。



(2)  演繹法で理由付けして書く場合



メリーは今のスタイルを改める気持ちがないのなら、ウィーンに住み続けるべきだと思いますよ。 

メリーが大都市に住み続けたいと思う気持ちは知っています。それで、メリーは現在のところドイツ語しか喋ることが出来ないので、大都市に住むとすると、チューリヒ、ウィーン、それとドイツの大都市に限られてしまうわけです。実際、メリーに尋ねてみると、チューリヒとドイツの大都市に住むのはあまり気が進まないと言っているので、消去法で行くとウィーンということになってしまいますね。もちろん、英語やフランス語を勉強して他の大都市に住むということも考えられるのですが、現状のスタイルを改めて新しいことを学ぶ気持ちがないのなら、今のままウィーンに住み続けるのが一番良い選択肢なのだと思いますね。


といった、これも、読み手が途中の論理展開をチェックすることは逢っても読み手がこの話と違うことをあれこれ類推する必要のない非常にすっきりした形式で説明していることになります。


トランス・ロジック:催眠や心理療法の基本パターン

ロジカル・シンキングの場合は、相手にあれこれ類推してもらうことを極力少なくするという方向で説明するため、1)結論を先に書き、そしてその理由を 2)帰納法、もしくは演繹法で書くということで、成り立っていたことについて説明しました。

しかし、ブレインストーミングのように創造性を発揮するために、あえて経験の中から関係していること、あるいは直接関係していないと思われるようなことまで積極的に類推してもらったほうが良い、あるいはヒラメキのようなものを求めているという場合が考えられます。また、相手に物事を伝える場合、ロジックだけだと相手が構えてしまって思わぬ抵抗にあってしまうことも多くないためこれについても考慮しておきましょう。

そこで活用できるのが、ロジックとは反対方向のトランス・ロジックということになります。

それで、短期・戦略療法について以下のリンクでも書いたのですが、まずアブダクションについて書いておきましょう。


l      アブダクション

なぜ、アブダクションを使う?というと一見関係ないことを結びつけることで、以外と新しい発想が生まれるから・・・ということになります。
有名な例としては、ベイトソンが言った「人間は草である」[3]といったメタファーと関係があるわけですが、これを落語の謎掛けにすると、「人間とかけて草と解く、その心は?」と問い、まったく関係のない2つの要素に普段は意識に上がっていない関係性をどのように見ているのか?を引き出すような構造になっています。

もっとも、正気の人の場合、これがメタファーであるというそのコンテクストを理解して行なっているわけであり、正気でない人の場合、そのコンテクストで事実かメタファーかの区别がついていないという前提になっていたと思います。

普段、意識していない枠組みを飛び越えて発想するという意味ではアブダクションを上手く活用するというのは良い考えのように思えてきます。エリクソニアンの言葉で言うと、メタファーを上手く使って、問題、課題を解決するために認識を変化させるリソース(資源、資質、心身状態、パターン・・・)を見つけることが出来るということになるでしょう。


l       あえて曖昧に話す



l       間接話法

これは、心理療法家のミルトン・エリクソンが得意とした話法です。上で説明したようなロジカル・シンキングはビジネスのような場面では非常に有効なことが多いのですが、人を説得したり、個人的な内容を取り扱ったりする場合、結論を先に、しかも、直接理由を言うということが適当でないことがあります。


君の今年の成績は最悪だ。 第一に、売上目標にも言っていない、前年度比50%。第二に、勤務態度も最悪、今年に入って打合せの遅刻が月平均5回。第三に人間関係の構築もなっていない、アンケートの結果部署で最下位。


というようにたとえ、事実をベースにして話していても、おそらく険悪なムードになることは必至でしょう。

 結局、ここでの目的は相手を非難することではなくて、課題、問題を解決、改善してもらうことですから、これまた、結論自体を相手に考えてもらうとか、メタファーを使ったり、上司が自分の失敗体験を語る形式にするといった間接話法が必要になるように思ってきます。

それで、今日の結論ですが、日常や仕事の場面でも、ロジカルであるに越したことはないのですが、やはりロジカルと、トランス・ロジカル両方の方法を使えるようになる必要はあるのでしょう。

文献

記事の内容の正誤について、執筆者は一切保証いたしません。また、本書の内容、エクソサイズなどを実行した結果被った被害などについて著者は一切責任を負わないこととします。本ニュースレターの内容は、以下クリエイティブ・コモンズ・ライセンスに従うものとします。但し、引用元の著作権は引用元に所属します。ご意見、ご感想は次へ tritune'`@''gmail.com

0 件のコメント:

コメントを投稿