2012年2月4日土曜日

人の情報処理のモデルとIT機器の情報処理モデルは同じ


 
家族療法とか短期療法は、もともと人の認識にサイバネティックスのようなシステム論を当てはめて考えています。

それで、コンピュータ同士のコミュニケーションのモデルにも同じようにサイバネティックスのモデルが用いられています。

実のところ、ネットワーク・エンジニアがプロトコルアナライザ-を使ってコミュニケーションのやり取りを把握し、機器のコンフィグを調整するのとまったく同じやり方で、家族療法や短期療法はクライアントのコミュニケーションを把握し、主に言葉で認識を調整していくようなやり方になっています。イメージ的には、メッセージがやりとりされる内容(コンテンツ)でメタ・メッセージがルーティングという感じです。

そうすると使っているモデルと理屈は同じなので、日本で最も優秀な家族療法、短期療法家、予備軍はCCIEなどの取得者というようなことになるのですが、このことを知っている人は日本にはほとんど居ないと思います。(笑)


独り言


今日は、「人の情報処理のモデルとIT機器の情報処理モデルは同じ」と題して少し書いておきましょう。

サイバネティックスの系譜

  人の認識のやり方をどのようなモデルで考えるのか?というのは非常に深い課題なのですが、家族療法や短期療法の世界では、サイバネティックス、もっと正確に言えば、当初機会と人間の相互作用に着目した初期のサイバネティックスから、生き物同士のやり取りに着目した第二次サイバネティックスのモデルが使われているのは非常に面白い点です。[1]

これに関して、ノーバート・ウィナーらとサイバネティックスの研究を進めたハインツ・フォン・フォルスター[2]が最晩年に、カリフォルニア州のパロアルトにある短期療法の総本山であるMRI(Mental Research Institute)で、オートポイエーシスの提唱者であるウンベルト・マトゥラーナについて語った講演が非常に示唆的です。


(参考)


ITのネットワーク機器と人の認識を同じモデルで考える

 それで、このモデルが短期療法を代表する、というわけではないのですが、数日前からこのブログで関連記事を書いたエリクソン催眠家である John Burton博士の著作である「Understanding Advanced Hypnotic Language Patterns A Comprehensive Guide(2007) で構築されているコミュニケーションのモデルが非常に興味深いモデルです。

どこが興味深いか?というと、人の情報処理の論理モデルがインターネットの通信で活用されている情報機器と同じような処理モデルになっている点です。

  これについて少し説明しておきましょう。

私たちは外的世界の情報を視覚、聴覚、体感覚、臭覚、味覚から取り入れ、その情報から表象を構築し、認識された要素に言葉のラベリングを行い、その言葉を使って推論を繰り返す・・・というようなモデルになっているわけです。

ただし、その情報処理を行う途中で、ネットワーク機器の情報フィルターのように途中で情報がフィルタリングされ、ある意味、情報の削除/歪曲/一般化が行われ、そして意味が構築される、また、そのような認識に対しての反応として言動があるというような、「推論のはしご」のようになっています。


それで、サイバネティックス的には、認識主体が「何か問題がある」と考える場合、相手や状況との相互関係において認識のやり方それ自体に問題があるのではないか?と考えることになります。

それで、具体的にはネットワーク機器のトラブルシュートと同じように階層モデルになった各層の認識を規定している情報のフィルターを調整するということで、関係性を調整し問題解決を目指すことになります。

それで、人の認識を調整するための階層モデルが以下ということになります。

 
4層 ↑↓
Highest level of information processing really exists as a sort of two-headed being. →2つの人格からの情報の並び替え
3層 ↑↓
Making more personal meaning of the information received through our senses. →意味の構築
2層 ↑↓
Putting the sorted information together into some organized meaning in relation to other parts , some what like assembling a jigsaw puzzle → ゲシュタルトの構築
1層 ↑↓
The Continuum of Awareness → 情報の認識
  
1層は以下で書いたような情報の認識に関する処理


2層は、以下で書いたようなゲシュタルトの構築に関する処理


3層は、以下で書いたように認知心理学者のジャン・ピアジェや社会心理学者のレオン・フェスティンガー、ロバート・キーガンらを援用した意味の構築に関する処理


そして、4層は、現在認識主体の心身状態+認識主体のもつ信念/価値観からの処理ということになります。

 それで、Burton博士の著作を読むと、どの層におけるどの認知の機能対して、ある目的を達成するためにどのような言語パターンやメタファーで働きかければそれを調整することが可能なのかということが書かれています。

 個人的には、Burton博士の認知科学を背景にした人の情報処理のモデルを見ると、(強いAIを意識した考え方として)人間が魂を持ったマルチ・プロトコル・ルータに見えてくるから不思議なものなのです。

もちろん、人間は機械ではないので、こうすれば必ずこういう結果になるというような直線的に因果関係だけで定義できるわけではないのですが、このモデルのように、人間を情報機器に見立て、どの層のどの認識に関係するパラメータを変えてあげれば、そのコンテクストにおける問題が解決できたり、パフォーマンスが改善できたりするのかが、かなりの精度で特定できるようになるのだろうと考えています。  

 こう考えると、UNIXのカーネル・パラメータのチューニングが得意なエンジニアや CCIEなどのネットワーク・エンジニアは実は日本で最も優秀な家族療法や短期療法のセラピスト、あるいはコミュニケーションを改善し問題を解決に導くコーチ予備軍ではないかという仮説も構築出来てしまうということになります。 

 もっとも、この場合のエンジニアとセラピストの違いは、コンピュータをチューニングするためにコンピュータのターミナルからコマンドを叩くのか、人の心をチューニングするためにラポールを築いて言語やメタファーで示唆を与えるのかの違いで、基本の論理モデルはまったく同じというわけなのです。  

 それで、途中少し脈絡の無い話になってしまったのですが、結論は、サイバネティックス恐るべしというところなのでしょう。

[おまけの映像]

 
文献

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