2012年3月15日木曜日

ミルトン・エリクソンの言語パターン(その10)遷移の言葉7



メタファーは認知言語学の根幹でもあるし、エリクソニアンの技法の一つでもあるわけですが、メタファーを探求していくとライフワークになりそうなくらい奥が深いものであることが分かってくるわけです。

もちろん、個人的にはその迷宮に入ったまま、同じところをグルグル回っているような気がしているわけでもあるのですが。(笑)

独り言


今日は、「ミルトン・エリクソンの言語パターン(その10)遷移の言葉7」と題して少し書いておきましょう。

 内的知覚から内的知覚への遷移

今日は、引き続き、対象が中にある知覚→対象が中にある知覚、を結びつけるような遷移について書いておきましょう。

このように知覚が遷移するパターンは、例えば、人から物語を聴かされる、そして頭の中でイメージするといったような状況で起こります。もちろん、認識主体が実際そこにある中秋の名月を見ながら、その月から饅頭を連想し、さらに、その触感をイメージするというような場合もこれに含まれます。

また、コーチやセラピストがクライアントに対して、質問をしたり、メタファーを話したりすることで、クライアントの頭の中に二次経験としてのイメージが想起されるというのがこのパターンです。

この部分はクライアントの認識や認識のやり方を変化させるために、エリクソニアンが使うメタファーに関連していると思いますが、この話をはじめると最低でも200-300ページを割いて説明することになると思われるため、今後、このブログのテーマとして取り上げていく予定にしています。

それで、メタファーにはコーチ/セラピスト側がクライアントから情報に基づいて考え、コーチ/セラピストがデリバーする一般的なエリクソニアンのメタファーのパターンと、コーチ/セラピストのファシリテーションでクライアント自らがメタファーを考える、「リチャード・コップのメタファー」[1]や「シンボリック・モデリング&クリーン・ランゲージ」[2]のようなパターンがあります。

それで、エリクソニアンの使うメタファーにご興味のある方は、メタファーの使い方が時系列かつ体系的に書かれている「Metaphoria (2005)[3]、また、始めてエリクソンのメタファーの構造に切り込んだ「Therapeutic Metaphors(1976)[4]を薦めしたいと思います。
 
 さて、対象が中にある知覚→対象が中にある知覚の遷移のパターンは以下の表に示していますが、これは認識主体が経験することを知覚に還元して表現して表すための楽譜と思っていただければよいでしょう。

 実際にこのあたりを詳細に説明するには、フッサールやメルロ=ポンティの現象学の話をする必要があると思いますが、ここでは単に経験を記述するための楽譜であるとだけ説明しておきます。 また、上でも述べたように人の認識や認識のやり方が変化するためには、それぞれのイメージを変化させたり、そのイメージから想起される次のイメージの関係性を変化させたりする必要があります。


3 対象が内にある知覚→対象が内にある知覚、それぞれの遷移


Vi
Ki
Ati
Oi
Vi
1.Vi Vi
2 .Vi Ki
3. Vi Ati
4. Vi Oi
Ki
5.Ki Vi
6.Ki Ki
7.Ki Ati
8.Ki Oi
Ati
9.Ati Vi
10.Ati Ki
11.Ati Ati
12.Ati Oi
Oi
13.Oi Vi
14.Oi Ki
15.Oi Ati
16.Oi Oi

この表は、縦軸のVi(対象が内にある視覚)Ki(対象が内にある体感覚)Ati(対象が内にある聴覚、アナログ感覚) Oe(対象が内にある味覚、嗅覚)が横軸に先行して認識される知覚、そして横軸が(対象が内にある視覚)Ki(対象が内にある体感覚)Ati(対象がにある聴覚、アナログ感覚) Oi(対象が内にある味覚、嗅覚)それに続いて、同期もしくは後に遷移する知覚として表されています。

l       
変奏曲#1 


 個人的には、この例について、すぐに思いつくのが、The Beatles の「Lucy in the Sky with Diamonds[]です。

これについて見てみましょう。 もちろん、この曲名のタイトルを省略すると少しマズイ意味も含まれていますが、ここではメルヘンチックな歌詞にのみ焦点をあててみましょう。


Picture yourself in a boat on a river
With tangerine trees and marmalade skies
Somebody calls you, you answer quite slowly
A girl with kaleidoscope eyes

思い描いてごらん、船にのって川に浮かんでいるところを、
そこには、ダンジェリンの木とマーマレードの空
誰かが君を呼ぶ声がする、君はゆっ~くり、返事をする
そこには万華鏡の目をした、一人の女の子が見える。



まず、この曲の聞き手は、2 .Vi Ki まずは、ボートを思い浮かべ、自分が川で揺られている体感覚を想像することになるでしょう。

次に、1.Vi Vi おそらく、タンジェリン(濃いオレンジ色のみかん)の木を想像し、それがマーマレードのような夕焼けに生えている様子が思い浮かんで来るでしょう。

そして、11.Ati Ati 自分を呼ぶ声がどこからか聞こえ、それに自分の声で応える。

そして、9.Ati Vi 声のしたほうに焦点を当てると一人の女の子が見える。

という具合です。

これから想像するに、良くも悪くも、夢見心地に現実から離れた妄想を描いているような木もするわけですが、言葉から想起される内的なイメージから色々な感覚が生じるというところが一つのポイントでもあるように思ってきます。

もちろん、人が変化するためには、その人の世界観にあったメタファーをつくり、そしてそのメタファーを変化させる必要があるわけですが、まずは、そのメタファーがクライントの表象にどう働きかけるのか?どのようにイメージを想起させるのか? それを知るためには、その前提として、知覚がどのように動いているか?を知るということは非常に重要なことのように思ってくるわけです。 

文献
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