2012年3月17日土曜日

ミルトン・エリクソンの言語パターン(その12)比較級のパターン



このブログを読めば読むほど、実際の場面でもっと、もっと試したいという気持ちになってくるでしょう。(笑)

独り言


今日は、「ミルトン・エリクソンの言語パターン(その11)比較級のパターン」と題して少し書いておきましょう。

システム・アーキタイプの「成功を呼ぶ成功」のパターン

 「比較級のパターン」は、ミルトン・エリクソンの言語パターンとして取り出されているものです。

個人的には、このパターンをイメージすると、最初に思い出すのがMITスローン校の先生であるピーター・センゲ博士の著作「Fifth Discipline [1]の中に書かれていた「システム・アーキタイプ(System Archetype)」の一つである、「成功を呼ぶ成功(Success to Successful )」というパターンです。[2]

 システム・アーキタイプは、システムシンキングの思考ツールの1つで、組織や人間行動が引き起こすシステムの挙動に共通して見られるパターンと構造のアーキタイプです。 表面的な事象や状況、規模が異なる問題の奥に潜む共通のパターンを把握することで、各分野における先行事例を目の前の問題解決に活用しやすくなるという利点があります。


このパターンは、現実世界の因果関係から推論された、より抽象的なパターンを表現した図と言って良いと思います。

 もちろん、このアーキタイプには、認知-行動の循環が明示的に書かれておらず、行動主義に偏っているという指摘があったり、日本人が一般的に言う「場」の概念が入っていなかったりするため批判されることがあるのは以下で書いたとおりです。


 それでも、単に道具だと割りきってしまえば、日常生活や仕事の場面でも使えることがあるわけです。
 
それで、その中にある「成功を呼ぶ成功」というパターンについて少し説明しておきましょう。 これを、簡単に言ってしまうと、選挙でよく言う、何かの要因が連鎖的に作用して「地滑り的勝利」というようなパターンを表現したものです。

 例えば、市場に画期的な製品を投入する場合、つくればつくるだけ → 市場がどんどん拡大していくという場合もこのパターンにあたるでしょう。


 もちろん、経験曲線のように、時間をかければかけるほど何かが上手くできるようになる、とか時間をかければかけるほど速く出来るようになるとかといったようなパターンもこれにあたるでしょう。

エリクソンの「比較級のパターン」

それで、エリクソンの「比較級のパターン」[3]ですが、比較級を使って、上の「成功を呼ぶ成功」のパターンを因果関係を示唆するように話すことがこれにあたります。


もちろん、これは話であり、言葉であり、それが示す実体が本当にそうなっているのか?は確認を必要としますが、クリティカル・シンキングのモードで聴いていない場合は、それが実体を表していないとしても、「そう言われれば、そうかなぁ」という具合に、実体の見え方に影響を与えることになるでしょう。

 それで、具体的には、以下のような「~増えれば増えるほど→どんどん増える」「~増えれば増えるほど→どんどん減る」「減れば減るほど→どんどん増える」「減れば減るほど→どんどん減る」といった基本形のパターンが考えられます。


  それでは、具体的な言語パターンを見てみましょう。

l       具体例その1
 

The more you watch it, the more it seems to move in a meaningful way.

(意訳) それを見ればみるほど、それは、より意味のある動きをしている気がしてくるでしょう。


 ここでは、おそらく It をどのように解釈するかはクライアントに任されているように思えます。

 それで、ここで使われているが、「比較級のパターン」で、クライアントの見る、という行為と、クライアントの解釈の間にさも、因果関係が成り立っているように話している点でしょう。 構成主義的な考え方では、行為と認識の間には因果関係は成り立たないという考え方です。

ある意味、これはコージブスキーの言う「地図はそれが示す領土にあらず」なのですが、エリクソンの言語パターンは、意図的に「地図と領土」、つまり「言葉」と「実体」を混同させるような話し方になっていると言っても良いでしょう。

もっとも、これは禅で言う「指と月」の区别をつけるという考え方でもあるわけですが、


エリクソンの場合は、あえて「指」と「月」の混同、つまり「言葉(あるいは、思考の枠組み)」と「実体」論理階型の混同を引き起こす言語パターンを意図的に活用しているというのが興味深い点だと言えるでしょう。

l       具体例その2



the more  your hand risesthe more you will relax .

(意訳) 手を上げれば上げるほど、あなたはどんどんリラックスしていくでしょう。


このパターンは「比較級のパターン」のバリエーションとなりますが、より大きなパターンを見ると、以下で書いた「対象が外にある知覚→対象が内にある知覚」に遷移させているパターンとなっています。


l       具体例その3
 

"The less you trythe easier it becomes.

(意訳) 努力を止めれば止めるほど、それはどんどん達成しやすくなります。


このパターンも「比較級のパターン」のバリエーションとなりますが、このコンテンツはMRIの短期療法の考え方である、「問題は不適切な解決努力により維持される」というようなことを表しているように思ってきます。

(つづく)
文献

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