2012年3月30日金曜日

ミルトン・エリクソンの言語パターン(その24)複合的暗示



 お客の顔を見てネタと握り方を変える鮨職人はいるけれど、お客の顔を見ないかわりにマニュアルだけを見て鮨を握る職人はいませんよねぇ。

 それと同じでクライアントの顔を見ながら即応するエリクソニアンはいるけれど、予め用意されたスクリプトを読むだけの人のことをエリクソニアンとは言わないのが普通なんですけどねぇ。(笑)

 独り言


今日は、「ミルトン・エリクソンの言語パターン(その24)複合的暗示」について書いておきましょう。

複合的暗示

エリクソンの言語パターンは、一つの文の中で他水準(Multi Levels)のメッセージを含んでいるような形式になっているのですが、こういったことを考えながらミルトン・エリクソン関連の自分の蔵書を色々読んでみると色々面白いことに気がついてきます。

例えば、日本語を使っている場面では、高コンテクストな文化と相まってなのか、状況や相手との相互作用の中で色々な含みを考えているわけであり、言葉だけではなく当然行間を読んでいるということを行なっています。

それが英語の場合、低コンテクストの文化もあいまってか、英語を使う場合、個人的にはあまり行間を読んだり、あるいは「含み」を持たせたりした喋り方をあまりしてこなかったように思ってきます。

もっとも、エリクソンの言語パターンを読むと、ヴァレラ&マトゥラーナの著書「知恵の樹」[1]に書かれているように「言われた言葉には、それを言った誰かがいる」というようなサイバネティックス的な相互作用と、あえて言葉に「含み」を持たせた喋り方が非常に有効な時も多いように思ってきます。

それで今日は暗示の続きとして、複合的暗示(Compound Suggestions) について書いておきます。 複合的暗示は、エリクソン&ロッシの「Hypnotherapy:  An Exploratory Casebook (1979)」で導出された暗示のパターンで、クライアントに抵抗を受けないように、クライアントの世界観(Model of the world)にペーシングを行い、そしてリーディングを行うような形式で用いられる暗示です。[2]

ペーシング&リーディングについて、ここではセラピストが用いる言語パターン上のペーシング&リーディングについて説明ついて少し書いておきましょう。

リーディングは、誰が見ても、聞いても、感じてもそれが事実と思えること、例えば、「あなたは、今、椅子に腰掛けようとしていますね。」とか「あなたは、今、絨毯の上に立っているのを足の裏で感じていますか?」とか、あるいは一般的で否定し難い事柄、例えば、「今日は天気が良いですねぇ」とか「今日は休日でしたっけ?」のように非常に他愛もないものです。

もちろん、ここでクライアントが五感で認識している事実、あるいは、否定し難い一般的な事柄について言及しているため、ラポールを構築する過程として、こういった言動について抵抗が起きにくいというのが一つ重要な点です。

また、複合的暗示の場合は、ペーシングのために用いる文と暗示を行う文が、and
butor untilsincebecause, thoughifso as and after などの接続詞で結ばれており、時間の経過や因果関係を示唆するような形式になっているという特徴があります。

それで、このようにして一旦クライアントにペースを合わせ、その関係性を強化しながら、次にセラピストの主観的なことを相手に伝える、ということがリーディングということになってきます。

このあたりのことは、スティーブン・ギリガン著「Therapeutic trances [3]に詳しく書いてあったので、このあたりを読み込んでみるのも良い考えでしょう。

 さて、いくつか複合的暗示の例について書いておきましょう。

l       使用例その1


 "You are sitting there , one of your hands will feel lighter  
(意訳) あなたは、そこに座ろうとしています、どちらかの手が軽く感じられてくるでしょう。

 
 これは現在進行形の「(椅子などに)座ろうとしている」行為を、セラピストが言葉で記述し、そして、この後に続く文で手の軽さという感覚に注意が向くように暗示を行なっているケースです。
 
l       使用例その2


"As that fist gets tighter and tensethe rest of your body relaxes."

(意訳) その拳を固く握り締めると、あなたの体のそれ以外の部分はリラックスします。


クライアントの拳を、あえて Your fist と呼ばず、拳自体をクライアントから外在化させたように勘違いさせるために that fist と呼んでいるのがエリクソンの芸の細かさのように思ってきます。それで、拳を固く握り締めるその感覚に続いて、他の身体はリラックスするというように、記憶[4]でいうとプライミング記憶を使った条件付けのようなことが行われているということになります。
 
l       使用例その3


"And when your conscious mind recognizes a plausible and worthwhile solutionyour finger can lift automatically"

(意訳) あなたの意識がもっともらしい、価値のある解決策を見つけたとき、あなたの指は自動的に立つことができます。


 これは、複合的暗示に、Conscious-Unconscious スプリットのパターンを組み合わせているように思いますが、意識的な思考で解決策が見つかる⇔無意識に指が立つというような対比になっています。

 このあたりはダブル・バインドの言語パターンのうちの Conscious-Unconscious ダブル・バインドの変奏と言っても良いかもしれませんが、


 実際に Altered States of Consciousness の状態でこの暗示が機能すると指が立つということが興味深い点でもあるのでしょう。

 それで、この複合的暗示のバリエーションは色々存在していますが、このあたりは原典を当たって色々研究していいただくと良いと思います。
 
文献
[4] http://ja.wikipedia.org/wiki/記憶


記事の内容の正誤について、執筆者は一切保証いたしません。また、本書の内容、エクソサイズなどを実行した結果被った被害などについて著者は一切責任を負わないこととします。本ニュースレターの内容は、以下クリエイティブ・コモンズ・ライセンスに従うものとします。但し、引用元の著作権は引用元に所属します。ご意見、ご感想は次へ tritune'`@''gmail.com

0 件のコメント:

コメントを投稿