2012年3月1日木曜日

ミルトン・エリクソンの言語パターン(その2)名詞化


 
オバマじゃないけれど、興味の対象が一つではない聴衆を目の前にして話す時は、ある意味曖昧で抽象的な、名詞化された言葉を投げかけたほうが、具体的に話すより興味をひきやすいのだよねぇ。

独り言


今日は、「ミルトン・エリクソンの言語パターン(その2)名詞化」と題して少し書いておきましょう。

 名詞化の由来

名詞化(Nominalization)とは、動詞や動詞句を名詞や名詞句として話すことです。

l       動の視点、静の視点

最初に、言葉と知覚・認識が相互作用すると考えると考えましょう。人が意識的な思考をする場合は、認識された事象に言葉のラベルをペタペタ貼付け、このラベルを記号操作しながら推論を行うというのが思考というわけです。


現実に起こっている事象を動詞を貼りつけて捉えるというのは何事も生々流転していつも移り変わっているとして世界を捉えていると考えられますし、逆に名詞を貼りつけて捉えるというのは、生成流転している世界のスナップショットを取るように瞬間を保存し、いつまでも変わって欲しくないというように世界を捉えているようにも思えてきます。

これから考えると、人は、身の回りの出来事を生々流転するフローとして観察する視点と、身の回りの出来事を固定化されたストックとして観察する視点の両方を持っており、この視点やそこから受ける感じは言葉によって調整できるようにも思えてきます。


余談ですが、会計を考えるととにかくフローを重視する米国流とストック重視だった欧州日本流の会計方法などが思い浮かんできたりもします。

さて、この概念が始めて登場するのは、「Patterns of Hypnotic Techniques of Milton Erickson , M.D. [1]です。本書では、チョムスキーの初期の生成文法を使って、心理療法家のミルトン・エリクソンの言語パターンがとり出されています。

もっとも、名詞化の元々の概念は、チョムスキーの「Remarks on Nominalization(1970)[2]から来ています。

l       名詞化の具体例

具体的に名詞化されたエリクソンの言語パターンを見てみましょう。


"You have the knowledge in your unconscious mind about how to change.

(意訳) あなたの無意識の中には、どのように変わったら良いのかについての知識が詰まっています。


 要は、「変化のための暗黙知をいっぱいもってますねぇ」ことを言っているわけであり、リラックスして聴いていると思わず心地よく聞こえるわけですが、これとは異なるクリティカル・シンキングのモードでちょっと意識をピリピリさせて聞いた場合、「知識とは一体何を差すのか?」、「知識があることがどうやって分かるのか?」、「具体的にその知識はどういったプロセスで発揮されるのか?」、「知識が発揮される時のコンテクストは?その時の制限はあるのか?」など、など、曖昧な部分に対して突っ込みどころ満載というのが、エリクソンの催眠言語の特徴でもあるわけです。

l       名詞化の目的のひとつは相手とのペーシング

 もちろん、身の回りを見渡してみても、このような名詞化された言葉というのは多く存在し、一見論理的なことを言っているように聞こえても、非常に曖昧であることが少なくありません。

例えば、「効率化は重要です。」「学習は良いことです。」「直向さが成功の鍵です」などなど・・・。

それで、この効果なのですが、聞き手とペーシングをしてラポールを築くような場合、最初から有無を言わさず具体的なことを言うよりも、こういった名詞化された抽象的で曖昧な言葉を投げかけるほうが相手との関係を築きやすいということが考えられます。

l       曖昧でも相手が勝手に補完してくれる

また、以下のリンクでも書いたように、名詞化することにより シンタックス上、もしくはスコープ上の曖昧さを含む文になっているとすると、


聞き手みずから、自分の記憶の中から適当な具体例を探し、例えば、上で述べた「効率化」や「学習」により具体的な例を当てはめ、自分なりにイメージし欠落した情報を補うというようなことが行われていると考えられます。(Transderviational search

 もっとも、ミルトン・エリクソンがどのような心遣いでこういった言語パターンを使っていたのかについて知るよしはないのですが、少なくとも相手やグループと認識を合わせる最初のフェーズでは、相手の世界観に近づくために名詞化した少し曖昧な言葉を使ったほうが良いのだろうなということは分かってくるわけです。

文献

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