2012年4月3日火曜日

ミルトン・エリクソンの言語パターン(その26)前提その1



デパートなんかでは、明らかに夫婦と推測できても「お連れ様」と特定の関係を示唆しない言い方になっていたりしますねぇ。

その意味では、事実を言葉で記述する時に、記述する人の主観が反映されてしまって、事実を確認しないで「旦那様」と呼んでしまったりするわけで、気をつけていないと、実は、客観的な記述というのは案外難しいことが分かってくるわけですねぇ。


そう言えば、福島原発事故で爆発があった時に、役人や東電は、事故 (accident) とは言わずに事象(phenomenon/incident)があったと言い続けていたなぁ。もちろん、事故と言ってしまうと、この前提に誰かが、ある基準から判断して事故と決めたということが含まれてしまい、判断をした責任を取らされないための予防線をはったということなのだろうけれども。

 独り言


今日は、「ミルトン・エリクソンの言語パターン(その26)前提その1」について書いておきましょう。

前提として何が織り込まれているか?

 ここで説明する、前提(Presupposition)とは、ある言葉の中に暗黙の前提を含めて話してしまうようなパターンです。

 もちろん、これはミルトン・エリクソンに限らず私たちが言葉を使う時に普通に起きてしまうことになります。

 例えば、「いつになったら遅刻するのを止めるのでしょうか?」とすると、相手はいつも遅刻する、ということが前提に織り込まれているという具合です。

 また、「田中さんは今日の会議に出席されていますか?」と言ったとすると、田中という登場人物が存在しているということが、前提として織り込まれているということになります。

 もちろん、このあたりは普段は当たり前すぎて意識的に確認していないようにも思ってきますが、ある言葉の背景にある前提が何であるのかを確認すること非常に大事になる場合があります。

 それで、エリクソンが用いた前提については、「Patterns of Hypnotic Techniques of Milton Erickson ,M.D. vol.1[1]の付録に5つの単純な前提(Simple Presuppositions) が取り出されています。

l       その1、固有名詞(Proper Names)


 " John Smith left the party early.
(意訳) ジョン・スミスはとっくにパーティをお暇した。


 
 ここでは西洋お得意の形而上学的な存在論(Ontology)、つまり、その人が存在している、あるいは何か物事が存在している、存在した、ということが前提に織り込まれているというのがこのパターンです。

 これもある意味当たり前すぎると言ってしまえば当たり前すぎることになりますが、ジョン・スミスさんという固有名詞を持った人がこの世に存在しており、その人はとっくにパーティからお暇した、ということを前提に含んでいるということになるわけです。

l       その2,代名詞(Pronouns)


" I saw him leave"

(意訳)私は、彼がお暇するのを見た。


 ここでは、代名詞に含まれる前提ということになりますが、この場合は、him が使われているので、この人は男性であるということを示唆していることになります。
 
 もちろん、it であれば、誰か分からない人間、雌雄が分からない動物、人間でないもの、抽象的な物事に対して用いる、ということになるでしょう。

 つまり、代名詞には状況と相互作用する何らかの前提が含まれているということになります。

l       その3、確定記述(Definite Descriptions)


 " I like the woman with the silver earrings.
(意訳) 私は、両耳にイヤリングをしたその女性が好きだ。


 
これは基本的に複数の名詞で説明される前提となりますが、上の例であれば、イヤリングをした女性が実際に存在しているという前提が文に織り込まれている格好になっています。

l       その4、総称的名詞句(Proper Names)


 " If wombats have no trees to climb in , they are sad.
(意訳)もし、ウォンバットはよじ登る木が無ければ、非常に悲しいだろう。


 
総称的な名詞句としては、1)定冠詞+単数可算名詞、2)不定冠詞+単数可算名詞、3)無冠詞+複数可算名詞があります。

ここでは、名詞句の中に、前提としてウォンバットが存在するということが織り込まれている格好になっています。

l       その5、量化子( Some Quantifier )


 "If some of the dragons show up , Im leaving.
(意訳) もし、何匹か大蛇が出てきたら、私は逃げます。

 
これも、量化子の中に、前提として大蛇が存在するということが織り込まれている格好になっています。

さて、上のような例から、言葉の端々に注意を向けてみると案外色々な前提を織り込んでコミュニケーションしていることに気がついてきます。 
 
文献

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