2012年4月9日月曜日

ミルトン・エリクソンの言語パターン(その26)前提その6



 確か、ベイトソンの『精神と自然』の一節に「科学は何も証明しない」というのがあった。ユークリッド幾何学みたいなものならともかく、社会科学系の現象は科学的にその因果関係を証明しようがないことも多く、ミルトン・エリクソンの治療プロセスみたいなものもこれにあたると思う。 

でも、エリクソンを探求する時に、認知科学だとか現象学だとかに片足はおいておかないと、とてつもなく怪しい方向に流れていく気がしているのは多分気のせいじゃないと思うなぁ。(笑)

 独り言


今日は、「ミルトン・エリクソンの言語パターン(その26)前提その6」について書いておきましょう。

存在と関係性を含む前提

 今日は、話題を元に戻して、完全な前提 (Complete Presupposition)の続きについて書いておきましょう。 

ここで、複合的な前提と呼んでいる理由は、その文に登場する要素の存在だけではなく、何らかの因果関係、相関関係を含んでいるためにこう呼んでいます。

 エリクソンが用いた複合的な前提については、シンタクスの視点から「Patterns of Hypnotic Techniques of Milton Erickson ,M.D. vol.1[1]の付録に24の前提が取り出されています。

今日は、そのうち1315の3つについて書いておきましょう。

l       その13、場所の変化を表す動詞(Change-of-place Verbs)


 "If Tom has left home , he is lost.
(意訳) もし、トムが出かけていたら、道に迷っていただろう。

 
 場所の変化を表す動詞は、come , go , leave , arrive , depart , enter などを指します。 

この動詞は文字通り場所の移動や変化を表していますが、上の例のように仮定法で使うと「実際にはトムは出かけていないので、道に迷うことはなかった。」という意味を前提として含むことになります。

 基本的には場所の移動を伴う状況をシミュレーションしてもらうという場合に活用することができるでしょう。

l       その14、状態の変更を表す動詞、副詞( Change-of-Time Verbs and Adverbs)


 " When she begins to play , please be quiet.
(意訳)彼女がプレイする時になったら、静かにしてください。

 
 時間の変化を示す動詞、副詞は、begin , end ,stop , start ,continue , proceed , already , yet , still ,anymore などを含みます。

 この動詞、副詞は文字通り時間の変化を表しますが、上のように「彼女がプレイする時になったら、静かにしてください。」→「現在は、がやがやしてうるさい」ということが暗黙の前提として含まれていることになります。

l       その15、状態の変化を示す動詞(Change-of-State Verbs )


 "I ll change my tie as soon as you change your dress.
(意訳) あなたがドレスを着替え次第、私はネクタイを変えるつもりだ。

 
 状態の変化を示す動詞は、change , transform , turn into , become などを含みます。

この動詞は状態の変化を表しますが、上の例の場合、「あなたがドレスを着替え次第、私はネクタイを変えるつもりだ。」→「相手もドレスを着替えていないし、自分もネクタイを変えていない。」ということが暗黙の前提として含まれていることになります。

 さて、前提についてもう少し続きますが、普段日本語で喋っている時にも、意図してか意図せずしてかの違いはあるにせよ、結構、暗黙の前提を入れた形式でおしゃべりしているということが分かってくるのは面白いところなのでしょう。


(つづく)

文献


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