2012年4月17日火曜日

ミルトン・エリクソンの言語パターン(その28)否定文:同格の反対



 個人的には催眠とかトランスとかいうことは副次的な話だと思っていて、認知科学とか言語学の視点からエリクソンの言語パターンを眺めると、ここには人の本質的な認知に関する本質が含まれているように思ってきます。

 独り言


今日は、「ミルトン・エリクソンの言語パターン(その28)否定文:同格の反対」について書いておきましょう。

二項対立のようで二項対立でない

 同格の反対(Apposition of opposite)はまったく反対の概念を一つの文にくっつけ、一見二項対立を明示したようなしていないような、多少意味不明のところがあるエリクソンの言語パターンです。


 この言語パターンは、ダブル・バインドの言語パターンにずらしを加えたような形式になっているとも解釈できますし、あるいは混乱法の一部とも解釈することができますが、実際には同レベルでのシンメトリーな対立とみせかけて上下のコンプリメンタリーな関係になっていることがわかってくるでしょう。[1]


 使用例 その1 


And you can remember to forget , can you not ? ?

(意訳) 忘れるために覚えておくことはできますか、ねぇ?


上の例は短い例ですが非常に多くの要素を含んでいます。まず、can これは以下のリンクで書いた様相演算子になっています。


また、remember forget はそれぞれ以下で書いた非指定動詞。


ただし、この場合は、remember to forget となっているために、ベイトソンの Theory of Mind あるいは一般意味論の Multi-ordinality からすれば、forget が目的で remember が手段となり、forget のほうがより上位の論理階型に存在することになります。


また、文末は昨日書いた付加疑問文の形式になっています。

l       使用例 その2


How comfortable do you feel , now , about what used to be uncomfortable , then.

(意訳) その時、あなたが経験した居心地によくないことについて、今はどのように心地良いものだったのか感じていますか?


このパターンも日本語にしてしまうと焦点が少しぼやけてしまうのですが、少し解説しておきましょう。

まず、過去に経験した居心地の良くない事を対象としてそこに焦点を当てるような形式をとっています。 

ベイトソンの論理階型の理論からすると、居心地のよくないことが下位に存在します。 そして、その居心地の良くない対象に対して、居心地の良いという具体的なプロセスとして心身状態を、居心地の良くない状態の上位の論理階型にあるリソースとして上にかけるような形式になっているのがこのパターンです。

l       使用例 その3


Learning to unlearn can be useful.

(意訳) アンラーニングすることを学ぶことは有効なことになり得ます。


ここでも、ベイトソンの論理階型で考えるとアンラーニング(学習したことを手放すこと)を学習する、と書かれており 目的が unlearn で手段が learning であり、unlearn が論理階型の上位にあることになります。 また、can が様相演算子、


そして、useful が遂行発話の欠落となっています。


それで、このように見ていくとエリクソンの言語パターンは一見、曖昧なところが多いわけですが、実際には「曖昧なことを精緻に喋る」非常に練られた言語パターンであることが分かってきます。

(つづく)

文献

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