2012年7月2日月曜日

ミルトン・エリクソンのフェブラリーマン・アプローチの可否(その1)

                                     

ミルトン・エリクソンのフェブラリーマン(2月男)という1945年に行われたセッションがあるわけですが、これが退行催眠を使うやり方で虚偽記憶をつくっているのですよねぇ。女性の記憶を幼少の頃に戻して、エリクソン自身がその少女の父の友だちのフェブラリーマンという名前でそのイメージに登場して、楽しい記憶を再構築する・・・・・ってな感じで・・・・まるでスタジオジブリのアニメの世界です。 それで、エリクソニアン・アプローチの中でも今現在はあまりやらない技法だと思いますがこの技法をどう位置づけるのかちょっと判断が難しいところですねぇ。

独り言


今日は、「フェブラリーマン・アプローチの可否(その1)」について書いておきましょう。

メタ記憶とは何か?

はじめに、認知科学の概念にメタ記憶(Meta Memory)[1]という概念があります。

メタ記憶の定義は「メタ記憶とは;ある記憶内容が自己の記憶貯蔵庫のなかにあるか否かということに関する知識で、具体的な記憶内容を思い出せなくてもその有無の判断はかなり正確である。」[2]とされており、要は経験の内容(Contents)が存在するのかしないのか?についての記憶についての記憶がメタ記憶と言う格好になっています。

記憶は非常に曖昧な面があるわけですが、例えば、「先週の今日どこでお昼ごはんを食べましたか?」と聞かれると、「食べたというのは間違いないけれど、どこで何を食べたかなぁ? そばだったか?カレーだったか?幕の内だったか?記憶にないなぁ。」となることが多いわけですが、少なくとも「食べたというのは間違いない」と確信を持って覚えているのがメタ記憶にあたるというわけです。

 それで個人的には想像と現実の区别を付けているのがメタ記憶だと考えていたわけですが、「メタ記憶によるソースモニタリングエラー」[3]というタイトルの論文を読むとこの理解で問題ないようです。

 それでエリクソニアン催眠やブリーフ・セラピーのテクニックでこのメタ記憶に働きかけるという技法があります。

例えば、先週の今日実際に食べたのはカレーでそばは食べなかったのだけれど、メタ記憶をいじることで、実際に食べたのはそばだったと確信を持って記憶を勘違いさせる技法というのが存在します。

もちろん、ここでのポイントはそばを食べたこともカレーを食べたことも想像することはできるわけですが、本当にそれが事実かどうだったのか?をメタ記憶で判断していることになっているわけです。それで、詳細はここでは書きませんが、これを実験するとても簡単な方法が「Beliefs: Pathways to Health and Wellbeing[4]に書かれています。


個人的にこの実験を行ったことがありますが、とても簡単なやり方で勘違いを起こすことが出来ます。

フェブラリーマン・アプローチ

心理療法家のミルトン・エリクソンとアーネスト・ロッシの著作に「The February Man (1989)[5]というのが存在します。個人的に保有しているのも1989に出版された版ですが、本書では、エリクソンが鬱と水恐怖症を抱えた女性のクライアントに対してエリクソンのセッションとしては稀な明示的な退行催眠を用いて治療する方法が記述されているわけですが、実際にこのセッションが行われたのは1945年と記載されています。

上で述べたようにありもしない虚偽記憶(False Memory)[6]を思い出して、退行催眠によってメタ記憶に働きかけて、それを実際にあったことにすれば簡単に虚偽記憶が出来てしまうというところが少し空恐ろしいところになると思います。

 それで個人的に気になったのはエリザベス・ロスタフ博士の論文「Creating Child Memory[7]の中で引用されているこの「The February man」アプローチに対する記述です。
 

The widely acclaimed physician and hypnotherapist, Milton Erickson, had long
earlier published his famous case of `The February Man', that he felt showed the
systematic construction of a false memory (Erickson and Rossi, 1989). Briefly,
Erickson had been treating a depressed woman with phobias that were subsequently `discovered' to have been based in buried guilt over death wishes toward her younger sister whom she had once shoved into a washtub filled with water. To comfort his patient, Erickson hypnotized and regressed her to a birthday party when she was 4 years old. While in a trance he made her believe that a friend of her father's had brought her a birthday present. That friend became known as the `February Man', a reference to the month of the invented birthday visit. A comment on the technique by Erickson's collaborator Ernst Rossi is telling: `Notice how smoothly, subtly, and indirectly Erickson has established this past memory' (p. 52), a reference to the absence of direct hypnotic commands on the part of the physician.


要約を少し書いておくと、
賞賛されるべきミルトン・エリクソンは1989年に出版された「The February man」のセッションでは統計的に虚偽記憶を構築する方法を披露している。
このクライアントは女性で、鬱病と水恐怖症に苦しんでいる。その原因は幼少の頃妹を溺死させそうになったことに起因していると考えられる。ミルトン・エリクソンは彼女を4歳の誕生日まで退行させ、その子の父の友人の「The February Man」という登場人物でイメージの中に登場させ、そこから(愉快な)記憶を再構築していく方法が取られる。

 それで、このあたりの技法を使うガイドラインがどうなのか?あれこれドキュメントを探してみたところですが、こればかりはエリクソニアンな重鎮先生方にインタビューでもしないと分からないといったところですねぇ。

 でも、これを真面目にやったら本1冊くらい書けるか?くらいにはなりそうな内容なのでしょうから今後の宿題にしておくことにしましょう。(笑)

(つづく)

 文献
[7] http://psy2.ucsd.edu/~hflowe/MemoryLoftus.pdf


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