2012年7月10日火曜日

なぜミルトン・エリクソンは子供に話しかけるように話したのか?

                                     

シリコンバレーあたりに本社のある外資系企業に勤務した経験が長いといつまでも子供のような気分で居られるように思うなぁ。だから未だに子供気分が抜けない。(笑)

独り言


今日は、「なぜミルトン・エリクソンは子供に話しかけるように話したのか?」について書いておきましょう。

童心を忘れるべからず

 心理療法家のミルトン・エリクソンのクライアントとのセッション映像がネットにアップロードされていたりするわけですが、こういった映像を視聴していて、個人的には非常に単純な疑問が湧いてきたというのがあります。それは、「なぜ、ミルトン・エリクソンは子供に話しかけるようにクライアントと話をしたのか?」です。

 例えば、以下のリンクで書いた「リバース・セット」のセッションで登場する、アーネスト・ヒルガードの秘書であるルースという名前の女性にも、まるで小さな女の子に話しかけているような話法で話しかけている様子が伺えます。


 もちろん私が英語のネイティブ・スピーカーでないことを割り引いても、エリクソンは子供に話しかけるような話法を使っているように聞こえます。

 それで、これが気になり始めると時間がある時に色々な文献を読んでみたり、Google Scholar で文献を検索してみるということになるわけですが、「私の声はあなたとともに」の著者でもあるシドニー・ローゼン博士が「The February Man[1]のフォワードで私が持った疑問とまったく同じ疑問について書かれているところを読んで「はっと」したというわけです。

 以下少し引用しておきましょう。(但し訳は適当)


While I was reading this book , it become clear to me why Erickson tended to treat almost every one like a child ! I suddenly understood why at least in his later years he seemed to be so enamored of corny jokes childish puzzles and games.

私はこの本(The February Man)を読んでいた時、エリクソンがほとんどすべてのクライアントを子供のように扱う傾向があったことについての理由が明らかになった。少なくとも、晩年の彼が、なぜ、非常に陳腐なジョークや幼稚なパズルやゲームに夢中になっているように見えたのかを理解した。

 I now feel that he understood probably from having leaned it from working with adult patients in the hypnotically regressed state that it is precisely in this child state that we are most open to learning most curious and most able to change.

 さて、私は、エリクソンが大人の患者とセッションを行なって、彼らの気持を童心に戻した時に学んだことは、それが最も何かを学ぶために心が開かれた状態で、もっとも好奇心を発揮できる状態で、もっとも変化を起こすことで出来る状態であると理解したと感じた。 (注:個人的には、個々の経験のコンテンツを引き出すよりも童心という心身状態[ステイト]を引き出すのを目的にしていたと考えています。またエリクソニアンの用いる退行は子供の頃の純粋で好奇心にあふれた心身状態のような資源・資質[リソース]を引き出すために活用するものだと考えています。)

In order to intensify the patients experience of regression, Erickson worked consistently to create a remarkably convincing illusion that he really was an older person talking to a young child.

クライアントが童心に戻った状態を高めるために、エリクソンは非常に納得感のある幻想、つまり高齢者が若い子供に話すような物語を作り出すために一貫性を持ってセッションを行った。

He had the child reenact and abreact to traumatic experience and through discussions, guided her through a reeducation process. As a result the child had new experience to add to her memories positive experiences with a caring and understanding adult. These corrective regression experiences as I have called the exerted a long-lasting effect on the patient even after she returned to her adult self.

エリクソンは、ディスカッションや再教育のプロセスを通して、(女性クライアントの)トラウマになっている経験を再現しそれを解除することを通して女性の「童心」を取り扱った。そして、結果として彼女の「童心」は、(ミルトン・エリクソンが演じた)思いやりがあって理解がある大人との肯定的な経験を加えることで新しい経験を学ぶことになった。 私が「退行によって修正された経験」と呼ぶ経験は、クライアントが現在の大人の心に戻った時にも効果を維持し続ける。


個人的には、ここで重要なことはシドニー・ローゼンの言葉のように学習で身に付けた思考の枠組みを一旦すべて忘れてまさに子供のように純粋な心身状態に戻ることではないかと考えています。

それで、ミルトン・H・エリクソン財団のトレーニング・ガイドラインの Age regression and Age progression[2]の項目を読むと以下のように書かれています。

Age regression is a common trance phenomenon which appears spontaneously and in response to direct suggestion ( go back to a time when you were a teen-ager, small child,in the third grade) and to indirect suggestion (little children on the first day of school, etc.).

年齢退行は直接暗示(10台、小さな子どもの頃、三年生の頃、に戻りなさい、など)もしくは間接暗示(始めて学校に通った初日の小さな子ども、など)によって自発的に引き起こされる普通に起こるトランス現象の一つです。

Age regression is used to access memories and resources.

年齢退行は、記憶やリソースにアクセスするために活用されます。

Age progression is a form a self-induced post-hypnotic suggestion involving ego strengthening (this problem is solved when this pain is healed).

年齢進行は、自ら後催眠暗示を引き起こす形式で自我を強化するために使われる(痛みが癒された時にこの問題が解決する、など)形式の一つです。


それで退行はどうしても虚偽記憶[3]の問題が出てくるため最近の注意が必要だと考えていますが、このあたりは今後の課題としたいと思います。


もちろん、短期・戦略療法の原則からすれば、現在の問題をつくっている枠組みからアウト・オブ・ザ・ボックスを行うためにアブダクティブに学習するというのが主眼になってくるために、ここでも結局はベイトソンの マインドの理論(Theory of Mind)からすれば上位の論理階型に抜けるような視点を持てなければ退行だけしてもまったく意味がないということになってきます。


http://ori-japan.blogspot.jp/2011/08/blog-post_31.html 


もっとも今まで身に付けた、自分を制限する、ほとんど役に立っていない常識のようなものを見つけるには、純粋で好奇心にあふれ、王様は裸だと言える「童心」というのは重要なリソース(資源・資質)になるのだろうなと。

(参考リンク)
(つづく)

 文献

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