2012年7月22日日曜日

1+ミルトン・エリクソン&アーネスト・ロッシ三部作+1=5

                                     

ミルトン・エリクソン(1901-1980)が神業のような技法で多くの弟子を魅了した本当の意味での全盛期は最晩年の1976年前後ではなかったのか?と個人的には推測しています。

独り言


今日は、「1+ミルトン・エリクソン&アーネスト・ロッシ三部作+1=5」について書いておきましょう。

 誰と共著なのかでまったく作風が異なる主要図書5冊

世の中不思議なもので、あまり積極的に収集していたわけではないのですが、気がつくとカリフォルニアの古本屋で購入した本などを含め、英語版の Wikipedia[1]に掲載されているミルトン・エリクソン&ロッシの三部作を含めた+2冊が手元に勢揃していて座右の書という状態になっています。

·        The Practical Application of Medical and Dental Hypnosis(1961)  (with Seymour Hershman and Irving I. Secter) [2]
·        Hypnotic Realities  (1976) (With Ernest L. Rossi)[3]
·        Hypnotherapy - An Exploratory Casebook (1979) (With Ernest L. Rossi)[4]
l            Experiencing Hypnosis (1981) (With Ernest L. Rossi)[5]
·        Time Distortion in Hypnosis (1982) (With Linn F. Cooper)[6]

この5冊は、共著の方々が異なっていることと、時代が少し違っています。逆に言うと、それぞれの作風の違いから時代毎にどのような変化があったか?を観察することでミルトン・エリクソンのスタイルの変遷が見えてくるのが非常に面白いとも思っています。

それでごく最近「The Practical Application of Medical and Dental Hypnosis(1961)」が「ミルトン・エリクソンの臨床催眠セミナー15のデモンストレーション」[7]と名前で邦訳されていますが、個人的には、上の五冊はやはり1+3+1というようにロッシとの共著を挟んで3つに分けて考えるべきだと考えています。

具体的にどのように違うかというと、本来のエリクソン催眠はMRIのポール・ウォツラウィックの言うシステムの一部が変化する第一次変化(First-order Change)より、上位の論理階型にあるシステム全体が変化する第二次変化(Second-order Change)[8]で表すことの出来るある程度恒久的な認識や行動の変化を導くために使用されるという考え方があります。   

それで、MRI(Mental Research Institute)の人たちによって形式知化された後のエリクソン催眠は、ベイトソンのダブル・バインド仮説(Toward the theory of schizophrenia 1956)[9] やマインドの理論[10]、あるいはウォツラウィックのコミュニケーションの公理[11]といった切り口で説明され、ロッシとの共著には当然ながらこの仮説が反映されており催眠療法後の認識と行動のある程度恒久的な変化を目的にしていることが分かります。

それで、1961年に初版が出版された「The Practical Application of Medical and Dental Hypnosis」は名前の通り、医師や歯科医師が患者の治療を行う際に恐怖心を軽くしたり、感覚を消失させたりするために催眠を活用する方法が書かれているという意味でロッシとの共著とかなり毛色が異なっています。逆に言うとある程度恒久的な認識や行動の変化は目的にしておらず、治療している間だけトランス誘導を行い患者に落ち着いた状態になってもらって、円滑な診察や治療を行うために活用できれば良いという目的で書かれていることになります。

もちろん、ここでは古典催眠とは異なって間接暗示を使うような形式にはなっていますが、一般的なエリクソン催眠の技法である、ダブル・バインドを含めた言語パターンやスプリット&リンキングなどは登場せず、かなりマニアックなメタファーで説明するとコルトレーン・チェンジを編み出す前のコルトレーンの演奏のような状態となっています。

もちろん、ここでは2つの解釈、つまり「エリクソンは既に後の Hypnotic Realitiesに書かれているような技法を使っていたけれども、著者たちが形式知化して掲載しなかった、あるいは出来なかった 」のか「そもそも、エリクソンがこういった技法をまだ完成させていなかったのか?」があると思いますが、これはエリクソンカンファレンスでも言って存命している最古参のロッシ博士かザイク博士あたりにでも質問してみるしかなさそうだなと思っているわけです。

また、余談ですが「Time Distortion in Hypnosis (1982) 」はかなり実験的な内容で文字通りトランス状態における時間感覚の歪曲について書かれている著作です。こちらもロッシの三冊とかかなり毛色の違う内容となっています。

それで何が言いたかったか?というとこの中ではエリクソン&ロッシの著作が三冊甲乙つけ難い感じでお気に入りということになりますねぇ。まさにこれこそエリクソニアンって感じなのですよねぇ(笑)。

(つづく)

 文献
[11] http://en.wikipedia.org/wiki/Paul_Watzlawick


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