2012年7月27日金曜日

短期・戦略療法の傾聴の原則

                                     

コーチングや心理療法で言う「傾聴」の難しいところは、本来、コーチやセラピストは自分の信念・価値観を保留しておかないといけないのに、知らず知らずのうちに程度の差こそあれ、信念・価値観を反映したフィルターを通してクライアントの話を聴いてしまっていることですよねぇ。「~するべきだ」とか「~でなくてはならない」「そんなんじゃダメだ!」とか・・・・もちろんクライアントの言動に引っ張られてつい本音が出たということかもしれませんが・・・

それで、このような状態になるとコーチやセラピストの注意が向かない盲点みたいなものが生まれていて、それに気づきもしなければ、収集された情報の抜け漏れから状況に即した問題解決もままならないということになってしまいますよねぇ。

だから、セッション中にコーチやセラピストが自分の信念・価値観を反映した想いを持ちすぎるというのも考えものなのですよねぇ(笑)。

もっとも、これを防ぐためには、「傾聴」の方法論の中に、メタ視点に出て、コーチやセラピストの認知バイアスがかからないようにするか?あるいはそれを補正できるような方法が入っていないとそもそも話にならないのですよねぇ。だって、コーチやセラピストにしたって人の子なわけですし、いい意味でも悪い意味でも何がしかの信念・価値観は持っているわけですからねぇ。

独り言


今日は、「短期・戦略療法の傾聴の原則」について書いておきましょう。

 傾聴のプロセスとは?

心理療法でもコーチングのコンテクストでも構わないのですが、流派を問わず、クライアントの話を聴いて彼らの状況や世界観を深く理解するということは非常に重要なことであることに異論はないでしょう。

こういったプロセスのことを一般的には「傾聴」と言っていますが、実はきちんと傾聴するということ自体けっこう難しいところがあります。

 それで、個人的に考えるに、いくつかの課題があるように思います。

l       一つは、色々な流派があって標準化されたプロセスがないこと。(もちろん色々なアプローチが存在するのは多様性の点では良いことだと思いますが・・・)
l       もう一つは、コーチングや心理療法のコンテクストは、コーチやセラピストそしてクライアントと状況が相互するような形式になっており、いつもサイバネティックス的で複雑な相互作用を考える必要があること。例えば、コーチやセラピストの信念・価値観が悪い意味でクライアントとのやり取りに反映されていないかと考える必要があること、あるいはこの影響を小さくする工夫が必要なこと。

 それで、ここでは上の課題を解決するべく、短期・戦略療法系、つまりブリーフ・セラピーの「傾聴」のプロセスについて書いておきましょう。

 まず、結論から言ってしまうと、一つは以下の原則があります。


原則1:クライアントに事実と思考(推論)の区别をつけてもらう。そのためにコーチやセラピストはクライアントの言葉からこの違いを意識して聴く。


 もちろん、この前提としてクライアントとラポールをつくるとかの基本的なことは既に出来ているとして、考えてみましょう。

それで、短期・戦略療法、つまりブリーフ・セラピーの原則に一般意味論のコージブスキーの言葉を引用した「地図と領土(現地)」の区别をつけるということがありました。


これをコーチングや心理療法のコンテクストで言うと、クライアントさんの心のなかで、何が領土(事実)で何が地図(考え方や推論、それから生じた意味など)なのか?の区别をつけてもらう、あるいは気づいてもらう支援を行うのが、コーチやセラピストの重要な仕事の一つということになるでしょう。もちろんここで扱っているのはクライアントの主観的経験となりますので、定量的に表現することの難しい曖昧さというのを含んでいるのしょうが。

それで、ここでクライアントに確認するのは、言葉での思考が、事実を反映しているのか? そこに齟齬がないかどうか? あるいは思考の中の出来事と事実を混同していないかどうか?などです。

そう考えるとブリーフ・セラピーでの「傾聴」の重要なプロセスは、コーチやセラピストは、クライアントの言っていることの何が事実なのかを二値的に切れ目を入れて明確にする。そして、事実以外の部分として、何がクライアントの考え方や推論、それから生じた意味なのか、の違いに耳を傾け、表情なども観察しながら注意深く聴くことになります。また、そのプロセスで表情と言葉の不一致や、あるいは不明瞭な点があればクライアントに確認をすることが「傾聴」のプロセスであることが分かってきます。


さて、次の原則について考えてみましょう。


原則2:クライアントに事実と思考(推論)の背景にある信念・価値観、思考の枠組みについて気づいてもらう。そのためにコーチやセラピストはクライアントの言葉からこの違いを意識して聴く。



次のプロセスとして、事実を分離した残りの部分に焦点を当てることにしましょう。おそこらくこの部分は、一つは、(こだわりはあまりない)思考実験として推論、そしてもう一つは、クライアントの信念・価値観を反映した想いのこもった意見や意志のようなところに別れてくるでしょう。

コーチングや心理療法のコンテクストで、コーチやセラピストは、この2つを聞き分けることと、そして、クライアントの意見や意志の背景にある信念・価値観、あるいは思考の枠組みを聴きとる必要があります。

ここで注意することは、コーチやセラピストの持っている信念・価値観からするとクライアントが到底受け入れられないような信念・価値観を持っているような場合、あるいはコーチやセラピストから見て取るにたりないと思ってしまうような場合です。

この場合も、コーチやセラピストは風姿花伝で言われている「離見の見」のようなメタ視点を併用することでクライアントとの考え方の違いを理解しクライアントの世界観を達観して受け止めることが出来るでしょう。


それで、ここでコーチやセラピストは、信念・価値観、あるいは思考の枠組みを反映した意見や考え方に対してタイミング良く承認を与えることでラポールを深めることができるでしょう。但し、これをやり過ぎると共依存状態になる場合もあるために、逆に、事実を語っている部分に焦点当てて冷静になることでラポールの深さにブレーキをかけることができます。もちろん、事実を取り扱う場合、事務的になり過ぎてラポールを切らないようにしましょう。

また、ここで信念・価値観、思考の枠組みが現在の行動に問題を起こしているような場合、一旦、現在の信念・価値観、思考の枠組みを明示、承認した上で、リフレーミングやメタファー、場合によってはエリクソン催眠の暗示などを活用して、信念・価値観、思考の枠組みが変化するように介入(Intervention)を行なっていくことになります。


当たり前ですが、例えば、コーチやセラピストが、リフレーミングを行なって信念の枠組みに介入を行おうと思ったとしても、そもそも、リフレーミング対象となる枠組みが何なのか?は特定しておかないとリフレーミングが出来ないので話にならないという具合です。

また認識と行動の変化を行うために、リフレーミングを行う場合は、ベイトソンの言う論理階型の高いメタ・レベルにある枠組みを扱う必要がありますので、単なる言葉尻を捕まえただけのリフレーミングは効果が低く、以下のリンクで書いた3クラウド法のような要領でメタ・レベルにある信念・価値観の枠組みを探し、そして枠組みからとび出す、もしくはこの枠組をデフレームするリフレーミングを行う必要があります。


それで、具体的に、短期・戦略療法的な「傾聴」を行うにはどうしたら良いか?
以下のリンクの話に戻ってきます。


 個人的には、やり方させ間違わなければデビルマン顔負けの「地獄耳」を身に付けるのはそう難しくないことだと思います。 それで、結局はミルトン・エリクソンではないですが、相手の信念・価値観が分かったとして、クライアントが望む結果を得るために、その信念・価値観を形成している枠組み自体にどのように働きかけていくのか?がより重要だということになると思います。

 また、ブリーフ・セラピーの傾聴は、ロジャーズ派の傾聴と違ってクライアントとのやりとりを重視するため、一般的な質問のやり取りを行う場合も、エリクソンのような催眠言語やメタファーでのやり取りを行う場合も、コーチやセラピストがおしゃべりしながら「仕掛けていく傾聴」という感じのスタイルになってくると思います。

  余談ですが、知り合いに頼まれてために「傾聴、質問」のトレーニングなんかやったりすることがあるわけですが、ブリーフ・セラピーの傾聴って実はビジネス系と非常に相性が良いですよねぇ。 相手が戦コン・レベルでも問題なく対応可能って感じですからねぇ。

(つづく)

 文献
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