2012年8月12日日曜日

組織の問題解決のためのリフレーミング(その14)

         

問題の起こっているコンテクストと認識を含めたパターン、つまり外的世界と内的世界の間にあるより大きなループを見ることなくこの問題に対処してしまうと単なる局所最適な課題解決、つまり「もぐらたたき」を行なっているだけということになるでしょう。

逆に言うとコーチはクライアントの信念・価値観、ルールなどに起因するこのパターンを出来るだけ早く見抜き、直接的、間接的なアプローチの違いはあれ、このパターンに気づいて根本的なところから対処してもらうように支援する必要があるでしょう。

余談ですが、クライアントにこういったパターンを指摘すると何か魔法を使ったように思われることがありますが、これって単に認知科学や認知心理学の技法を使っているだけですねぇ。(笑)ある意味、よく当たる占い師みたいな感じで見られているのかもしれませんけれど・・・

独り言


今日は、「組織の問題解決のためのリフレーミング(その14)」について書いておきましょう。

個々の課題の背景にあるより大きなパターンを見る

さて、ここからが核心部分ということになってきますが、昨日の続きから書いておくことにしましょう。

昨日は、山田執行役員からの情報で松本コーチは以下のような山田執行役員の視点からの課題を認識したわけですが、この背景にある情報をどのように読むのか?というところから始めましょう。もちろんこれはコーチからすると二次情報だという制約は頭においておく必要があると思います。


また、ここでは便宜上仕事の場面を設定していますが、もちろんこのプロセスは日常生活の課題、人間関係、色々な課題について適用可能です。

番号
課題(現象)
1
顧客会議と社内会議の日程が重複することが多い
2
自社の情報が顧客へタイムリーに届いていないことがある
3
顧客サポートがワークフロー通りに実施されていないことがある
4
他支社の営業支援の出張中に、自支社の緊急対応を求められることがあり、途中で出張から帰社するケースが多々ある
5
提案が顧客との間で価格の叩き合いになることがある
6
部下への権限移譲が行われていないため自分の労働負荷が高い、日程重複多い
7
投資を抑制している顧客が増えている
8
部下と目標設定の打合せが十分できているとは言い難い
9
競争力のあるソリューションの構築を行う必要がある
10
本社への出張頻度が増加、同時にレポーティング作成時間が激増した。

l       個々の課題に対しての「もぐらたたき」はしない

一般的にこういった課題表を見せられると、緊急度、重要度、場合によっては担当者を決めて課題解決に当たるという方法が取られることになるでしょう。例えば課題1の「顧客会議と社内会議の日程が重複することが多い」に対して、ではよりスケジュール調整を緻密に行うことでこれを回避しようという方向の安易な解決策を実施してしまうような場合です。

 これは、その課題がどのような関係性のパターンの中で起こっているのか?を考えることなく、問題を小さな単位に還元して「分ける=分かる」のロジックの元、その中で小さな解決を目指すという方法です。

もちろん、こういうやり方をすると、作業する必要のある一定量の仕事はつくることができますから、何か仕事をした気にはなれますが、問題の核心をつく解決策が実行出来ているのか?と考えると、残念ながらいつまで経っても問題の核心部分に迫ることは無いでしょう。

  もう少し建設的な言い方をすると、人は知らない間に局所最適、あるいは部分最適を志向したスタイルで仕事を進めてしまうため、こういったスタイルを一刻も早く止めて、背景にあるもう少し大きな関係性のループを見ることで全体最適を志向した仕事のスタイルを目指しましょうということがここでのメッセージでもあるわけです。

 例えば、氷山にぶつかりそうなタイタニック号が取る策は一刻も早く進路を変更して氷山を回避するということですが、いくら自分の担当だからといって一生懸命甲板磨きをしていても大局的な観点からは何も意味が無いということでもあるわけです。

 それで、一般的に、問題や課題だと認識されていることは、これを認識している人の中に何か信念・価値観、あるいはルールや価値の基準というものがあって、これを持った身体も気持もある視点からこの課題を見ているわけです。それで、やはり外的な物理的世界で起こっていること、そして内的な認識の世界で起こっていることの循環を考えておかないと問題の核心部分を捉えた問題解決は出来ないというのがここでの主張でもあります。


l       課題表の個々の課題の背景にあるより大きなパターンを見る

さて、ここからは具体的な問題解決に移っていきます。 個々の問題に対処することは全体最適の視点から言って好ましくありません。それでまず、行うことはこの課題表から3つの課題を抜き出して、それがどのようなパターンで起こっているのか?を対立解消図で表すことにします。ここでは全体10個の課題から任意に抽出された3個の課題のどれを取っても大体同じような結論になるのがこの手法の不思議なところです。また、課題の緊急度や重要度とは関係なくこれが成り立ちます。

l       3つのパターンそれぞれに共通するパターンを見つける

 任意に抽出された3つの課題それぞれについての対立解消図を書きましょう。そしてその3つの共通するパターンを抜き出して1つのメタ対立解消図を作成します。この作業をグレゴリー・ベイトソンの言葉を借りて説明するとすれば、3つそれぞれのバインド、あるいはダブル・バインドのパターンを1つに綜合して1つのメタ・バインド、あるいはメタ・ダブル・バインドのパターンをつくると言ってもよいでしょう。 


 一つ一つは具体的な課題に対する対立解消図ですが、この共通的を綜合したメタ・レベルの対立解消図を書くことで確実に視点の抽象度を上げることが出来るでしょう。これもベイトソン流のマインドの理論で説明すると、論理階型の上位にある抽象度が高く、下位の論理階型に影響度の高い信念・価値観、あるいはルールを非常に短い時間で見つけることが出来るということになります。


さて、ここでの例では、具体的に1.「顧客会議と社内会議の日程が重複することが多い」、4.「他支社の営業支援の出張中に、自支社の緊急対応を求められることがあり、途中で出張から帰社するケースが多々ある」、6.「部下への権限移譲が行われていないため自分の労働負荷が高い、日程重複多い」について考えてみましょう。具体的には項目それぞれに対する対立解消図を書いて、共通するパターンを綜合した、形式で一つのメタ対立解消図を作成します。

l       認識の奥底にあるメタ・パターンを考える

 メタ対立解消図をつくると以下のような構造になることが分かりました。




ここで松本コーチが山田執行役員の認識の奥底に、「何事も現場に出て情報を収集し現場で判断しなければならい」、あるいは「肝心なことは部下に任せるわけにはいかない、最終的には自分で情報を取って自分で決断しなければならない、自分で行動しなければならない」というパターンがあることを指摘します。

 つまり、この表にリストされているほとんどの問題、課題は、山田執行役員がこのような思考フレームで物事を見ているために起きているということになるわけです

これは、ある意味、これがご本人のコア・ビリーフつまり普段は意識していないのだけれども心の奥底にある信念・価値観の一つということになるわけです。

もちろん、こういった信念・価値観に善悪があるわけでは無いのですが、外的世界で起こっているコンテクストと内的世界の信念・価値観が相互作用を起こすことで卓越性を発揮する場合もあれば、これが問題を引き起こすことになっているわけです。

もちろん、ここで注意することは、これが山田執行役員本人の経験からくる信念・価値観に起因しているものなのか? 会社で規定されているルールや文化に即して行動していて本人の信念・価値観はあまり関係ないのか? あるいはその業界全体のしきたりに添っているのか?の区别は行う必要があるでしょう。

 もちろん最近は多くの会社でコンプライアンスなども強化されているためこれに抵触しない形式で良い施策を考える必要があることも良いでしょう。良いアイディアを思いついてもコンプライアンスに抵触しない実行策を考えるというのは案外骨の折れる作業になってくるようにも思います。この場合もコンプライアンスに抵触しない実行策を考える上でもここで述べているプロセスは役に立つと思います。もちろん、コンプライアンスは収益を上げるために邪魔をする場合も多いのですが、良いアイディアでこれを上手く乗り越えるような施策が実行できた場合、競合他社に対する参入障壁を強化するということにもなり、ある意味心強い味方になってくれるというような場合です。

 さて、話が脱線しましたが、話を元に戻しましょう。要は本人の信念・価値観になっていて変えることが難しいことなのか? 会社のルールを変更すれば本人は難なく適用可能なのか?を区别するのはその後どのよう解決策を考えるか?に影響を与えることになってきます。もちろん、これがご本人の信念・価値観だったとして将来の目標設定を考えた場合、この信念・価値観に抵触しない方向で考えることが一番容易です、もし、逆にこの信念・価値観に抵触する場合は、ビリーフ・チェンジを伴うコーチングやコンサルティングということになるためある意味難易度は格段に難しくなってきます。もちろん、心理療法家のミルトン・エリクソンの技法等を使えば何ら問題なく対処できることになります。もちろん、コーチやコンサルタントがこれを使うことが出来れば・・・という条件は付きますが。

 また、これに関しての余談ですがもし、これが本人の信念・価値観になっていている場合は、部署を異動しても転職しても、外的世界に同じような状況が起これば地球のどこに居ても同じような課題が発生することになってきます。

 つまり、山田執行役員のように何でも自分でやらないと気が済まないというパターンを持っている人が他の会社の上級管理職で転職をしてもビリーフ・チェンジを行なって考え方のスタイルを変え、行動のスタイルを変えない限りは、この認識はどこまでも本人についてまわりますから、いつも同じような課題が山積するという空恐ろしい結果になると思います。ある意味これがピーターの法則の背景にある認識論的な壁だとも考えられます。

 逆の言い方をすると、具体的にコーチングを進める場合、将来の目標設定、達成においてこの認識パターンとしての制約をどのように利用するのか?が成功の鍵となってくるでしょう。

 もちろん、卓越したコーチに当たればこのような信念・価値観は30分~1時間も対話をすれば見つかると思いますが、逆に言うと1時間以内にこのような信念・価値観を見つけるくらいでないと時間ばかりかかって課題やゴールの設定どころではないという話になってくるのだと思います。

 ちなみ、ここではTOCの3クラウド法[1]を活用した形式でまとめていますが、人の認識や行動を変化させる方法論である「Theory U」や「ミルトン・エリクソンのセラピューティック・ダブル・バインド」を使うにしても根底にある考え方は同じだと個人的には考えています。ちなみに個人的に3クラウド法を気に入っている理由は、コア・ビリーフに到達する時間がやたらに早いこと。下手をするときちんとした心理療法の手法より早いですし、もちろん変な自己啓発手法を比べるだけ無駄というような精度の確かさを持っています。もちろん、その後リフレーミングを使ってこの制約を広げる、絞る、ひねるという具合に具体的な案に落とすまでシステムマチックに出来るというところもポイントが高い点でしょう。

 
 余談ですが、個人的にはGTD (Getting Things Done )で収集された課題の背景にある、自分の信念・価値観やルールに起因するより大きなパターンに気づくためにも3クラウド法を取り入れていたります。

(つづく)

文献

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