2012年8月24日金曜日

リフレーミングの「再定義」について考える

         

一般的に言葉を置き換えるだけで、思考の枠組みや意味が変わっていなければリフレーミングにはならないよねぇ。

言葉を置き換えるにしても一度五感だけの経験に戻って、その経験について別の言葉をラベリングし直すようなプロセスを取らないとねぇ。(笑)

それで、昔、CMで友達以上恋人未満というコピーがあったけれど、認知言語学のカテゴリー化の理論で考えて、コトバだけ恋人と変えても、身体感覚を伴った腑に落ちる感じで恋人とならないと再定義されたことにはならないですよねぇ。(笑)

独り言


今日は、「リフレーミングの『再定義』について考える」について書いておきましょう。

リフレーミングで活用する「再定義」について考える

 今日は、 Sleight of Mouth[1]「再定義(Redefine)について考えることにしましょう。

  認識の枠組みを再構築する発展的なリフレーミングを14の基本パターンにまとめた「ストオブマウス(Sleight of Mouth)」と呼ばれる手法があります。 そして、この14パターンの中のパターンの一つとして「再定義(Redefine)があります。

Redefine: Use similar words to say the same thing, ensuring that the implication is changed.

  上の引用文から、「再定義」とは、認識主体の表象にある経験(あるいは想像)を記述したコトバを、類似した別のコトバに置き換えることです。 そして、「再定義」の目的は、認識主体の経験した、ある出来事を記述したコトバを別のコトバに変更することで、その文脈における、経験の「意味」を変えることです。もちろんここではコトバだけを変えたとしても、認識主体の経験の「意味」が変わらなければ意味がありません。

  ここで、「再定義」について考えるために、人工知能の研究に端を発するセマンティックWebにおけるオントロジーの概念を考慮して、その文脈において何らかの概念を表すあるコトバについて考えることにします。[2] あるコトバは、単独で存在するわけではなく、それを定義する別の複数のコトバ、フレーム、意味などの多層のネットワーク構造を持った関係性の中で存在していると考えられます。(図1)


1

人の認知にこのアナロジーを適用して、認識主体の表象に関連付けられているこのコトバを、別のコトバに置き換えると、もとのコトバが持っている認識主体に身体化された関係性のネットワーク構造自体が別の構造に置き換えられ、結果、認識主体の表象が別の意味に置き換えられると考えられます。

 セラピストやコーチが自分勝手にコトバを置き換えるのではなく、クライアントに考えてもらう形式で再定義のパターンに該当するリフレーミングを行う具体的な質問の例は、「その出来事を肯定的な別のコトバで表現するとどのようになりますか?」です。 

これが上手く機能するとその文脈における経験に対する「意味」が変更されることになります。この例では、「再定義」を使った基本的なリフレーミング・パターンとして、認識主体から見て、クライアントをエンパワーする肯定的なコトバに置換える例について示しています。 

もちろん、この反対のケースとして、家族療法における逆説的介入(Paradoxical Intervention)のように、家族システムにおけるそれぞれの認識主体の関係性がある閾値を超えて別の関係性で安定するように、より否定的に再定義を行うことも考えられます。[]この場合、認識や行動の変化を優先する形式になるためもしかすると情けない感じのコトバになる可能性もあるでしょう。

「定義」について考える

ここでは原点に立ち返り、「定義とは何か」について考えることにします。 Wikipedia の「定義」の項目を参照すると以下が記述されています。

定義とは何か、ということへの関心は、ソクラテスやアリストテレスといった古代ギリシャの哲学者たちの議論の中に既に見られる。しかしそこから2000年以上を経た現在においても、この議論は未だに継続しており、定義とは何なのか、という問題についてそれほどはっきりした結論は出ていない。

歴史的にこのテーマは主に哲学の領域で、20世紀以降であればとりわけ分析哲学や言語哲学と呼ばれるような領域、そしてまた数学の一分野である記号論理学と呼ばれる分野、を中心に議論が行われてきた。そして20世紀後半からは認知科学といった、より実証的性格の強い分野で、定義についての議論をされることが増えている。[4]

  ここで興味深いのは、21世紀の現在でも定義についての定義が決まっていないということです。そのため、ここでは主に、一般意味論、認知言語学、生成文法を考え方の枠組みとして用いて、定義についての定義を考えることにします。

一般意味論で「再定義」について考える

 Wikipediaの「一般意味論」によれば、外的世界の出来事を末梢神経から認識主体に取り込み、抽象化を伴った情報処理を行うモデルとして構造微分(Structural Differential)モデルが提唱されています。 (2)

一般意味論では抽象の段階に関する考え方を「構造微分 structural differential」と呼び、1)無限に変化する「世界」から、2)感覚器官によって把握された外界の似姿、3)「外界」として体験された事柄についての言語的記述、4)そうした言語的記述についての記述、というように当初の情報が段階的に縮退されていくことを指摘した。現在では認知心理学・認知科学的研究によりそうした縮退の様子が把握されているが、「元の世界についての認識」が、言語的に表現された「世界」についての認識へと縮退的にすり替えられていかざるという人間の認識能力の限界、そのことを明確に指摘した点に一般意味論の決定的な重要性がある。



2

「空は青い」といったような言明そのものが、複数者の間でその意味が異なるという認識上の不定性のゆえに、心理療法の場に限らず、その話者にとっての(そのときの)意味を把握することに努力しなければならないこと。その際に、そうした言明のどこまでが「事実性」に関わり、どこからが推測などの「思い」や「思い込み」であるかを分離すること。あるいは「彼は何々障害である」といったような言明が、「類と個別」に関わる錯覚に見舞われ、「何々障害であるから彼はしかじかである」といった後件肯定の誤りに陥らないようにすること等々。C.S.パースによる可謬主義(fallibilism)は、絶対的な真実や確実さはない以上、人は誤りを繰り返す中で漸進的に進んでいくとする立場であるが、一般意味論の構造微分の図式はそうしたパースの立場と結果的に重なり合うものと考えられる。

また構造微分の考え方から心理療法への決定的な示唆としては、「言葉で語ることのできない段階 unspeakable level」が存在するということである。「思考」「認識」という世界とは異なる言語未然の「体験の世界」の存在は、身体的で体験的な要素を含むヴィルヘルム・ライヒやアレクサンダー・ローウェンによる精神分析への身体的アプローチ、あるいはゲシュタルトセラピーや身体心理学・身体心理療法というアプローチの必然性の示す理論的根拠と考えることができる。[5]


  構造微分のモデルでは、外的な世界について、感覚器官によって把握された一次的な経験(感覚器によって把握された外界の似姿)が存在し、それを、「外界」として体験された言語的記述として、言語によって記述された経験が存在しているモデルとなります。この言語、記号、シンボルを使ってその後推論を繰り返します。 また、言語、記号、シンボルは、感覚器官によって把握された外界の似姿に、言語もしくは意味としてフィードバックが行われます。一般意味論では、前者を神経言語フィードバック(Neuro-Linguistic Feedback 後者を神経意味フィードバック(Neuro-Semantic Feedback)と呼んでおり、言語、記号、シンボル操作による推論が一次的な表象に影響を及ぼすモデルが示されています。[6]

認知言語学のカテゴリー化とプロトタイプ

 認知言語学では、一次的な表象の中から事象、事物を特定するプロセスを説明するために、カテゴリー化とプロトタイプについての理論が提供されています。[7]

 カテゴリー化の基本となる基本レベルカテゴリーとは、ある特徴を持ったカテゴリー、例えば、ネコといったカテゴリーを指し、この基本レベルカテゴリーの抽象度を上げた動物、もしくは抽象度を下げた三毛猫というような抽象度を上げ下げする場合の基本となる概念です。

 また、プロトタイプとは、例えばネコを差した場合に、これを他のカテゴリー、例えば犬と区別するような抽象度が同じで別のカテゴリーに所属するメンバーを区別する時に活用される概念です。 

 一般的に人は、カテゴリー化やプロトタイプのデータベースを自分自身に持っており、これが無意識に動作することでカテゴリー化やプロトタイピングを行うことが知られています。[8]

 ミルトン・エリクソンの心理療法の技法を認知言語学の概念を通して形式知化した例にスティーブ・アンドレアス著「Six Blind Elephants」がありますが、[9]

 具体的には、


2. Change of Categorization (at the same logical level):
Redefinition or Redescription And how else could you describe that. . . ?[10]

 ある事象を同じ論理レベルの異なるカテゴリーに分類することで認識の枠組みを変えるリフレーミングを行う方法。

3. Change of Logical Level of Categorization:
Going to a more general category (higher logical level) And that is an
example of. . . ?
Meta-frame (The prefix meta alone has been used ambiguously in the past to indicate
either scope or category, but meta-frame has usually indicated a shift to a more general
category, rather than a larger scope.) And that is an example of. . . ?
There are many possible meta-frames. Some of the more useful and well-known
ones that have been described previously are listed below:
Positive Intent And his/her positive intent is. . . ?
Model of the world And so the way you see it is. . . ?
Learning And what you learned from that is. . . ?
Curiosity And what was most interesting to you about that is. . . ?

論理レベルの抽象度を上げて認識のスコープもしくはカテゴリーを変更することでリフレーミングを行う方法。

Analogy/Metaphor And that is like what. . . ? (Metaphor creates a category, and often
also creates a prototype example for the category.)[10]

 
メタファーがカテゴリーをつくり、場合によりこのカテゴリーに対するプロトタイプの例がつくられることを利用してリフレーミングを行うことが示されています。

 (つづく)

文献
[6] Korzybski, Alfred (1958). Science and sanity: An introduction to non-Aristotelian systems and general semantics. Lakeville, Conn.: International Non-Aristotelian Library Pub. Corp.. p. xlvii.ISBN 0937298018.
[8] Lakoff, George(1987). Women, Fire, and Dangerous Things: What Categories Reveal About the Mind University of Chicago Press. ISBN 0-226-46804-6.
[9] Andreas S, (2006). Six Blind Elephants: Understanding Ourselves and Each Other, Vols 1 &2. Moab, UT: Real People Press.

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