2012年8月9日木曜日

組織の問題解決のためのリフレーミング(その11)

                                  

反対や抵抗がみられない案だからといってそれが優れた案だとは限らないなぁ。

むしろ、スポ根マンガでケンカした後に友だちになる展開じゃないけれど、色々な視点から一度はボコボコに叩いたほうがいい案になるなぁ。

もちろん、これって認識の話なんだろうから、パンチを繰り出すかわりにリフレーミングを繰り出すと・・・・・(笑)

独り言


今日は、「組織の問題解決のためのリフレーミング(その11)」について書いておきましょう。

リフレーミングの具体例

 さて、2記事ほど寄り道をしましたが、ここで簡単な事例を示して具体的にどのようにリフレーミングしながら課題や問題の解決策、あるいは落とし所を見つけるか?を考えてみましょう。

 まず、以下のような状況設定にしてみましょう。


シリコンバレーに本社のあるマイクロン・ネットワークス社(架空)の日本支社(従業員約100人)のある会議室でのお話。山田営業担当執行役員と田中マーケティング担当執行役員の2人が打合せを行なっています。

山田執行役員が「製品の価格を10%割引して欲しい」ということに対して田中執行役員が「諸処の事情で割引するのは難しい」という話になって話し合いが膠着している状況になっています。

そこでお互いの主張をもう少し整理してみることにしてみました。


 もちろん、一つの二項対立だけに焦点を当て、これだけを取り上げることは物事を局所最適の視点で見ることにつながる恐れもありますが、(この対処については後日説明するとして)とりあえずの練習という前提をおいてここから出発することにします。

l       リフレーミング7つのステップ

 さて、これを考えるにあたり以下のリンクで考え方のプロセスを示していますが、ここから始めましょう。


それで具体的なプロセスとして以下の7つのステップを示しましたがこれに沿って情報を整理してみましょう。もちろん、ここではソフトウェア工学者のトム・デマルコの構造化手法ではないのですが、リフレーミングするためにはそもそも認識主体がどのような世界観で物事を捉えているのか?少なくともモデル化する必要があるというわけです。もちろん、ここでは「構造化」と呼ぶと構造主義っぽく、個人的に外的世界と内的世界の循環を考える構成主義っぽくしたいのでパターンを考えることにしたいと思います。



l       対立解消図を書く

それで以下のリンクに示したように


対立解消図を書き、そして、要素と要素の間にある暗黙の仮定、前提について書きだした図が以下になります。 この図から見えてくるのは、短期的な目標を達成したいという営業側の考えと、中長期的にブランドイメージを維持したいマーケティング側の対立、つまり時系列的なスパンをどう捉えるのかの対立も見えてくる格好になっています。もちろん、リフレーミングの目的はこの鳥かごに囚われたような世界観から飛びだして新しい視点を得ることです。



l       3つのレベルで具体的な行動/決断レベルの解決策を考える

 もちろん、落とし所を考えると以下リンクでも書いた3つのレベル


1) Either A or B 2) Both A and B 3Neither A nor B の何れかのレベル考えることになります。

l       暗黙の仮定、前提について考える

対立解消図の暗黙の仮定、前提を明示し、リフレーミングを活用することで思考あるいはその枠組を広げ、絞って、ひねるという作業を行います。もちろん、この作業は参加者、相手の認識の相互作用で決まる話になってきます。

D1-E1: 山田営業担当執行役員は今期の残り3ヶ月の間の売上を達成しようと考えている。つまり、営業側は残り3ヶ月の短期の売上について考えている。 逆にマーケティング担当はより中長期的に製品のライフサイクルを考えた戦略を考えている。また、議論の対象は製品Xと製品Zの本体価格について考えている。またこの製品は日本国内の顧客を対象に販売される、日本企業の海外支点については現地の支社から提供されるので対象となっていない。

 このあたりは実際の施策として製品価格を割り引く代りに保守料金を値上げする。本社と交渉して海外の日本企業への売上については日本支社にも売上がチャージできる方式にするように本社と交渉する・・・などが考えられます。もちろん、ここでは個々のアイディア(コンテンツ)が重要なのではなく、要素 D1-E1の間にどのような暗黙の仮定、前提を置いているのかを明示し、場合によってはこの仮定、前提を変えてみるということ(プロセス)が重要になってきます。

D1-B1: 「価格を下げると売上は増える」ということが山田執行役員のメンタル・モデルの中に存在します。この場合、要素 D1-B1:の間にあるこの暗黙の仮定、前提の間についてのリフレーミングを考えてみましょう。

実際には以下のリンクで書いた Sleight of Mouth のパターンを使ってみましょう。


Sleight of Mouth パターン
リフレーミングのための質問
意図 (intention)
この信念価値観持っている肯定的意図は? ねらいは? 
例:価格を下げると購入するための敷居は下がる(はず)競合と比較した時に少なくとも価格の上では同じがそれ以下になる(はず)。
再定義(redefine)
この信念・価値観を表す言葉についてよりエンパワーされるような言葉に置き換えるとそれは何?
例: 顧客に伝える場合に「値下げ」という言葉を「バリュー・アップ」のような言葉に変えるなど・・・
結果(Consequence)
この信念・価値観を持つことで期待される結果は?
例:値段を下げると必ず売上は上がる。
チャンク・ダウン(Chunk Down)
この信念・価値観をエンパワーするサブ・カテゴリーを見つける
例:製品Xや製品Zというカテゴリー以外に、製品本体+保守、設置費用、システム・インテグレーション費用などのように分解して考えられないか?
チャンク・アップ(Chunk Up)
この信念・価値観をエンパワーするより大きなカテゴリーを見つける。
例:法律に抵触しない形式で、他の何かとセット販売することは可能か?
例外(Counter Example)
この信念・価値観に当てはまらない例外は?
例:価格の値引きをしても販売数が伸びなかったことはないか? 価格を下げなくても販売数が伸びたことがあるとするとそれはどのような時か?
アナロジー(Analogy)
この信念・価値観が持っている関係性をメタファーやアナロジーで表現すると?
例:牛丼単体は利益が出るか出ないかくらいの価格で販売されているらしぃけれど、どこで利益を出しているのだろうか?
自己適用(Apply to Self)
信念・価値観自体にこの信念・価値観を適用すると?
例:N/A
別の結果(Another Outcome)
この信念・価値観を持つことで期待される別の結果は?
例:価格を安くことで得られるそのほかの結果は? 良いと思われる結果は? 良くないと思われる結果は?
クライテリアの階層(Hierarchy of Criteria)
この信念・価値観より重要なことは何か?
例:顧客にとって競合他社の製品より安いということより重要なことは無いのか?
フレームサイズの変更(Change Frame Size)
時間軸を替えたら、定量的な基準を大きくしたら?小さくしたら、この信念・価値観はどのように変化する?
例:今期無理して需要を先食いしたとして来期の売上に影響を与えないのか?
メタ・フレーム (Meta Frame)
信念・価値観についての信念・価値観は何?
例:価格を下げれば売れるのが成立つために前提にしていることは?
世界観(Model of the World)
この信念・価値観が成り立たない世界があるとしたらそれはどんな世界?
例:もし、価格の高低がまったく問われない世界があるとしたらそれはどんな世界? もし、製品を無料で販売するとしたらどのような収益モデルが考えられるか?
リアリティ・ストラテジー(Reality Strategy)
その信念・価値観を知覚や身体感覚を伴ってどのように構築したのか?
例:価格を下げると売上があがるというのは具体的にはどのようなプロセスで起こるのか? 顧客はどのようなプロセスで価格が下がったことを知り、そしてその製品を購入するのか? この時本当に価格が高いことが購入の制約になっているのか?

C1-E1: 「安易な値下げはブランドイメージを損なう」についてリフレーミングを行なってみましょう。


Sleight of Mouth パターン
リフレーミングのための質問
意図 (intention)
この信念価値観持っている肯定的意図は? ねらいは? 
例:値下げをしないことでブランドイメージを維持したい。ブランドイメージ=販売価格の値崩れを防止。
再定義(redefine)
この信念・価値観を表す言葉についてよりエンパワーされるような言葉に置き換えるとそれは何?
例: 「価格が高い」を「価値に見合った」などに変えてみる
結果(Consequence)
この信念・価値観を持つことで期待される結果は?
例:販売価格、単価を維持できる。但し、大幅な売上増は期待できない可能性。
チャンク・ダウン(Chunk Down)
この信念・価値観をエンパワーするサブ・カテゴリーを見つける
例:具体的に値下げとは何を指すのか? ブランドイメージの維持とは具体的に何を指すのか?
チャンク・アップ(Chunk Up)
この信念・価値観をエンパワーするより大きなカテゴリーを見つける。
例: 価格を維持することは何につながるのか? ブランドイメージを維持することで何が得られるのか?
例外(Counter Example)
この信念・価値観に当てはまらない例外は?
例:価格を維持してもブランドイメージが損なわれることがあるとするとそれは何か? 価格を下げてもブランドイメージが損なわれないことがあるとするとそれはどのような場合か?
アナロジー(Analogy)
この信念・価値観が持っている関係性をメタファーやアナロジーで表現すると?
例:N/A
自己適用(Apply to Self)
信念・価値観自体にこの信念・価値観を適用すると?
例:N/A
別の結果(Another Outcome)
この信念・価値観を持つことで期待される別の結果は?
例:ブランドイメージを維持することで得られる別の価値があるとするとそれは何か?
クライテリアの階層(Hierarchy of Criteria)
この信念・価値観より重要なことは何か?
例:顧客にとってブランドイメージより重要な価値があるとするとそれは何か?
フレームサイズの変更(Change Frame Size)
時間軸を替えたら、定量的な基準を大きくしたら?小さくしたら、この信念・価値観はどのように変化する?
例:プロダクト・ライフサイクルを考えて価格維持はどこまで続ける予定か?
メタ・フレーム (Meta Frame)
信念・価値観についての信念・価値観は何?
例: N/A
世界観(Model of the World)
この信念・価値観が成り立たない世界があるとしたらそれはどんな世界?
例:価格を下げてもブランドイメージが損なわれない世界があるとしたらそれはどのような世界か?
リアリティ・ストラテジー(Reality Strategy)
その信念・価値観を知覚や身体感覚を伴ってどのように構築したのか?
例:値下げした場合、具体的にはどのようなプロセスで行われるのか? それは顧客にどのようなプロセスで認識されるのか? ブランドイメージを損なうことがあるとすると、それはどのようなプロセスで行われるのか?

ここでは省略しますが、同様に A1-B1A1-C1について考えます。

実際にダブル・バインドを伴う対立を解消する方向性については、以下のリンクで書いていますが、

http://ori-japan.blogspot.jp/2011/10/blog-post_09.html



1. Reduce the intensity or shift the nature of the double binding relationship.
2. Sort out the contradictory messages.
3.
 Make meta communicative statements.
4. Filter out or neutralize negative identity messages.
5. Find a way to
leave the filed.
6. Keep the situation from
 being a repeated experience.

要約しておくと、
  1. ダブル・バインドを起こしている関係性の本質をシフトさせるか、もしくはその強度を弱める。例えば、信念、価値観のレベルを家族療法のリフレーミングを用いて変化させる。ここでは、要素と要素の間の仮定、前提を扱っています。
  2. 反駁しているメッセージをソートする。 例えば、相手の視点に立ってみる。
  3. (ダブル・バインドを打ち消すためのより上位の論理階型にある) コミュニケーションにおけるメタ表現をつくる。 例えば、対立しているそれぞれの意図、目的を綜合するようなより高次の目的を持つ。
  4.  アイデンティティ(自己認識)に対する否定的なメッセージについてフィルターをかけて落とすか、中立化する。 例えば、その意見を自己同一化している自己認識の視座から抜け出す。
  5. ダブル・バインドを起こしている)場から逃げる方法を見つける。 一般意味論の「Etc.」やで言われているような例外的な逃避手段を見つけ、決断して逃げる。
  6. ダブル・バインドの)経験を繰り返すことを避ける。 例えば、自分が陥るダブル・バインドのパターンを理解してそこに立ち入らないようにする。



 基本的には対立解消図を眺めて、眺めて、感じ取るというような方向で解決策を見つけるような方向で進めると良いでしょう。

 このケースの場合は、話合いの結果、途中の詳細なロジックと収益シミュレーションは省略しましが・・・・両方の折衷案を取って

    新規顧客向けの製品価格、保守価格を抑えた期間限定の割引パッケージをつくって3ヶ月間のキャンペーンを行う
    既存顧客向けに製品を追加購入した顧客むけに向こう1年間の保守を割り引く期間限定のパッケージをつくって3ヶ月間販売する
・中長期的には海外の日本法人の売上の一部を営業活動に関係した案件についてはその一部を日本で計上できるように交渉する

ことに決定しました。これで課題が解決できたかどうか?は不明ですが、少なくとも当初の価格を下げる、下げないの話より随分建設的な方向に話が進んでいるように思えてきます。繰り返すようですが、リフレーミングを活用する場合、そもそもどのような枠組みに囚われているのか?を認識して課題設定を行う必要があるわけですが、これをきちんとやっておかないと対処するフレーム自体が見つからないということになってきます。

(つづく)

 文献
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