2012年12月6日木曜日

今日から使えるソリューション・フォーカス(番外編28)自尊心と自己効力感

                             

 コーチングなどで、「自尊心(self-esteem)を高めるのか?」あるいは、「自己効力感(self-efficacy)を高めるのか?」、コーチがクライアントに働きかけをしようとしている特に、どちらに働きかけようとしているのかを明示的に区別しておかないとセッションが台無しになるようにも思ってきます。

 まぁ、このテーマだけでも、へっぽこコーチのへっぽこコーチングなぜ機能しないのか?の論文を書けば博士号が取れそうですけれどねぇ、英語で書いてシドニー大学あたりに出しとけば(笑)。特に日本は、へっぽこのサンプルには困らないし・・・・・

 独り言


今日は、「今日から使えるソリューション・フォーカス(番外編28)自尊心と自己効力感」について書いておきましょう。

ゴール達成のために高めるのは自尊心か?自己効力感か?

 コーチングでよく「承認」という言葉が登場しますが、個人的な見解として、自尊心を高めるための承認なのか?あるいは自己効力感を高めるための承認なのか?ある程度区別をつけて慎重に対応しないとそのコーチング・セッションが台無しになってしまうようにも思ってきます。

 はじめに、オックスフォード英英辞典を引くと、日本語の自尊心を表す[Self-esteem]という名詞について以下のような意味が書かれています。

                       
confidence in ones own worth or abilities; self-respect:

自身の価値、もしくは能力についての自信、自尊心。


 こについての個人的な解釈として、自尊心とは、まだそのコンテクストで発揮されていない自分の存在感や価値、そして能力について自信があることと考えています。


根拠の無い自信やプライドを高めてはいけない

 根拠の無い自信を一言でいうと「何か偉くなった気がする」とか「根拠はないけれど何でもできそうな気がする」というようなことになるでしょう。

これに関連して、コーチングなどで単に「承認」ということを曲解するとどうしても、根拠のない形式で「あなたの存在は素晴らしい」と賞賛するようなことになって、クライアントが「根拠はないけれど何でもできそうな気がする」という気持を高めているように思えてきます。特に自己啓発セミナー系のコーチングではこういう傾向があるように思います。もちろん、これを頭ごなしに否定するわけではないのですが、単に自尊心だけを引き上げる方向だけだと、根拠のない自信やプライドばかりが高くなって、ゴールをどのように達成しようか?と考え、次に行う具体的な行動にはつながらない恐れがある、あるいはゴールまでの道筋を明確に描けない可能性が高い、ということになるため個人的には意味が無いと考えているわけです。

もちろん、自尊心に関して、家族療法家のバージニア・サティアの質問や、オントロジカル・コーチングのように本来の自分に成りゆく(Becoming)感覚を高めるとなれば良いのでしょうが・・・・これには少し工夫が必要なようにも思ってきます。



ゴールを意識して自己効力感を高める

それで、自尊心よりむしろ自己効力感を高めることがソリューション・フォーカスト・アプローチをベースにしたコーチングを成功させるための必要条件のように思えてきます。これに関して、スタンフォード大のアルバート・バンジューラの提唱した自己効力感の定義と自己効力感の高め方について以下のリンクで書きました。

http://ori-japan.blogspot.jp/2012/02/blog-post_07.html

 また、この中で自己効力感には、結果予期:ある行動がどのような結果を生み出すのかという予期。効力予期:ある結果を生み出すために必要な行動をどの程度うまく行うことが出来るのかという予期、の2つがありました。

 これを前提としてソリューション・フォーカスト・アプローチのゴール設定のガイドラインを少し読んでみましょう。


ここで、個人的に着目したのは以下の記述です。


ゴールは、詳細に具体的な行動として表す。


 これを具体的に補則しておくと、コーチがクライアントにミラクル・クエスチョンなどを活用してゴールを思い描いてもらう場合には、かならず、クライアントが体を動かして何かをやっているところを、身体感覚を伴って思い描いてもらう必要があると言っているに他なりません。

 つまり、ゴールに向かう行動の一部を実際に実行出来る、出来ているという確信が高まること(効力予期の向上)と、その行動を行うことでゴールの実現性が高まるという確信を強固なものにしていくこと(結果予期の向上)を通して自己効力感を高めていくこと自体がゴール設定のもっとも重要なポイントだとこの一文が語っていることになります。

「奇跡」の場面を奇跡と思わなくなるまで自己効力感を高める


もちろん、この過程で、うまくいっている例外でゴールの場面の詳細化を行い、スケーリング・クエスチョンで、自己効力感(セルフ・エフィカシー)の現状がどの程度か?これを高めていくには具体的に何をすれば良いのか?などを考えていくことになると思います。


 そう考えると、コーチングで相手の自尊心をくすぐるような「承認」も悪いわけではないのですが、その行動がどのような結果を引き起こすのか?という結果予期と、ある結果を引き起こすために、自分がその行動をどれだけ上手く出来るのか?という効力予期を含む自己効力感をどのようにクライアントから引き出し、それを高めていくのかがコーチの腕の見せ所ということになってくると思います。

 逆に言うと、根拠のない自尊心を高めるだけではゴールまでの行動を起こす、あるいはタスクを上手くこなしていくイメージをつくることについてまったく役に立たないことを行なっていることになります。

 また、ここで、個人的には、直接的コンプリメントが自尊心に働きかけ、間接的コンプリメントが自己効力感に働きかけると考えています。

http://ori-japan.blogspot.jp/2012/10/blog-post_29.html

 そうすると、コーチがクライアントに出すタスクにおいて、クライアントがアイディアを実行に移したところのイメージにコーチが間接的コンプリメントを送り、これを具体的な行動としてのタスクにつなげてもらうブリッジというところが垣間見えてくるようにも思ってきます。

   それで、ブリッジについて考えると、何と何をどの粒度で結びつけるのかは置いておくとして、認識行動に、つまり頭のイメージを、体を実際に動かして身体感覚を伴ったイメージとリンクするというところが重要になってくると思います。

http://ori-japan.blogspot.jp/2012/11/blog-post_9.html


 また、余談ですが、ここで思い出すのが心理療法家のミルトン・エリクソンのクライアントの「私はキリストです」と思って病院に措置入院させられている男のエピソードです。エリクソンはニコニコしながら「じゃぁ、大工仕事は得意だねぇ(キリストは大工の息子だから)」といって男に大工仕事を手伝うように示唆します。それで、男は何人かの人と共同で大工仕事を行なっている間に社会性を取り戻してだんだんまともになっていくというお話がありました・・・

 これを自己効力感を高めるための、間接的コンプリメントとタスクのブリッジの例と取ることも出来ますし、アンビギュアス・ファンクション・アサインメントなど、色々解釈が行えますので、これ自体が多面的に解釈できるメタファーのようにも思ってきます。

http://ori-japan.blogspot.jp/2012/06/blog-post_07.html

 もちろん、今日の結論は、自尊心を高めるのはほどほどにしておいて、本当に高める必要があるのは自己効力感ですねぇということになります。

(つづく)

 文献

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