2013年1月8日火曜日

式年遷宮と技術の伝承

                                  

IT技術などは一種のトレンドように語られていることがありますが、20年のライフサイクルで伝承していかなければならない中核となる技術や技法というのはきっとあるのだと思うし、人財育成という観点からはそういったものを伝承していかないといけないのだと強く信じて今年もこの仕事に邁進しようと決意を新たにしているわけです。
 
独り言


今日は、「式年遷宮と技術の伝承」について書いておきましょう。

式年-20年のサイクルで伝承されるもの・・・

 もう何年か前のことになりますが、伊勢神宮の式年遷宮祭に神具をご提供されている人間国宝の先生のお宅におじゃましてお話を伺う機会がありました。

 この先生曰く、やはり20年毎にこの大事業に関わる機会があるというのは技術の伝承からして非常によく出来た仕組み、なのだそうです。

 例えば、このプロジェクトは単純に建物を構築するという以外に、色々な神具を作り直す、あるいは伝統に乗っ取り色々な儀式を行うなど、有形無形の様々な儀式からなります。

 もちろん、式年遷宮祭を人材育成の観点から考えると、色々な分野の職人はおそらく15歳前後で始めてこのプロジェクトにプロジェクト・メンバーとして参加することになります。そして、そのプロジェクトで指示を受け一人のメンバーとして立派に物事をやり遂げられることが期待されることになります。

 そして、その職人さんは次の20年間、自分の技術を磨き続けるのと併せて、大事業においてリーダーとなるべく期待されることになります。そして、その職人さんが35歳前後になると完成された職人というだけはなく、リーダーシップを発揮できる現場のリーダーとして油の乗ったプロジェクト・リーダーとしてこの式年遷宮に参加することになります。

 昔の日本人の平均寿命が何歳なのかは推定するしかないわけですが、その職人が長生きすれば、おそらく55歳前後で生涯三度目の式年遷宮祭に参加することになると思います。この年代まで生き残った職人さんは、棟梁の棟梁といった結構スーパーなプロジェクト・マネージャの役割で式年遷宮祭に参加するということになると思います。

 このように見ていくと職人さんは生きている間にだいたい2回、長生きすれば3回式年遷宮に参加することになると思います。もちろん、式年遷宮祭に参加して思う存分自分の技術力や統率力を発揮するということ自体に人財育成の仕組みが組み込まれているように思ってきますし、式年遷宮祭を行うこと自体が技術の伝承になる凄い仕組みだということが分かってくるわけです。

 一方現代に目を転じると非常に怖いことも起こっています。例えば、非常に大きな橋、これにはブルックリン・ブリッジだとかゴールデンゲートブリッジだとかが入るでしょう。この橋をつくった当時の米国には多くの技術者が居て橋をつくることが出来ていました。しかし、現在、もうこの規模の橋をつくる技術者は米国にはおらず、世界でこの規模の橋をつくることが出来る技術者が居るのは日本だけだと言われています。その理由は非常に簡単で、米国で橋をつくる「式年遷宮祭」を止めたから。

 また、米国はスリーマイル島の原発事故以來原発をつくるのを止めたので原発をつくる技術者が居なくなったと言われています。それで原発をつくる技術者が居るのは日本だけ。もちろん、新規に原発をつくることについては異論反論があるでしょう。しかし、原発を廃炉するにも技術は必要でそのためにはやはり技術者が育成される仕組みは残しておく必要があると思います。だからあまり原発そのものを叩いて若い人がこの業界に入ってこなくなると廃炉すら出来なくなるような事態も考えられることになります。

 それで、個人的なテーマであるIT技術者の人財育成についてはどうなのか?ITというと表面上の技術の流ればかりが流行のように取り上げられるように思われている節もあるわけですが、例えば、アプリケーションのそもそものアーキテクチャをどう考えるか?とか、データモデリングをどうするのか?とか、プロジェクトをどんな形態で行うのか?とか考え始めるときりがないところに入ってきます。

 もちろん、式年遷宮祭の20年というキーワードで人財育成を考えると、IT技術者が学校を卒業して関わる仕事やプロジェクトにおいて 20歳前後で何をするのか?40歳前後で何をするのか?定年間際の60歳前後で何をするのか?ということを考えることになってきます。

 ここで、あえて、流行を追わないその根底にある20年という時の流れの中で積み重なって部分に本当の人財育成の根幹があるのではないか?それは何か?と考えるとかなり深いところが見えてくる式年遷宮祭の始まる年の始めだったというわけです。

(つづく)

 文献
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