2013年2月14日木曜日

エリクソニアンを目指す12の練習(その2)

                                  

 「(良い意味で)変化出来る」、そして「その変化に対処できる」とクライアントに示唆するのが有効なのは何も心理療法だけの専売特許だけではなくて、コンサルティングでもコーチングでも同じですねぇ。もっとも、これをあまり直接的に表現すると自己啓発セミナーか青春ドラマみたいになっちゃいますけれど(笑)。「我々は変化できる~」どっかの国の大統領みたいに。(爆)。

 で、変化について考えると、世の中は日々変わっているのにもかかわらず、自己認識が変わっていないというギャップが問題なのでしょうけれどねぇ。ベイトソンもそんなことを言っていたけれど。

まりくいても
 独り言


今日は、「エリクソニアンを目指す12の練習(その2)」について書いておきましょう。

変化とそれに対処出来ていることについてクライアントにフィードバックする

  エリクソニアン(ミルトン・H・エリクソンの流れを組む心理療法家の名称)を目指す練習として、ジェフリー・ザイク博士のエッセーを引用して以下の質問を書きましたが[1]、今日はこの続きを書いておきましょう。


2. For each client, indicate a specific answer to the following question: How do
you, the clinician, know the client can change or better cope?

セラピストは、ひとり一人のクライアントに対して、次の質問で出てきた答えの詳細を伝えてあげなさい。「臨床家である、あなたは、クライアントが変化できる、あるいは、上手く対処できる、ということをどのようにして知り得たのか?」


 この質問も一見シンプルですが非常に深い質問です。

  変化は必ず経年変化になります。つまり、変化は、時間の経過に対して知覚された対象の変化で表されるということになります。それで、変化とはベイトソンの言った「A difference that makes a difference.」の通り、クライアントが2つの時間で定点観測した情報の差異を、セラピストが変化として直接的/間接的に示唆することでクライアントに変化があった旨のフィードバックを返すのがここでのポイントとなります。余談ですが、少し込み入った話をすると、セラピストは、クライアントが五感で知覚できる事実についてのフィードバックとしてのメッセージ、それと、その事実を根拠にした、「それができる」という解釈や意味付けのメタ・メッセージの両方を返しているような格好になります。

 ちょっと難しいことを言っているようにも思えてきますが、例えば、長距離走のコーチと選手で喩えると、コーチはA地点の時刻とB地点の時刻を引き算して、(以前は3分10秒で走っていた)のが今回は3分5秒になった、つまり5秒速くなっているという変化を選手に伝えるのがフィードバックのイメージです。もちろんこの喩えは時計で客観的に図られたデジタルな値を使っていますけれども・・・・選手の感覚として「いい調子でリズムにのって走れた」「前回から良い方向に変化した感じがする」という感覚は存在するでしょう。

 で、一般的には普段は意識に上がっていない変化を意識してもらう方向ということになります。もちろん、エリクソンは間接的な表現を使うことでクライアントに意識させない形式で「変化した」というメッセージを返していることもあります。

 それで、心理療法やコーチングの場合、ここでの、定点観測は前回のセションと今回のセッションの差異から知覚できる変化ということもあるでしょうし、今回のセッションのこの10分の間の気持や心身状態の差異から知覚できる変化という場合もあると思います。

 セラピストはこの変化を直接的/間接的に指摘して、クライアントが知覚した事実としての変化に対して、さらにその上から「ほら、だらから変化できるんだよぉ」というメタ・メッセージを被せるような形式で、その変化を強化するようなコミュニュケーションを行うことになります。

 上の長距離走のコーチと選手の喩えで言えば、その区間で5秒速くなったという事実を伝えて、そして「よくやった」「おまえはやればできる人間だ」と労いや励ましの言葉をかけるのがメタ・メッセージのイメージです。もちろん、エリクソンの場合はこれを直接意識されないように独特の言語パターンを使って「変化できる」を間接的に行なっていることも多いです。

 余談ですが、アーネスト・ロッシ博士の論文「What is a Suggestion? The Neuroscience of Implicit Processing Heuristics in Therapeutic Hypnosis and Psychotherapy[2]を読むと、エリクソンは意識に働きかける場合は直接暗示(Direct suggestion)を用い、無意識に働きかける場合は間接暗示(Indirect suggestion)を用いるというモデルが示されているわけですが、ザイク博士の質問に戻ると、以下のリンクで書いたエリクソニアン・アプローチの特徴からすれば、


以下の表に書いたように直接暗示/間接暗示の両方の表現を考えておく必要があるように思ってきます。


直接暗示
間接暗示
変化した(事実)


変化できる(解釈)


対処できる(解釈)




直接暗示と間接暗示については以下のリンクで少し書いたのですが、「クライアントは変化を知覚した」「それはクライアントが変化できるという意味である」ということを伝えるためにはどのような表現にすれば良いのか?実際にクライアントの変化をじっくり観察し、クライアントの言葉に耳を傾け、そして考えてみると面白いのではないでしょうか?


余談だけれども、アンソニー・ロビンズとか単なるアメリカンな自己啓発コーチってエリクソンの半分しか学んでなくて全部直接暗示でやっちゃっているけれど、分かりやすい反面下品な感じになりやすいので注意が必要なのですよねぇ。(笑)

(つづく)

 文献
[1]http://scholar.lib.vt.edu/theses/available/etd-07282003-160500/unrestricted/thesis7.28.03.pdf
[2]http://www.ernestrossi.com/ernestrossi/keypapers/NN%20WHAT%20IS%20A%20SUGGESTION%202007.pdf

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