2013年2月21日木曜日

エリクソニアンを目指す12の練習(その8)

                                  

 武蔵は、奈良の宝蔵院を訪れた。そこでは国中から腕に覚えのある武芸者が集まり試合に挑んでいた。武蔵の相手は槍の名手阿厳。試合が始まると、武蔵の木刀は一撃で阿厳の額を割った。阿巌、即死。

試合後、宝蔵院の住職である日観に別室へ招かれ茶粥をふるまわれた。日観は言った。「お主は強すぎる・・・・・・・・・もっと、弱くならねば・・・・・」これは日観の武蔵への諭しであった。ただ強いことが良いことだと思っていた武蔵にはこの日観の言葉は衝撃だった。
 
・・・・・・・

 強みは弱み、弱みは強み、システム論的に色々な要素の相互作用で決まるし、短期的か長期的かでも違ってくる。「易経(The Book of Change)」の中にも、陽極まれば陰に転ずというのがありましたねぇ。もちろん逆もまた真なり。(笑)

 独り言


自分の強みを封印して、弱くなってみる

今日は、エリクソニアンを目指す練習として、ジェフリー・ザイク博士のエッセーを引用して7つの課題を書きましたが[1]、この8つめを書いておきましょう。


8. Take away your primary strength for a month. Dont use the method that you most overuse. For example, if you are Ericksonian, dont tell stories. Ifyou are analytic, do not make interpretations. See what you develop in its place.

 (臨床家として)1ヶ月間あなたの一番の強みを封印しなさい。使いすぎる手法を使ってはいけません。例えば、もしあなたがエリクソニアンならば物語を語ってはいけません。もし、あなたが精神分析家ならば解釈をしてはいけません。そのような縛りがかった中であなたがどんな能力を開発するのか(メタ認知して)観察してみなさい。


 心理療法家のミルトン・エリクソンのスタイルは、自身の学習障害、色盲、聴覚障害、発話の曖昧さ、そして2度の小児麻痺・・・とある意味、普通の人が普通に出来ることを封印された結果、「艱難汝を玉にす」から生み出されたスタイルということが言えるでしょう。
 
 それで、ザイク博士の課題は、フォークボールが決め球で三振を取るピッチャーに、1ヶ月間、フォークボールを投げずに三振を取る工夫をしてみろ、みたいな課題になっています。個人的に思うにエリクソニアンとは自分の強みだと思われるものが何らかの理由で使えなくなった時、新しい枠組のもとでの次善策を求め続けていく営みそのものなのだろうなと思っています。もちろん、これは弱みを人並みにするというアプローチとは違っているでしょう。

 それで、エリクソニアンではなくても弱くなる練習というのはどこでも出来るものです。


・ 子供やお年寄りになったつもりで街の中を歩いてみる
    交通弱者の立場から街の中を見てみる
    口下手だったらどんな営業や接客スタイルになるかやってみる
    能力が足りない人でも、その仕事が出来るようになる方法を考えてみる
    言葉の通じない外国に旅行してみる
    一番、臆病で決断の遅い人をリーダーにしたらどうなるか考えてみる
    普段ロジカルな人が直観的に対応したらどうなるかやってみる
    学位とか資格がなくても合法的に上手くやっていく方法を考えてみる
    ベイトソンの著作「Naven」ならぬ、家族や恋人と1日男女の役割を逆転してみる
    会社のイベントで平社員と社長の役割を逆転した寸劇をやってみる
    

もちろん、これはある意味エリクソニアンのユーティライゼーションでもあるように思うわけですが、そこで敢えて自己認識している強みを封印して、それにどう対応するのか?やってみるとそれはそれで、新しい行動、新しい能力、新しい考え方の枠組、新しい自己、新し関係性が発見できて面白いように思ってきます。それにしても、ジェフリー・ザイク博士の言っていることは含蓄があって深いねぇ。

http://ori-japan.blogspot.jp/2013/02/blog-post_16.html

 余談ですが、昔新宿西口の某家電量販店でお買い物中に合ったことのある Jazz ピアニストのデビッド・マシューズ氏って右手が不自由なのだけれど、キラキラしたフレーズを弾いて表に出てくるというスタイルではないのだけれど、何かしらの名演の影にこの人あり的なプレイをしますよねぇ。まさに制限が創造の源泉になっているエリクソニアン的な感じがしますねぇ。


(つづく)

文献
[1]http://scholar.lib.vt.edu/theses/available/etd-07282003-160500/unrestricted/thesis7.28.03.pdf

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