2013年2月8日金曜日

カオスの縁を歩く

                               

 一般的なプロジェクト・マネジメントは基本的にプロジェクトが直面する未来の不確実性を低減するためにできるだけ詳細なきめを入れて、プロジェクトの主体の自由度をどんどん小さくするような方向になるわけです。

 もちろん、サイバネティックスの最小多様度の法則からすると「外的変化の多様度に対応するためには、システムの内部に外的変化以上の多様度を持たなければならない」ということになり、ある意味、主体の内部の自由度を縛れば縛るほど不確実性でもある外的変化に上手く対応できないというパラドクスに陥ることになってきます。

それで、敢えてプロジェクトの主体がカオスの縁を歩いて、自分自身が不確実性の中心になって自由度を増していったらどういったマネジメントになるのだろうかなぁ~とか訳の分からないことを考えてみたわけで(笑)。まぁ、この場合、無知の知とか無用の用とか心理療法家ミルトン・エリクソンの Not Knowingのようなマネジメントになってくるのだろうなぁと。

もちろん、ちょっと方向がずれると創造のためにはコンプライアンスクソ食らえ、みたいなことになるのかもしれませんが・・・・(爆)。

 独り言


今日は、「カオスの縁を歩く」について書いておきましょう。

場を創発させる

 知る人ぞ知る平鍋健児氏と野中郁次郎先生共著の「アジャイル開発とスクラム 顧客・技術・経営をつなぐ協調的ソフトウェア開発マネジメント」[1]を読んでみました。



本書は、アジャイル開発といっても、詳細なプロセスや具体的なコーディングのやり方などについて書かれている本ではありません。それで、何が書いてあるのか?というと、アジャイル、特にスクラムのもっと根底にある哲学のようなところについて書かれているということになります。それで、個人的に知りたいテーマのヒントなるようなことが至る所に示唆されていてかなり良い本だなと思った一冊です。

 それで、スクラムという手法は、元々野中郁次郎、竹内弘高両先生がHBRに寄稿した「The New New Product Development Game(1986)[2]をスクラムの開発者であるジェフ・サザーランド博士が読んだ所から始まっているようです。[3]

 この論文は90年代の終わりに、ナレッジ・マネジメントのシステムの仕事をやっていた関係で読んだ記憶があるのですが、その時は、複雑系とか、サイバネティックスとかの知識が不足していたのとベイトソンも構成主義もオートポイエーシスも良く理解できていなかったところもあるので、今と比べると相当理解度が相当低かったように思います。

 それで個人的は創発的なものをつくりだす(ポジティブ・フィードバックで回す)プロセスの構築というようなところを一つのテーマとしているわけでもあるわけですが、例えば、プロジェクトとして通常のPMBOKをベースとするプロジェクト・マネジメントのような手法を取り入れると、ベース・ラインを設けてそこから外れないようにネガティブ・フィードバックでコントロールを入れるというような方向になっていて、創発的な変化は起こりにくく個人的にはどうしたものか?と考えていたところでもあるわけです。


それで、上の論文を読んでみると、創造的なものづくりのプロセスの6つの条件が上げられています。


1.     Built-in instability
2.     Self-organizing project teams
3.     Overlapping Development phases
4.     Multilearning
5.     Subtle Control
6.     Organizational Transfer Learning


それで、これらを考えると、

1.     で敢えて、「不安定さを組み込み」カオスの縁を歩かせるように示唆し
2.     では、自己組織化するプロジェクトチームを志向し
3.     プロセスをぶつ切りにしないで敢えてオーバラップするところを残し
4.     多次元で学び
5.     コントロールや制御は最小限にとどめ
6.     組織間で共有されるような学びにする

というように、プロセスをぶつ切りにしたり、組織のロール&レスポンシビリティを固定したり、ということを行わず、敢えて反対方向に、プロセス、もしくは組織の分別を取り払って敢えて複雑系な状態にしているようにも思ってきます。


もちろん、私が従事している一般的なプロジェクトの場合、「不確定性や複雑化と戦うために」複雑さを出来るだけ低減し、プロセスを明示し、フェーズとしてキメを入れ、できるだけスコープを小さく、厳密に管理しようと考えるわけです。

 但し、スクラムの場合は、発想がまったく逆で、あえて、プロセスやチームである人と人との関係性を敢えて不安定な状態に保つことで、以下のリンクのサイバネティックスの最小多様度の法則でも書いたように「システムが変化し続ける環境に適応するためには、環境が持つ多様度以上にシステムは多様度を持つ必要がある。」をねらっているようにも思えてきます。


 それで、こういった状態になれば、マネジメントしなくてもチームも自己組織化が起こり、創造の「場」が創発するような方向になってくると思うわけですが・・・・中々深い話になってきます。この論文に影響を受けている Theory U にはある「場」は PMBOKにはないので、この差分が何らかのヒントなのでしょうけれども・・・・・それで、普通に見るとスクラムのようなやり方とPMBOKのような近代プロジェクト・マネジメントは、前者がポジティブ・フィードバックによる制御、後者がネガティブ・フィードバックによる制御であり二項対立になるわけですが、この二項対立を超えるたところに何らか創造的ものづくりの鍵があるのだろうな、と考えるところでもあったわけです。

(参考)

(つづく)

 文献
[3] http://www.infoq.com/jp/news/2010/12/innovationsprint_2011


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