2013年5月26日日曜日

ダブル・バインドにはご用心(その3)

                              

 コーチングや心理療法のコンテクストで、トランスとか催眠とか言うから怪しくなるわけです。で、トランス(のひとつの)状態を、良い意味で集中していたり、スポーツなどでパフォーマンスが発揮されていたりする「フロー状態」と表現すると、わかりやすいし怪しくないのですよねぇ。(笑)

ちなみに、この「フロー状態」にどのように入れば良いのか?

この一つの方法が Simple ダブル・バインドを使うということなのですよねぇ。もちろん、普通にお話ししながらやるのですけれどねぇ。
  
独り言


自由な選択は本当に自由なのか?

こういったタイトルをつけるとベンジャミン・リベットの著作「マインド・タイム」に書かれていたような自由意志[1]の話を思い出します。つまり、意識が働く前に既に無意識が既に動いていて、その後、その結果が意識されるという例のアレですが、ここではこのレベルまでは踏み込みません。

逆に言うと、ここでの自由な選択とは、一次レベルで行われる選択や行動が、二次レベル(あるいは、メタ・レベル)の枠組に対して齟齬をきたしていないという意味で自由な選択ということを前提としています。例えば、メタ・レベルでは「どこかに旅行に行く」ということは決めているけれども、一次レベルで具体的に「ハワイか?」「グアムか?」あるいは「他の所」なのか?それはまだ決めていないといった構図で語られるような場合です。それで、具体的にはこのメタ・レベルは保持しつつ、一次レベルでいくつかの選択肢を示すような技法がこれにあたります。逆にいうと営業のような場面で、お客がメタ・レベルで「今は何も買わない」がある場合は、「暖色系がいいですか?」「寒色系がいいですか?」というような質問は機能しないというわけです。それで、このあたりの詳細は後述します。

で、心理療法家のミルトン・エリクソンの活用したダブル・バインドの詳細については、The American Journal Clinical Hypnosis に掲載された Varieties of Double Bind (Erickson & Rossi ,1975)そのものか、それを引用した論文を読んでいただくとして、今日は、Simple Bind あるいは、「比較された選択肢の中からの自由な選択」について少し書いておきましょう。

ダブル・バインドを考えるには、TOC(Theory of Constraints )の対立解消図のようなものを思考の補助線として、物理レベルで起こる決断を一次レベル、思考といった論理のレベルにある意図や認識された必要条件を意図のように考えるとわかりやすいと思います。




さて、Complete Works を少し読んでみましょう。[1]


In hypnosis we may consider that it is the trance situation itself which is the metalevel determining that some choice will be accepted among the comparable alternatives presented on the primary level by the hypnotherapist. In the following examples free choice is offered on the primary level of the when or how of trance, but it is determined on a metalevel that trance will be experienced

催眠において、ヒプノセラピストによって一次レベルとして示される比較された代案の中から、(クライントが)いくつかの選択肢を受け入れることそれ自体がトランスの状況そのものであるということを検討したい。以下の例では、「何時?」「どのように?」のような一次レベルで自由な選択肢が提供されている、しかし、この選択はメタ・レベルで決定されており、トランス状態を経験することにつながる。


で、この話の後には、

·        「今直ぐにトランスに入りたいですか?それとも後でトランスに入りたいですか?」
·        「深いトランスに入りたいですか?それとも浅いトランスに入りたいですか?それとも中位のトランスに入りたいですか?」

というような一次レベルに注意を向けるパターンが示されていることになります。もちろん、ここで重要なのは、クライアントは自分で納得してエリクソンの所にやってくるわけであり、メタ・レベルでは、最初からトランスに入るのに抵抗がない、あるいは少ないという状態でやってくることになるわけです。ですから、このパターンを営業に応用しているような人がいたりしますが、顧客のメタ・レベルの中で「今は買う気がない」というような場合、いくら一次レベルで「赤にしますか?青にしますか?」と聞いてもまったく逆効果ということになってきます。(笑)

 さて、心理療法ではないコーチングの場面を考えてみましょう。一例を示しましょう。この前提としては、「どこか旅行には行く」という既に行われているメタ・レベルの決断があり、その下位にある一次レベルで多少抽象度を変えながら、Simple Bind の質問を行うような場合を想定してみましょう。

·        「海にしますか?」「山にしますか?」それとも「都会ですか?」
·        答え:「海にしたいです」
·        「温かいとこですか?」「寒いところですか?」「それ以外ですか?」
·        答え:「温かいところが良いです」
·        「ハワイ?」「グアム?」「他に?」
·        答え:「ハワイが良いですねぇ?」
·        「オアフ島」「ハワイ島」「それ以外?」
·        答え:「オアフ島」
·        「何をしたいです」「サーフィン?」「ゴルフ?」「観光?」「それ以外?」
·        ・・・・・・・

というようなこの場合は質問の抽象度を具体的にしながら Simple Bind で質問をしているような場合です。

逆の言い方をすると、このパターンは「フロー状態」を引き出すのが主であるため、メタ・レベルにある枠組をひっくり返す場合は別のパターンが必要だということになると思います。

(つづく)

文献
[2]http://www.amazon.co.jp/dp/0971619034/



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