2013年5月30日木曜日

ダブル・バインドにはご用心(その7)

                              

心理療法家のミルトン・エリクソンが用いた治癒的ダブル・バインドの言語パターンを聴くと、

あえて目先にある瑣末な二項対立に注意を向けさせておきながら、同時に、意識していない、もっと大きなパターンである意図や目的に暗に気づくように働きかけているように思えてくるわけですねぇ~。

ここで、目先としての認識が一次レベルの認識、もっと大きなパターンの認識がメタ・レベルの認識ということになるのだと思います。

http://ori-japan.blogspot.jp/2011/11/blog-post_10.html

それで、このパターンはアメリカンなコーチの「それが得られることで更に何が得られますか?」のような質問と理屈は同じなのですが、エリクソンはチカラワザで意図や目的を引き出していなのが格好の良いところなのだと思います。(笑)

もちろん、仕事の場面で、あえて瑣末な二項対立に注意を向けてもらうようなことをやって、もっと大きな意図や目的に気づいてもらうといったことを個人的にはよくやっていますけれどねぇ。「そもそも、ここでの目的ってなんでしたっけ?」って言うと上から目線になって都合が悪い場合もありますからねぇ。(笑)  
独り言


結論のないダブル・バインド

ネットを検索する「ダブル・バインド」が悪の道具みたいに言われているところがあります。

たしかに、「ダブル・バインド」というのは使い方を間違えると、相手の認識を必要以上に混乱させたり、誤った解決策を導いたり、好ましく無い方向で用いることもできるわけです。しかし、反対に、相手の認識を既存の枠組みから出して、新しい次元での解決策を見つけるということを支援するといった好ましい方向で用いることもできるわけです。

もちろん、「ダブル・バインド」はパラドクス介入になることが多いため、例えば、混乱したからといって解決策から遠ざかっているわけではない、(一度混乱したほうが良い解決策が出たり、良い変化につながることがある)あるいは、好ましくない方向に向かっているからといってゴールに到達できないわけではない(一度、ゴールとは真逆の方向に走ってみたほうが、ゴールが明確になったり、望むゴールに早く近づけることがある)というようなことがあるために、「ダブル・バインド」の技法や効果を局所的な視点で簡単に評価できないところが難しいところでもあると思います。

それで、心理療法家のミルトン・エリクソンが活用したダブル・バインドの言語パターンの中から結論のないダブル・バインド(Non-Sequitur Bindsについて少し書いておきましょう。

このダブル・バインドについては以下で少し書いていますが、

以下のパターンを少しみてみましょう[1]


Begin Orientation: Lets begin now or use the time constructively.

開始のオリエンテーション:「さあ、はじめしょう・・・そうでなければ、時間を建設的に使いましょう。」


通常のロジカル・シンキングについて考えてみましょう。例えば、Aにするか?それともBにするか?のような Either or の選択を行う場合は、クライテリアを合わせるのが普通です。上の例であれば、「今始めますか?」or「今は止めておきますか?」 あるいは、「今始めますか?」or「後で始めますか?」といった具合です。


しかし、上は、Either orのパターンを踏襲しているような格好になっていますが、冷静に考えると比較できないものについての選択を問うような格好になっています。つまり、「今始める」と「時間を建設的に使う」というのはそもそも同じクライテリアではないという具合です。そのため、ここでは、このような構図になっているダブル・バインドのことを結論のないダブル・バインド(Non-Sequitur Binds)と呼んでいるわけです。おそらく英語のネイティブ・スピーカーが聴くと少し妙な感じに聴こえるでしょう。

 余談ですが、日本でも「仕事が大事なの?」それとも「わたしが大事なの?」というようなパターンがあるわけですが、ある意味同じクライテリアで比較できないものを比較して選択を迫っている点では、結論のないダブル・バインドだというわけです。もちろん、こういった課題は単純に理屈では解決できないことも多いため、背景にあるメタ・メッセージを慎重に読んでいく必要があるわけです。

それで、上のパターンを更に見ると、Lets がどこにかかるかが曖昧(Ambiguity)になっており、use the time ~以下が埋め込みコマンド(embedded command )になっているところでもあると思います。

Developing trance: You may be able to either go into trance as we speak or you will alter your consciousness and experience.

トランスを発展させる:「あなたは、私たちがおしゃべりしている時トランスに入ることができるかもしれません・・・・そうでなければ、あなたは(自分で)意識と経験を変容させるでしょう。」


Arm levitation: Your unconscious will either raise the hand off your lap or your conscious mind will notice it half way to your face.

腕浮揚:「あなたの無意識は、膝から腕を話して上げるでしょう・・・そうでなければ、あなたの意識はあなたの腕が顔を目指して途中まで上がっていることに気づくでしょう。」


Age regression: The memory may be from the age of five or about the time you entered grammar school.

年齡退行:「記憶は五歳の時からのものかもしれません、・・・そうでなければ、あなたが高等小学校に入った時のものかもしれません。」


Learn from experience: You can either learn from this experience or use the learning in a directed fashion for our own benefit.

経験から学ぶ:「あなたは、この経験から学ぶことができます・・・そうでなければ、私たちの利益を得るために方向をあわせてこの学びを使うことができます。」


Use learning after trance: Will you use these learnings after trance or change your maladaptive behavior?

トランスの後、学びを用いる:「トランスの後あなたはこの学びを使いますか?・・・それとも適応していない振舞いを変えますか?」


余談ですが、ロジカル・シンキングのようにMECEに整理されていないような格好で本当は対比できない選択肢に耳を傾けたり、あるいは、あえてそういった整理されない形式の情報を相手にぶつけてみるというのは案外重要なことなのだと思ってきます。

(つづく)

文献


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