2013年5月31日金曜日

ダブル・バインドにはご用心(その8)

                               

 心理療法家のミルトン・エリクソンが暗黙知として活用していた治癒的ダブル・バインドに対して、色々な学問的フレームワークをあてて形式知化し、統合失調症の原因仮説としてのダブル・バインドを取り出したのは人類学者のグレゴリー・ベイトソン(のグループ)ということになるわけです。

それで、英国のケンブリッジあたりに生息するニュートンあたりから続く無宗教の家系に生まれたベイトソンが晩年、禅に傾倒していて最期はサンフランシスコの禅センターで亡くなったことを考えるとベイトソンが見出していたであろう「ダブル・バインドの言語パターンと禅問答の共通性」について色々な妄想が沸き起こってくることになりますねぇ。()

独り言


ダブル・バインドと変性意識

さて、引き続きダブル・バインドについて書いておきましょう。Amazon で知らない間に目が飛び出るくらいプレミアがついていますが、個人的にも座右の書となっている学術論文集であるスティーブン・ギリガン博士の「The Legacy of Milton H. Erickson: Selected Papers of Stephen Gilligan[1]の中に以下のような記述があります、


 The ideas that paradoxical injunctions create altered states is rooted in the Bateson groups formulation of the double bind hypothesis(Bateson, Jackson, Haley, & Weakland ,1956; Haley ,1963)

 「パラドキシカルな導入(インジェクション)は変性意識をつくる」という考え方はベイトソン・グループが体系化したダブル・バインド仮説に基づいている。(ベイトソン、ジャクソン、ヘイリー、ウィークランド 1956;ヘイリー , 1963)


 この場合、インジェクションはTOC思考プロセスでいうインジェクションのように、ある状況に対する、「言動による働きかけ」と考えるとしっくりくるわけですが、ある状況においてこのような「言動による働きかけ」がパラドクスを形成すると、主体は変性意識状態に入るという仮説が説明されているわけです。

それで、ざっくり言うと、変性意識は通常の意識の延長にあるという考え方と、まったく別の意識状態であると考える学派の2つがあったと記憶していますが、 Wikipedia の変性意識の説明を読むと以下のように書かれています。[2]


An altered state of consciousness (ASC),also called altered state of mind, is any condition which is significantly different from a normal waking beta wave state. The expression was used as early as 1966 by Arnold M. Ludwig and brought into common usage from 1969 by Charles Tart. It describes induced changes in one's mental state, almost always temporary. A synonymous phrase is "altered state of awareness".Altered states of consciousness can be associated with artistic creativity or different focus levels. They also can be shared interpersonally and studied as a subject of sociological research.

 変性意識(心の変性状態とも呼ばれる)は、通常のβ波の脳波の状態は著しく異なる状態である。この表現は、早いところでは1966年にアーノルド・M・ルードヴィッヒにより用いられ、1969年にチャールズ・タルトによってより慣用的に用いられるようになった。変性意識は、ほとんどの場合、一次的にメンタルの状態に変容を引き起こす。同義の表現は「自覚の変性状態」であり、変性意識は、芸術的な創造性もしくは異なるフォーカス・レベルに関連している。変性意識は、個々人の間で共有することができる、また社会学的研究の課題として研究される。


 このあたりからすると、ある意味、禅問答を一つ投げるだけで一瞬にして変性意識状態に入る、あるいはその状態で既存の枠組みの外に出ることもあり得るわけで、このあたりが短期療法と禅問答の共通点なのでしょう。[3]
(つづく)

文献
[3] http://www.filoeduc.org/childphilo/n4/NadiaKennedy.pdf

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