2013年6月11日火曜日

ダブル・バインドにはご用心(番外編 その2)

                                  

 個人的に思うのは、ダブル・バインドから抜け出すのを阻害している大きな要因はその状況で起こる、気持ちや情動だと思いますねぇ。

 つまり、否定的で激しい情動が起こると、そのダブル・バインドの構図を観察して、そこからどう抜け出すのか?を考えているどころではないのでしょうから(笑)。
独り言


トランスの定義 

ダブル・バインドと言えば、人類学者のグレゴリー・ベイトソンらによって統合失調症の原因仮説として取り出されたダブル・バインド(Schizophrenic Double Bind)と、心理療法家のミルトン・エリクソンが暗黙知として使っていた治療的ダブル・バインド(Therapeutic Double Bind)があり、ある意味これは表裏一体であるわけです。


それで、一般的には、Schizophrenic のほうのダブル・バインドに陥っている時は、ここから抜け出すほうが良いわけですが、ある意味この状況は、ドキドキハラハラといった情動とともに周りの状況が見えないほどテンパっているわけであり、冷静さを欠いていることのほうが問題ということになってくるわけです。

それで、ミルトン・エリクソンの技法ということになってくるわけですが、第11回国際エリクソン会議のジョン・レンツ博士のハンドアウト「Trance-Altering[1]を読んでいると中々興味深いことが再確認できるわけです。

この中では、エリクソニアンのマイケル・ヤプコ博士とジェフリー・ザイク博士の両者のトランスの定義が援用されて、レンツ博士はその両方が同時に起こる状態としているわけですが、短い定義の中に非常に深いところを感じるわけです。で、具体的には、


Michael Yapko says that trance is a state of dissociation.


ヤプコは、トランス状態というのは分離の状態だと言っています。例えば、高所恐怖症の人が高いところに登ったところを想像して、普通ならは恐怖という感情や情動が沸き起こるところなのですが、例えば、認識と情動が分離されており、そういった状況を想像してもある意味冷静にその状況の中に居られるという状態のことを差しています。


Jeff Zeig says it is a state of focused attention.


一方、ザイクは、トランス状態は、五感の注意が(ある範囲で)焦点化された状態である言っています。個人的にはこの範囲をすごくミクロに取るのか、あるいはマクロに取るのかでその状態は違っていくる、と思っていますが、いずれにしろ何かの対象に対して、ある範囲で五感の注意が焦点化された状態だと言っていることになります。


I say it is both. Simply for clarification I define trance as either positive or negative. A positive trance expands our thinking, options and is focused utilizing all of our resources. While a negative trance is the opposite. A negative trance reduces our focused attention to a narrower field. Both are useful. ( By the way what I define as positive trance can be used
easily to enhance learning for folks with some learning problems)


それで、レンツ博士はトランスの定義はヤプコとザイクの言っていること両方であると少々深いことを言っていることになります。つまり五感の注意はある状況に焦点化されているにもかかわらず、傍観者として気持ちや情動とは切り離された視点がポツンとあるだけ、といった状態ということになります。で、ここでは話を単純化するために肯定的なトランス状態と、否定的なトランス状態という具合に二元論として説明されていますが、肯定的なトランス状態というのは、思考や選択肢の幅を広げ、利用可能なありとあらゆる資源・資質を活用することに焦点が向けられるということになります。

 また、ここで面白いのは否定的なトランス状態も小さなことだけに向いている焦点を広げるために有効であり、結果、肯定的なトランス状態も否定的なトランス状態もどちらも有効であると変化のために使えるものはなんでも使うというように Both and のロジックで語っているのがいかにもエリクソニアンらしぃということになるのだと思います。

それで、最終的には以下のリンクで書いたように、資源・資質を探るためにもっとも最適な心身状態をつくってアイディアや行動が創発されるのを待つということになってくるのだと思ってきます。


それで、これがダブル・バインドとどのように関係あるのか?と言われるとレンツ博士のハンドアウトの後ろのこっそりと、資源・資質を活用するために、


You can utilize a double positive bind so that no matter what they do it is right.


何をやっても良い結果になるように、ダブル・ポジティブ・バインドをつくってねと書いてあるわけですが、例えば、「今週中に必ず失敗することを1つ行なってください、上手く行けば、あなたは必ず失敗することに成功します。もし、失敗することに失敗したら普通に成功します。」のような禅問答を使うことを考えると中々面白いように思ってきます。

それと余談ですが、当然トランス状態というのは何か唯一無二な状態が存在しているのではなくて、その状態への入り方、その状態、その状態からの出方は、人それぞれにユニークだということになります。(笑)

(つづく)

文献
[1]http://www.ericksoncongress.com/IC11/handouts/WS18-TrasAltertingInterventions.pdf



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