2013年7月14日日曜日

家族療法のIPと組織の動力学



 よく政治家や経済団体のお偉サンで「仕事の出来ない人間はさっさと解雇してしまえば良い」などと威勢の良いことを言っているのが居るわけです。

もちろん、「仕事の出来る」、「出来ない」というのは組織の動力学の中で考えなければいけないわけですが、ここに家族療法のシステム論的な知見を持ち込むと面白いものが見えてくることになります。

組織の中で仕事が出来ない人や問題行動ばかり起こす人は、組織を維持するために意識的にせよ無意識にせよ、しかたなくその役割を負っている、と。

つまり、組織の抱えている真因が解決されない限りは、局所最適解として、仕事の出来ない人間を解雇してもまた誰かが同じ役割を演じるようになる・・・という具合です。

それで、組織全体、あるいは、システム全体を見ないで、都合の悪い現象だけ取り除けば問題は解決されると考えることは、非常にスジの悪い局所最適な考え方以外の何ものでもないわけだけれど、こういった考え方を実行に移すと問題も解決されなければ、中長期的には組織を疲弊させる以外何も生み出さないのだよねぇ。(笑)
 
 独り言


IPという考え方

インターネットで使われている通信プロトコルのTCP/IPIPとは全く関係ないのですが、家族療法の中にIP(Identified Patient)という考え方があります。[1]

元々、人類学者のグレゴリー・ベイトソンのチームが行なっていた家族療法[2]の研究から生まれた概念でもあるわけです。

家族療法の場合は、家族を一つのシステムと考えるところから始まります。それで、個々人を課題を取り扱うのではなく、問題のある家族やグループを一つのシステムと考えていてこれを治療単位とするのが家族療法の特徴でもあります。

特に、症状や問題行動を起こしている個人を特にIPと呼ぶわけですが、単純にこの個人が悪いと考えているのではなく、その症状のおかげ(Positive Intention)で家族システムの均衡が維持されていると考えるのが、特徴でもあるわけです。

それでIPとして症状や問題行動を取る人を、システムの歪を調整するためにその役割を負わされてしまっていると考えると考えることにもなります。

それで、IPの症状を抱えている人だけに対して個人単位の治療や解決策を実行しても、それは局所最適で一時的な対処療法に過ぎないということを意味していることにもなってきます。

ニューギニアの部族の組織の動力学にサイバネティクス的知見を持ち込んだベイトソンの処女作「Naven」を読めば分かることですが、個人的にはこれはプロジェクト・マネジメントを行う場合のプロジェクトのチームなどにも当てはまると考えています。

例えば、特定のチームの進捗がいつも遅延しているといった場合、そのチームのやり方に問題はないか?という視点以外に、より大きなプロジェクト組織の動力学の中でこのチームがどのような影響を受けているのか?もっと大きな枠組でのフィードバック・ループを考えなければいけないということでもあるわけです。

また、余談ですが、こういったシステムに対処する方法を欠いた単に個人を対象にした自己啓発セミナーのようなものが日常生活や仕事の場面でまったく役に立たない理由が腑に落ちてくるのも面白いところなのでしょう。(笑)

(つづく)

文献
[2] https://en.wikipedia.org/wiki/Family_therapy



記事の内容の正誤について、執筆者は一切保証いたしません。また、本書の内容、エクソサイズなどを実行した結果被った被害などについて著者は一切責任を負わないこととします。本ニュースレターの内容は、以下クリエイティブ・コモンズ・ライセンスに従うものとします。但し、引用元の著作権は引用元に所属します。ご意見、ご感想は次へ tritune'`@''gmail.com



0 件のコメント:

コメントを投稿