2013年12月13日金曜日

サイバネティクスから見た、変化と適応とダイバーシティ



  企業でやっているダイバーシティの本当の目的は、変化に適応できるように組織に多様性をもたらすこと、だと思いますけれどねぇ、女性社員や女性管理職を増やすとか、身障者の方を雇用するというのではなく。もっとも、多様性を増やそうとした結果、女性社員や女性管理職や身障者の方の雇用が増えるのは良いことだと個人的には思っています。

 ダイバーシティ・プログラムというと「女性管理職を増しましょう」とかちょっと的外れでスジの悪い議論が横行している感じがするわけです。そもそもこの目的は何か?と。それで、ここにもサイバネティクスのフレームワーク特に「最小多様度の法則(Law of Requisite Variety)」を当てて考えると企業が多様性を増やさなければならない、かなり前向きな理由が見つかります。

 簡単に言うと、外部環境が変化した場合、それに1)気付く2)反応する3)受け入れる、という「変化への対応」能力を向上させるためには多様性を確保しておかなければならないということになります。もちろん、思考や行動に多様性を持ったほうが、収益が向上すると統計ベースで調査されている資料も見つかります。

 ですから外資系企業などが全世界で展開しているダイバーシティ・プログラムには、当然、営利企業がやっているわけですから、その背景には企業の利益になる何らか確固たる根拠があるということなのですよねぇ。逆に日本企業がダイバーシティ・プログラムを取り入れる場合には、やっぱりこのあたりの根拠を自分たちなりに理解していないといけないのだと思います。

ひとり言


最小多様度の法則

 最近は多くの企業でダイバーシティ・プログラムなどを行なっており、女性管理職を増やそうとか身障者や高齢者の方々の雇用を増やそうと躍起になっているようなところがあります。で、ネットでダイバーシティということばを検索すると以下のような定義が書かれています。[1]


雇用の機会均等、多様な働き方を指すことば。もともとは、アメリカにおいてマイノリティーや女性の積極的な採用、差別ない処遇を実現するために広がったもの。その概念が広がりを見せ“多様な働き方”を受容する考え方として使われるようになった。日本においては、人種、宗教等よりは、性別、価値観、ライフスタイル、障害等の面に注目した多様性として捉えられている傾向がある。現在、人権等の本質的な観点だけでなく、将来的な少子高齢化による労働力人口の減少等に対応した人材確保の観点から“ダイバーシティ”に取り組む企業が増加している。


 それで、「なぜ、ダイバーシティをやるの?」と聞くと、いい年をした大手企業の担当者からもまともな答えが返ってこない非常に残念な状況になることも少なくないと思うわけです。例えば、毎年女性管理職の多さで表彰されている某外資系コンピュータ企業などはダイバーシティをやればやるほど日本での売上が少なくなっていっているという悲しい事実があったりするわけです。(笑)これでは、「なぜ、ダイバーシティをやるのか?」事実ベースで答えると、営利を目的として企業経営の視点からは「単なる慈善事業として」としか答えられなくなってしまいます。

 もちろん、ここでは女性を管理職にするな、といった的外れな議論をするのが目的ではありません。そもそも論として「なぜ、ダイバーシティを行うのか?」「多様性を持つことで企業は何か利益があるのか?」というその理論とその実証については話したいわけです。

もちろん、個人的には女性の管理職も当然いたほうが良いし、身障者の人や高齢者を含め色々な人がいる組織のほうが良いと思っているわけですが、ユダヤ系の科学者さんの思考ではないのですが、ダイバーシティをやることの根拠は何か?をもう少しきちんとしたレベルで考えておきたいというのがここでの動機だというわけです。

 そこで Google 先生に聞いて見つかったミシガン大学ビジネス・スクールの論文「REQUISITE VARIETY AND FIRM PERFORMANCE: AN EMPIRICAL EXPLORATION 」[2]これに非常に面白いことが書かれています。

 この根底にあるのは、サイバネティクスの研究者ウィリアム・ロス・アシュビーの「最小多様度の法則(Law of Requisite Variety)」です。「最小多様度の法則」とは、外的環境に対して、組織がネガティブ・フィードバックで反応することを前提に、システムが複雑に変化する環境にたいしてシステム境界を維持しうるためには、システム制御の多様性を増大させなければならない。つまり、制御の多様度だけが、環境からの外乱の多様度を引き下げることが出来るという法則です。[3]
 
 もっと、簡単に言うと、外的な環境の変化に対応するためには、組織の中にもその変化以上の多様性を持っておかなければいけないということなるでしょう。つまり、単一的なことしか考えられず、変化に対していつもワンパターンな反応しか考えられない組織は変化に弱い、つまり変化に上手く適応出来ずに衰退してしまうということになってきます。

 もちろん、こういって言うだけなら簡単なのですが、上の論文では、IPOに成功した174のソフトウェア開発会社に対して、どれだけ多様度を持っていたのか?を調べる調査方法について具体的に書かれています。但し、残念なのは結果がどうだったのか?それが書かれていないので具体的には担当者にお問い合わせするということになるようです。

 それで、類似の論文「THE EFFECTS OF FLEXIBILITY IN EMPLOYEE SKILLS, EMPLOYEE
BEHAVIORS, AND HR PRACTICES ON FIRM PERFORMANCE」[4]を読んでみましょう、ここでは、主に、従業員のスキル、実際の振舞いの多様性や柔軟性がどれくらい組織のパフォーマンスに影響を与えるか?数字ベースで調査してあるのがこの資料ということになるわけです。数字だけ書くと全体を考えずに結果だけがひとり歩きするので、それは書きませんが、多様性、柔軟性とパフォーマンスや収益には相関関係が見られるのは明らかです。

 それで、女性管理職を増やそうと躍起になっている某外資系コンピュータ会社に話を戻すとは女性管理職の数は増えても、組織の多様度は増えていない、という仮説を思いつくことになるわけです。もちろん、これを測定するためには、上で紹介したミシガン大学の調査方法のようなことを使って検証する必要があるでしょう。

それで、組織に多様性をもたらすためには、元々人類学者のグレゴリー・ベイトソンがニューギニアのイアトムル族を研究し、それをポール・ウォツラウィックがまとめた、「コミュニケーションの試案的公理」にも関係してくるわけですが・・・・・ダイバーシティを組織に組み込もうとした場合は、同一性に焦点をあてる対称的(シンメトリー)なコミュニケーションよりも、異質性に焦点をあてる補完的(コンプリメンタリー)なコミュニケーションが出来るようにならなければいけないことを示唆しているように思ってくるわけです。例えば、違っていることは良いことだ、とか、違っていることを認めようというそういった文化を育む必要があるということになるでしょう。


 もちろん、サイバネティクス的に考えると、変化に適応しやすい組織をつくったから多様度が増えて、シンメトリーなコミュニケーションが優位になるのか?あるいは、シンメトリーなコミュニケーションが優位になるから変化に適応しやすい組織になるのか?は円環的因果関係で相互に循環するような形式になるのでしょうが、ここに女性や高齢者、身障者の方々が組織に加わることで多様度が上がり、結果、変化に適応しやすい組織が出来るとすれば、それはそれで素晴らしいことのように思えてくるわけです。

(参考)
http://ori-japan.blogspot.jp/2013/12/blog-post_3.html
 
(つづく)

文献

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