2015年11月9日月曜日

組織が割れる理由

 

 マネジメント・コンサルタントの立場としては、組織を構成する、人と人との<関係性>について非常に気を配るところではありますねぇ。まぁ、<情>を保留して、ひたすら<非情>にサイバネティクス的な視点で見ると、組織が割れる理由も、崩壊する前に修復可能かも、見えてくるところではあるのですけれどねぇ(笑)。
 

  • 組織の分裂は避けられないのか?


 最近、<組織の分裂>のニュースを頻繁に目にします。


 政党の分裂、暴力団の分裂、ラーメン・フランチャイズの分裂、家具店の経営陣の分裂・・・・・・と分野を問わず至るところで起こっている現象だと言ってもよいでしょう。


 もちろん、会社、家族、人間関係の中でこういった<組織の分裂>は避けられないことのようにも思えますし、意図せぬ組織の分裂はその構成員に苦痛を与えることも少なくありません。


 私自身も、駆け出しの時の失敗として、ベンチャー企業の分裂、あるいは、分裂が原因となったプロジェクト組織の崩壊・・・、メンバー同士の折り合いの悪さが原因となった案件の失注など、身近で経験したこともあります。


 もちろん、組織が発展的に分裂することはかならずしも悪いことではないですが。喧嘩別れのような場合だと、相互に実害を受けることにもなるでしょう。


 さて、ここで、マネジメント・コンサルタントの立場からは以下のような疑問が浮かびます。


  • 組織が崩壊するプロセスなりパターンなりの研究は存在するのか?
  • 組織の崩壊を防いだり、逆にそれを加速する理論や方法は存在するのか?


 
 それで、結論から言えば、この研究はある、というのが答えです。


 その一つが、人類学者グレゴリー・ベイトソンがニューギニアで行ったフィールドワークが元になっており、サイバネティクスの知見を人の関係性に持ち込んだ理論だというわけです。[1] その後、この理論は短期療法、家族療法などに応用されていくことになります。


 2007年にカリフォルニア州サンタ・クルーズに1ヶ月ほど滞在した時、ダウンタウンの古本屋で古本を物色中、カリフォルニア大サンタ・クルーズ校でのベイトソンの教え子だと名乗る初老の女性に勧められた『Naven』を購入して読んだのがきっかけです。


 で、ベイトソンは分裂生成をシズモジェネシスと命名し、その背景にある<関係性>のパターンを取り出すわけです。[2] また、ベイトソンが研究したイアトムル族は、日本の歴史で見られるような中央集権的なリーダーを持っておらず、自然発生的に結合した集落で取り出したパターンであることには注意が必要です。


  • 関係性のパターン


 ここで簡単に書いておくと、1)シンメトリー、2)コンプリメンタリー、3)レシプロシティの3パターン。後、おまけに4)メタ・コンプリメンタリーの4つについて書いておきます。


シンメトリー(Symmetry):個々の関係で、差異が最小化される方向で特徴づけられる関係。エスカレーションや競争が起こると(組織の)機能不全やシズモジェネシス(分裂生成)が発生する。例えば、この状況は一方が他方を支配下に置こうとする試みが失敗した時に発生する。


コンプリメンタリー(Complementary):個々の関係で差異が最大化される方向で特徴づけられる関係。差異が極度に固定化されたり、強調されるされると個々人の二極化が起こり、機能不全やシズモジェネシスが発生する。例えば、一方が他方の要望を無視したり無関心が強化されるような場合に発生する。


レシプロシティ(Reciprocity): シンメトリーとコンプリメンタリーがそれぞれ適度にバランスしている状態。シズモジェネシスを避けることができる。ベイトソンはイアトムル族は男女の役割を入れ替えて行う司祭『Naven』が分裂生成を防いでいるという仮説を思いつく。


 さて、ブリーフ・セラピストや家族療法家、あるいはマネジメント・コンサルタントは、組織の分裂生成を防ぎたかったら、シンメトリ、あるいはコンプリメンタリーな関係が組織を崩壊させるまえに、レシプロシティな関係になるように、イベントやお祭りめいたものまで含めて色々な打ち手を行うことにになります。細かい打ち手は状況によって違うでしょうから、ここでは具体的には書きませんけれども・・・・


メタ・コンプリメンタリー(Meta-Complementary):ベイトソンと心理療法の研究をしていたことのあるジェイ・ヘイリーによれば、この関係性にメタ・コンプリメンタリー(Meta-Complementary)が追加されており、心理療法家とそのクライアントの関係性として提唱されているところがあります。[3]


 もっとも、メタ・コンプリメンタリーな関係を築く必要があるのはコンサルタントも同じで、相手の上手く言っている部分を指摘する場合も抽象度を上げて、◯◯の理論からすると、よい傾向であるとか、枠組みの外側からある意味冷静な評論家のように指摘する。顧客認識や行動の差異を認めてもらえるような関係構築が要点のように思えてきます。逆に言うと、クライアントとメタ・コンプリメンタリーな関係が構築できないと、セラピストやコンサルタントとしては成功しないようにも思います。


 それで、多くの組織は何らかの打ち手でもって何とか分裂せずに踏みとどまっているようにも思えてくるわけですが、冒頭でも出した、既に分裂してしまった組織がどのようなプロセスでもって分裂したのか?を考える枠組みの一つとしては役に立つように思ってきます。


文献


[1]https://books.google.co.jp/books?id=FidFAwAAQBAJ&pg=PA365&lpg=PA365&dq=reciprocal+relationship+schismogenesis&source=bl&ots=xGhqe7UULg&sig=ALZDMrbz0tsD6YUGZg0r_19NROc&hl=ja&sa=X&ved=0CCgQ6AEwAWoVChMI75vIybr_yAIVx4uUCh1dswIe#v=onepage&q=reciprocal%20relationship%20schismogenesis&f=false
[2]https://en.wikipedia.org/wiki/Schismogenesis
[3]http://georgeyonge.net/sites/georgeyonge.net/files/Kotze_Family_ChIII.pdf
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