2016年5月20日金曜日

PDCAが上手行かない理由



 PDCA(デミングサイクル)は万能ではない。

 このサイクル自体はネガティブ・フィードバック・ループ(バランス型フィードバック・ループ)で実行される。

 また、(サイバネティックス的な)コントロールは事後。

 つまり、リアルタイム性が求められない、品質を一定のゴールにバランスさせるような製造管理、品質管理など一部に限定される。逆にいうと、ポジティブ・フィードバック・ループ(自己強化型フィードバック・ループ)が必要な、イノベーティブな開発、営業などにはまったく向いていない。
                   


PDCAは万能ではない

   したり顔で「PDCAサイクルを回すと必ず効果が出る」と言うような人がいるが、安易にPDCAサイクルを導入したり、盲目的に実行するのはやめた方がよい。個人的にはこう思っている。特に営業でPDCAサイクルを回すとか愚の骨頂だ。
 
  さて、新卒で入社した会社はデミング賞を受賞した会社だった、入社当時はTQM活動が盛んだった記憶がある。つまり何でもPDCAにカイゼン、カイゼンというヤツだ。

   面白い取り組みもあった、業務改善提案を文書にして出すとたしか¥700/1件、実行すれば ¥500円増えて、¥1,200もらえるという仕組みだ。もちろんゴミのような提案も山程ある。が、本当の意味での品質改善や効率化の提案も年に何件か出てくる。少なくとも何かを提案しようという心理学的な動機付けにはなっていたのだろう。

 しかし、いつの間にかTQM活動も効果が限定的になったためか、社内でも忘れ去られていったように記憶している。つまり品質の向上が即業績に向上につながるわけではないということだ。この間の変化としておそらく、製造のほうは、仕事の主たる活動がイノベーションのほうに移って、実際の製造はEMSで委託する形式が増えたため、また、対法人の営業活動により力が入っていったためだと考えている。決められたことをミスなくやっても物やサービスが売れるわけではないということだ。戦術やオペレーションで優れていても戦略で負けてしまっては意味がない。その意味ではシリコンバレーの会社なのだ。

   で、ここで何を言いたいか?というと一般的に言われているPDCAサイクルもハマるところと効果が見込めないところがあるということだ。

 ほとんどの人はサイバネティクスを知らない。だから間違った状況に間違ったプロセスを当てはめても理解できない。逆に、サイバネティクスの視点で見ればPCDAサイクルも箱の外に出てメタの視点で記述することが可能になる。つまり、何が変数で何が定数なのか分かる。結果、実態に合わせて、プロセスのチューニングが可能になる。喩えるならば、山に登るのに海水浴の準備をして行くようなトンチンカンなことは防げるということだ。

http://ori-japan.blogspot.jp/2013/10/blog-post_6.html

  • PDCAはネガティブ・フィードバック・ループで回される

   さて、第一の重要な点は、PDCAはネガティブ・フィードバック・ループ(バランス型フィードバック・ループ)で回されるということだ。[1]

   http://ori-japan.blogspot.jp/2015/09/blog-post.html

 つまり、ゴールとなる数値に対して偏差が縮小する方向で活用される。これは品質のように決められた手順で製品の品質を一定に保つような場合には有利だ。

 しかし、営業のように1億円の目標に対して、1億円丁度売ろうと考えているような営業が居るとしたら絶対に目標は達成できない。これは、野球のバッターが3割を狙っているような場合、3割打つには隙あらば1本でも多くヒットを狙って高い目標を狙うやり方で無いと目標を達成できないのに似ている。短期療法のひとつであるソリューション・フォーカスト・アプローチの言う「Do More」だ。3割丁度を狙って3割を打てるわけはないのだ。細かいミスは気にせず、より多くの点数を上げたほうが勝ちというようなポジティブ・フィードバック(自己強化型フィードバック・ループ)で回す必要のある仕事にはそもそも向いていないということになる。その意味では営業はPCDAではなく確率統計と数値に基づいたファネルをDo More でマネジメントするべきなのだ。

 同様に、イノベーションが期待されるような仕事にも向いていない。イノベーションは、セレンディピティ的な偶発的な出来事を変化として取り入れる必要があるが、PDCAはそうなっていないからだ。だから、常識の枠組みを超えて何かを行うようなイノベーションにも向いていないことになる。イノベーションはシリコンバレー企業のように多産多死、手当たり次第にプロトタイプをつくって市場に出してみて、死屍累々の中から残ったのもを大きく成長させるというようなやり方でないと難しい。ゼロを1にする仕事にはPDCAなんてクソ食らえということだ。但し、このやり方は品質よりアイディア勝負のところはある。

  • 方法論の導入はポジティブ・フィードバック・ループで行われる

 PDCAサイクル自体に根本的な矛盾がある。これはPDCAというよりその他の方法論にも通じる話だ。

 以下で書いた話にも通じるのだが、簡単にいうと新しい方法論を導入するためには、<変化への抵抗を抑えて>認識や行動の変化を促すためにポジティブ・フィードバック・ループを使う必要がある。コンサルティング会社が高いカネをとって行う<チェンジ・マネジメント>がこれだ。

http://ori-japan.blogspot.jp/2015/12/blog-post_6.html
http://ori-japan.blogspot.jp/2013/12/blog-post_7.html 
 
 しかし、PDCAについては決定的な欠陥がある。つまり、PDCAはネガティブ・フィードバック・ループで回すものだが、方法論の導入はポジティブ・フィードバック・ループで行わなければならないという矛盾があることになる。この矛盾を解決するために強引にトップダウンでPDCAを導入する。確かに方法論の導入はうまくいくかもしれないが、案外イノベーティブなアイディアは出にくいつまらない会社になってしまうのは必至だ。結局、決められたことを正確に実行できるだけ、ということになる。コンプライアンスを過度に重視しすぎて営業がガタガタになった、というのはよく聞く話だ。

  • リアルタイム性にかける

 プロジェクト・マネジメントやプロセスの制御ににコントロールという概念がある。文字通り<制御>ということだ。何かのタスクを行う場合に、プロセスを定義しコントロールを行う。

 このコントロールは主に3種類ある。[2]

  1.  Go/Not Go コントロール
  2. サイバネティクス・コントール
  3. 事後コントロール
 1.はプロセスの前だけ、2はプロセスの途中を柔軟に、3はプロセスの事後だけで行う。

 ほとんどの制御はインプットを絞る、増加させるなどの方法でこのうちの何れかのコントロールが行われる。それで、PDCAは基本的に事後コーントロールとなる。つまり、事前や途中で修正のできないとろいプロセスということになる。[3]

     ツラツラ書いたが、要は単なるPDCAなる言葉だけを考え、その本質を考えないことは効果がでないばかりでなく、骨折り損のくたびれ儲けとなることでもある。

 結論は何かというと、サイバネティックスを学べということかもしれないが(笑)。事実を観察して事実を把握し、考えに考え抜いて都度打ち手を考えろということなのだろうなという気もしているところだ。

(つづく)

文献
[1]https://books.google.co.jp/books?id=gDl-AgAAQBAJ&pg=PA35&dq=deming+cycle+negative+feedback+loop&hl=ja&sa=X&redir_esc=y#v=onepage&q=deming%20cycle%20negative%20feedback%20loop&f=false
[2]http://www.yourarticlelibrary.com/projects/project-control-mechanism-3-types-of-project-control-mechanism/24442/
[3]http://www.amazon.co.jp/dp/4822251381

記事の内容の正誤について、執筆者は一切保証いたしません。また、本書の内容、エクソサイズなどを実行した結果被った被害などについて著者は一切責任を負わないこととします。本ニュースレターの内容は、以下クリエイティブ・コモンズ・ライセンスに従うものとします。但し、引用元の著作権は引用元に所属します。ご意見、ご感想は次へ tritune'`@''gmail.com
https://www.facebook.com/okirakusoken

0 件のコメント:

コメントを投稿