2016年7月14日木曜日

ミルトン・エリクソンの系譜:抵抗を利用して理想の状態へ成り行く


                                                                                                                             
 戦略モデルは普通に使うとまったく機能しない。

 理由は、<抵抗>を引き起こし、まわりにケンカを売るようなモデルだからだ。

 但し、<抵抗>を推進力に変える方法を知っていれば、非常に強力な変化を起こすことが可能だ。

 <ひとりごと>



理想を明示すればするほど抵抗は強くなる

  心理療法家のミルトン・エリクソンは自身の技法を形式知の体系として残さなかった。したがって、モデルや図式を使ってエリクソンの技法を説明しているのは弟子たちということになる。例えば、ヘイリーはエリクソンの心理療法を<戦略>的だとみた。[1]




 難しいことを言っているわけではない。ビジネスでコンサルタントがよく使う<現状:AS-IS>から<理想:TO-BE>を達成するモデルだ。例えば、TOC(Theory of Constraints)は、この本質をシンプルな3つの質問で表している。
 

  • 何を変えるか?(現状)
  • 何に変えるか?(理想)
  • どうやって変えるか?(方法、プロセス)

 
 たったこれだけのことだ。が、何回も声に出して読むと、深い、ことが分かる。

 さらに、質問を言い換えると以下のようになる。
 

  • 今どこにいるか?(現状)
  • どこに行きたいか?(理想)
  • どうやってそこに行くのか?(方法、プロセス)

 
 スコープは異なる。ビジネスの場合、外的世界に実現されるサービスやモノが主たる対象になる。例えば、現状のITシステムを理想のITシステムとするためにどうするのか?現状の業務を理想の業務とするためにどうするか?が対象だ。これは以下で書いたようなフレームワークでまとめられる。もちろん、企業風土改革などの場合もあるのだが・・・


 一方、エリクソンの場合は、心身状態、認識のやり方、人間関係の認識、あることに対する心身の反応・・・のように主に内的世界が対象となる、あるいは内的世界と外的世界の循環のもと内的世界から始める。この場合、例えば、以下のような質問に還元される。
 

  • 今どのような心身状態か?(現状)
  • どのような心身状態になりたいか?(理想)
  • どうやってそこに成り行くのか?(方法、プロセス)


余談だがエリクソンを継承するエリクソニアンは<在り方:Being>ではなく、構成主義的に<成り方:Becoming>を重要視する。その意味、エリクソニアンはシステムをオートポイエティックに見ている。
 


  • 今の認識や出来事に対する反応はどうか?(現状)
  • どのような認識や反応をしたいのか?(理想)
  • どうやってそこに成り行くのか?(方法、プロセス)

 
これも驚くほどシンプルだが、世の中そう一筋縄ではいかない、つまり意識的にこの質問をしたからと言って答えが得られるわけではない。理由は<現状>や<理想>あるいは<方法、プロセス>を明示すれば明示するほどそこに<抵抗>が生まれるからだ、しかもそのほとんどは無意識に。[2] 陽の光が強くなれば強くなるほど、その影もまた濃くなるということだ。

 このことを考えていない考えの浅いコーチングや自己啓発はだいたい失敗する。その理由は<抵抗>への対処をまったく考えていないからだ。まわりに助けてもらおうとして目標を宣言する、結果、足を引っ張られる。よくある話ではある。あるいは、目標を明示する。自分の中の葛藤はより強くなる。結果、目標達成を放棄する。



 戦略を明示することで、抵抗も明示される。抵抗には以下のようなものがある。


抵抗1:わたし、わたしたちに問題、課題は存在していない。(現状)
抵抗2:あなたには、わたしたちの問題、課題が分かっていない。(現状)
抵抗3:問題の解決方向、方針に同意できない。(理想)
抵抗4:その解決策では望んだ結果を生まない。(理想)
抵抗5:解決策はよいが、思わぬ副作用を生む可能性が高い。(理想)
抵抗6:解決策を実行することが非常に困難である。(方法、プロセス)
抵抗7:変化することに、コトバに言えないほど恐怖を感じる。(方法、プロセス)


 おおよそ、会社や日常生活で遭遇する<抵抗>のほとんどはこれだ。ほとんどの人はサイバネティクス的にネガティブ・フィードバック・ループで行われる<現状維持>が一番気持ちよいのだ。

  相手の問題を指摘する。普通は冷静に対処する前に「お前からは言われたくない」「問題なんてない」と言われる。これはエリクソンが相手にまずは○○病や○✕症というような病理に基づかないモデルを使っているのと裏返しの関係となる。[3]

 もちろん、エリクソンはこの抵抗を利用しながら逆風の中風上に進むヨットのように進んでいくことができる技法を持っている。抵抗が強ければ強くなるほど、理想へ進む推進力も強くなるということだ。

 例えば、その技法の一つとして間接暗示というのがこれにあたるだろう。[4]  戦略的アプローチだが、敢えてそれを意識にのぼらないやり方で理想への変化のプロセスをサイバネティクス的にポジティブ・フィードバック・ループで進める。

 また、別のやり方として、抵抗を<利用:Utilize >するということも可能だろう。抵抗や偶発的な出来事を逆手に取ってそれを推進力に変える方法だ。[5] 開放系のシステムを意識して外から変化を取り込む。

    また、別のやり方として、治療的ダブル・バインドや逆説的介入を使う、つまりパラドクスをうまく利用するというやり方だ。[6] 変化への抵抗が大きければ大きいほど、変化した場合は既存の枠組みの延長ではない第二次変化(Second-Order Change)が起こる。

・・・・・・・・・・

   こうやって書いているときりがないのだが、コーチングだろうが、戦略コンサルティングだろうが、人や自分自身とのやり取りの中で<抵抗>をどのように抑え、あるいは利用してどのように理想の状態を目指すのか?は必ず考えておかなければいけないことだ。たかが<戦略>されど<戦略>。理想を追い求めれば追い求めるほど、それに対する<抵抗>が強くなることは留意しておかなければならない。仮に関係者が自分だけだとしても無意識の抵抗は考慮しておかないと理想の実現は失敗する。

(つづく)

文献
[1]http://www.mftlicense.com/pdf/sg_chpt4.pdf
[2]http://ori-japan.blogspot.jp/2013/03/blog-post_28.html
[3]http://ori-japan.blogspot.jp/2013/03/blog-post_9.html
[4]http://ori-japan.blogspot.jp/2013/03/blog-post_12.html
[5]http://ori-japan.blogspot.jp/2013/03/blog-post_12.html
[6]http://ori-japan.blogspot.jp/2012/04/blog-post_27.html

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