2016年8月22日月曜日

ミルトン・エリクソン:デモ、1958年11月@パロアルト


                                                                                                                             
 何回見ても飽きない、好きな映画みたいになっているなぁ(笑)。

 <ひとりごと>



一回で治るわけではないけどねぇ・・・

   Youtubeに心理療法家のミルトン・エリクソンが1958年11月に米国カリフォルニア州のパロアルトで行った実験的な心理療法のデモが落ちていたので、これを視聴してみた。もちろん、過去何回も見た映像だが、最近はエリクソンの一挙手一投足の意味についてかなり精度のよいウンチクが語れるレベルにはなっている(笑)。もちろん、英語でも日本語でも再現可能だが。さて、この時、エリクソンは五十代後半、技法は円熟を迎えているという感じだ。




 このセッションの背景については、映像最初のキャプションで語られている。クライアントはディプレッションと書かれている。詳細は、「Milton H. Erickson, M.D.: An American Healer」[1[に記載されている。この前提はデモセッションであり35分の間に心理療法の全てが完了しているわけではない。

 さて、特に面白いのは、①カメラの横にグレゴリー・ベイトソンが構え、②その後ろにワンウェイのマジックミラーがあって、さらに、③その後ろでジョン・ウィークランドらスタンフォード・メディカル・スクールで教えていたMRIの研究員が観察していることだ。もっともMRIが設立されるのが1959年なのでその前身と考えるのが正確だ。また、セッション中エリクソンがクライアントにこの視点の構図を語っている。これは「風姿花伝」にあった「離見の見」[2] で舞台の後ろから自分を観察する視点を意識する構図になっているが、おそらくメタ認知を高める前提としてエリクソンがクライアントに示唆しているように思える。余談だが、ワンウェイ・マジックミラーを使った視点の構図はベイトソンの理論を忠実に再現したミラノ派に継承されている。[3]

 この状態で本当に軽く、トランス誘導を行う。その後のセッションで、クライアントはエリクソンと普通に会話しているので、本当に軽い、儀式程度のトランス誘導だ。このあたりは、Split&Linking などの小技が色々出てくる。この状態でクライアントが課題、問題だと思っていることを目の前に思い描いた映画のスクリーン上にイメージするようにエリクソンが示唆する。その意味ここでやっているのは後のMRIの心理療法のようにプロブレム・フォーカスト・アプローチとなっている。もちろん誤解なきように書いておくと、問題の原因を探ったり分析するのではなく、まずは現状把握から始めるということだ。(ここでは多少過去に遡っているけれど)その意味ではエリクソンの技法の特徴は戦略的だということだ。[4]

 次に、クライアントは具体的な経験スクリーンに投影し、映画館の観客席の視点から臨場感を持って自分の経験を語り始める。このクライアントとのやりとりでは、エリクソンは丁寧にバックトラックをしながら、クライアントの経験を矢継ぎ早に引き出していく。ここでは何か決められた脚本があるわけではない。もちろん定型化されたスクリプトもない。クライアントのコトバや表情をよく観察しながら次々と質問を繰り出していく。

 そして、不思議なことにエリクソンは、クライアントのイメージの抽象度を上げてクライアント自身のメタファーを引き出していく。具体的な経験がいつのまにか象徴的な事物にマッピングされている。そして、そのメタファーのイメージをよりシンボル化する、その後、そのメタファーで語られている事物の属性をクライアントの望む方向へ変化させるように導いていく。例えば、山が紅葉するとかいう一見たわいもないことだ。このあたりは、後にリチャード・コップが定式化したクライアントがつくるメタファーとなっているように思える。[5] もちろん、エリクソンは自分でメタファーの例をクライアントにぶつけているところがある。また、至るところでクライアントに<変化することができる>あるいは<具体的に起こった>
変化>を確認するようなメッセージを伝えている。[6]

 そして、適当なところで極軽いトランス状態から覚めてもらう。そして、近未来のことについて自分の視点でイメージしてもらう。認識や行動の変化を確認してもらう。と、おおよそこんな感じだ。

 もちろん、エリクソンの技法の特徴は特定のカタがないというカタを持っている。そのため、楽譜を見ながらクラシックを弾くというよりは、テーマだけ決めてあとは適当という感じのJazzのようなスタイルで行くべきだろう。

 そもそもこれが何の役に立つのか?言われれるかもしれないが、コーチング形式でクライアントの問題の解決を支援したり、その前に特定の状況でクライアントが望ましい心身状態を引き出せる支援を行うヒントにはなるはずだ。

   余談だが、観念運動に関する質問をどのようにうまく使って、無意識の抵抗を回避しているのか?を映像を視聴しながら考えてみるのも面白いだろう。[7] 

(つづく)

文献
[1]https://www.amazon.co.jp/Milton-H-Erickson-M-D-American/dp/0918172551
[2]http://ori-japan.blogspot.jp/2011/10/blog-post_04.html
[3]http://ori-japan.blogspot.jp/2016/08/blog-post_11.html
[4]http://ori-japan.blogspot.jp/2016/07/blog-post_8.html
[5]http://ori-japan.blogspot.jp/2016/08/blog-post_2.html
[6]http://ori-japan.blogspot.jp/2013/02/blog-post_26.html
[7]http://www.asch.net/portals/0/journallibrary/articles/ajch-51/51-4/cheek51-4.pdf

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