2016年8月15日月曜日

ミルトン・エリクソンの系譜:無知の知、無為の為


                                                                                                                             
 よく出来たミルトン・エリクソンのインダクションと般若心経とは区別がつかない(笑)。

 <ひとりごと>



未来に大成功する可能性がないわけではない(笑)

   米国アリゾナ州フェニックスに非営利のミルトン・H・エリクソン財団というのがある。[1] 心理療法家ミルトン・エリクソンの技法の教育、各種アーカイブの管理などを行っている団体だ。この団体から、エリクソニアン・アプローチを学ぶためのトレーニングのガイドラインが出ているが、これを読むと色々なことが分かり始めてくる。

 はじめにわかるのは<スコープ:Scope>だ。

 コンサルティングやプロジェクトに従事していると、何より<スコープ >が気になる。<スコープ>とは、「何が範囲に含まれるのか?含まれないのか?」「何をどこまでやるのか?」だ。仕事の場合、これが<品質><予算><納期>に直結するため特に気を使う。もっというと、<スコープ>が管理できなければコンサルティングやプロジェクトは破綻したも同然というぐらい最重要の専権事項だ。<スコープ>が管理できていないのは、<品質><予算><納期>が管理出来ていないことと同じ意味だからだ。

 さて、同じようなアナロジーで、何がエリクソニアン・アプローチの<スコープ>で、何がその<スコープ>ではないのか?少なくとも財団が考えている<スコープ>を理解するのは重要だ。それなりの<品質>のものを、想定の<予算>内で、想定した<納期>内に学ぶ有効な手助けになる。空高く飛ぶ鳥の目で全体を俯瞰できる大きな地図が手に入るからだ。おまけとしてインチキに引っかかりにくくなるというのはある(笑)。少なくとも財団の<スコープ>の中にはへんてこスピリチュアルみたいなものは一切含まれていない。

 さて、視点を切り替えてみる。蟻が地面を歩いているようなミクロな視点だ。

 試しに<否定:Negation>というところに焦点を当ててみる。ミルトン・エリクソンの言葉運びが匠な秘密のひとつは、否定文の使い方にある。だから財団も項目の一つに<否定>を割いている。具体的には、否定は、言語の「NO」、「NOT」の使い方だが、エリクソンは兎に角この使い方が小憎らしいほど匠だ。般若心経に<無>というのが一杯出てくるのと同じだ(笑)。ちなみに<空>は、私は<有>と<無>がどう同じであるのか知らないわけではない・・・と二重否定のややこしいロジックになる感じだ。でも、思考の抽象度を上げて、弁証法的に葛藤を解消する補助線にはなる。実際、エリクソンのインダクションにはこういった表現が登場する。

 エリクソン財団公認テキストの「Ericksonian Approaches 2nd Edition」を開いてみる。実際に<否定>の項目に含まれているのは以下の4項目だ。

  1. 二重否定と付加疑問文
  2. 対立概念の併記
  3. Not Knowing , Not Doing 
  4. トゥルーイズムと Yes セット
  詳細はこのBlogのどこかに書いたが、ここでは詳細な技法ではなく、その<ねらい>について考えたい。なぜ、<否定>を使うのか?

 結論から言うと、2つある。
  • 一つは、抵抗を抑え、あるいは回避して理想の状態に成り行く支援のため
  • 一つは、未来の可能性を開くため
 エリクソンの技法は<戦略>的で必ず抵抗を生む。だからクライアントが理想の状態に成り行くためには、抵抗を抑えるなり、回避する必要がある。[2] この手段として、<否定>が使われる。

 もう一つの重要なことは、「無知の知」や「無為の為」を使って未来の可能性を開くためだ。このあたりは説明していると本が何冊かかけるくらいになるが、エリクソンと同じことを言っているのが以下『「無知」の技法』[3]だ。興味がある方はこれを読んで見るとよいだろう。



  個人的には、このロジックを使って記者を煙に巻いたラムズフェルドの言葉[4] とか、ブラックスワン的な何かを連想するところもあるのだが、いずれにしても複雑系チックで興味のあるところではある。

 このあたりの技法は、「家はまだ買うな」のようなコピーライティングや、「デートは今週がいい?それとも来週?」のように少々矮小化されて理解されているところもあるが、もっと本質的な未来創発なところを考えてみるのも一興ではある。もちろん、どこかのコンサルティング会社の受け売りではないのだが(笑)。

(つづく)

文献
[1]https://www.erickson-foundation.org/
[2]http://ori-japan.blogspot.jp/2016/07/blog-post_14.html
[3]https://www.amazon.co.jp/dp/4534053290
[4]http://news.goo.ne.jp/article/gooeditor/world/gooeditor-20061109-02.html

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