2016年8月16日火曜日

ミルトン・エリクソンの系譜:催眠は単なるおまけ


                                                                                                                             
 木も見て、森も見ることができる、

 というのは一つの才能なのかもねぇ(笑)。

 <ひとりごと>



<催眠>は、木を見て森を見ているのか?のよいリトマス試験紙(笑)

  世の中の人を敢えて二分すると、①木を見て森を見ずの人、②木も見て森も見るの人、の2つのタイプに分けられるように思える。①はシステム思考ができない人、②はシステム思考ができる人、と言い換えてもよい。[1] もっというと、システム思考が出来るというのは、サイバネティクスのフレームワークを当てて世の中の事象を要素と要素の関係としてみているか?ということだ。

   「心理療法家のミルトン・エリクソンをどのように見ているのか?」を考えるとこれがよくわかる。①は何でも催眠、催眠、催眠としか捉えられない気の毒な人たち、玉を追いかける猫のように<現象>しか見えていない、②は、催眠は<現象>のひとつに過ぎず、背景にあるもっと大きなループが見えている。催眠無しでもシステム論的な介入があれば人の認識や行動は現状の枠組みを超えて変化する、と考える。①の代表はネットに溢れている催眠バカ、②の代表は、スタンフォード・メディカル・スクールで教えていたMRI(Mental Research Institute)の短期療法や家族療法の基礎をつくった人たちだ。

 さて、催眠の位置づけはどうなっていたか? 

 心理療法家のミルトン・エリクソン自身が「催眠それ自体が何かをするということはありません。しかし、催眠はうまくいくための好ましい(情緒的)雰囲気をあなた(セラピスト)に与えてくれます。[2] と語っていた。要点は、催眠それ自体が悪癖や病気を治したりしないということだ。ただし、クライアントの気持ちを変えたり、将来の可能性に意識を向けてもらうきっかけにはなる。リッチポートの(情緒的)雰囲気の解釈はここで書いた。[3] 料理でいったら、催眠はうどんや蕎麦に入れる香辛料、鮨でいったらワサビや醤油の役割で、決して主役ではないということだ。香辛料がなくても料理は食える。逆に香辛料を丼いっぱい盛られても、食えたものではない。さらにいうと、エリクソンと17年も交流したヘイリーは「<戦略的>アプローチでは、対話では変化を導けないことを前提としている。変化を起こすためには、行動を起こさなければならない」といった。[4] 非常に現実的で示唆深い。

   さて、MRIのポール・ウオツラウィックと弟子のジョルジュオ・ナルドネの著作「The Art of Change : Strategic Therapy and Hypnotherapy Without Trance」[5] はタイトルからして意味深で面白い。要は、戦略療法と催眠を使わない催眠療法、ということだが、「催眠を使わない催眠療法」というのが、コーヒーの入っていないコーヒーみたいな禅問答的で面白いところがある。要は、催眠を使わなくても、適切な状況設定と逆説的介入やリフレーミングがあれば人はウオツラウィックのいう現状の枠組みを超えて第二次変化(Second order change)が可能になるということだ。これは孫引きで書いた。[6]

 で、面白いのは、ミルトン・エリクソンにサイバネティクスのフレームワークを当てて、徹底的にエビデンス・ベースドで本質だけに凝縮したらこうなりました、というところだ。

    ちゃんとしたエリクソニアンは、人の思考の枠組みや行動がどのように変化するのか?を最初に学んで、次に香辛料としての催眠をうまく使う工夫をする。大抵は博士号持ちだ。だから、人の変化が支援できる。もちろん、MRI系で催眠を使わない流派で行くという選択もある。一方、そのあたりの催眠スクールは、催眠だけやって人の変化の理屈は学ばない。だから結果が出ないのですぐ潰れる。まぁ、当然の帰結だ(笑)。

 結論を急ごう、最近はネットも便利になって②の人たちがつくったパロアルト・モデルについて書かれた論文「Brief Therapy Based on Interrupting Ironic Processes: The Palo Alto Model」[7] というのが読める。MRIのパロアルト・モデルは今ココの問題のパターンに焦点をあてて、そのパターンを崩すというプロブレム・フォーカスト・アプローチで、後発のソリューション・フォーカスト・アプローチとは表裏一体の関係なのだが、1)対人間のコミュニケーションの相互作用と2)戦略性、の2つに焦点を当てて読んで見ると面白いだろう。このあたりを理解すると、個人のコーチングでも組織のチェンジ・マネジメントでもきちんと商売として継続的に支援できるようになる。

 さて、世の中には目に見えるわかりやすい<現象>であふれている。もちろん、<現象>に脊髄反射していたのでは疲れるだけだ。大抵はモグラ叩きで、骨折り損で終わる。その意味では<現象>の背景にあるもっと大きなループを見るように努力するとよいのだろう。一本一本の木をメタの視点で見ることで、もっと大きくて素晴らしい森が見えてくるように思えるからだ。

(つづく)

文献
[1]http://ori-japan.blogspot.jp/2013/10/blog-post_16.html
[2]http://ori-japan.blogspot.jp/2016/06/blog-post_56.html
[3]http://ori-japan.blogspot.jp/2016/07/blog-post_1.html
[4]http://ori-japan.blogspot.jp/2016/08/blog-post_2.html
[5]https://www.amazon.com/Art-Change-Strategic-Hypnotherapy-Behavioral/dp/1555424996
[6]http://ori-japan.blogspot.jp/2012/01/blog-post_23.html
[7]http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2789564/#R55

記事の内容の正誤について、執筆者は一切保証いたしません。また、本書の内容、エクソサイズなどを実行した結果被った被害などについて著者は一切責任を負わないこととします。本ニュースレターの内容は、以下クリエイティブ・コモンズ・ライセンスに従うものとします。但し、引用元の著作権は引用元に所属します。ご意見、ご感想は次へ tritune'`@''gmail.com
https://www.facebook.com/okirakusoken

0 件のコメント:

コメントを投稿