2016年9月19日月曜日

ミルトン・エリクソンの系譜:エリクソニアン・アプローチの特徴


                                                                                                                             
 人は何からでも学べる。

 特に、反面教師から学ぶのは大事だ(笑)。

 <ひとりごと>



抵抗を受けないようにツッコむのは学びの第一歩(笑)。

  備忘録として書いておく。

 《誤りからも学ぶ》ネットに転がっているミルトン・エリクソンについて書かれた記事はかなり不正確なものが多い。例外として信用できるのは、英語で書かれた学術記事だけだ。もちろん、こいう不正確な記事にも良い点はある。反面教師として学べるということだ。ツッコめるということは、ある程度正確にエリクソニアン・アプローチについて理解している証左ともなる。本物のエリクソニアンを指向する人なら<無用の用>[1]を使って路傍の石ですら自分の学びに変えることができるだろう(笑)。もちろん、自分で本物と言うと胡散臭さ倍増なのだが・・・(笑)。

事例》さてこんなのがある。悪意があるわけではない。単なるネタだ。

 「エリクソン催眠誘導とは10分で相手を深い催眠状態に導いてしまう驚異の催眠誘導法、・・・・そのまま使える誘導スクリプト・・・・・・」

 どこから突っ込んでよいのかわからないくらい誤解が多い。が、これはこれで面白い。自分の学びにはなる。

はじめは見立て》第一に、宴会芸ではないのだからエリクソンは催眠導入を目的にセッションを進めるわけではない。[2] はじめは、ラポールをつくってクライアントの話を聞く、相手が何にどのように反応しているのか?どういったコンテクストで問題を引き起こすパターンがつくられ、それが継続しているのか?それを見立てるところから始まる。いきなり催眠誘導して何かが治るのだったら誰も苦労しないはずだ。逆にいうとそのクライアントだけにある何かのパターンを人類学者並にひたすら観察するところから始まる。余談だが、エリクソン自身がセラピストに人類学を学ぶように勧めている話は書いた[3]。推測するに、一つはセラピストが観察の際に人類学者のような<メタの視点>を取れるようにすること、と心理療法に変数として文化や風土、その家族独自のルールが及ぼす影響が大きいと考えていたということだろう。

オーダーメイド》第二に、誰にも使えるスクリプトの類は存在しない。エリクソンはすべてのクライアントに対してオーダーメイドのやり方を指向している。人が一人ひとり唯一無二の存在であるように、当然、介入方法、メタファー、導入の内容・・・こういったものはクライアント一人一人に対して異なっていて当然と思っていたはずだ。見立てた後でそのクライアントだけのメタファーを考えた話は書いた。[4]少なくともスクリプトを参考にするのだったらどこが定数でどこが変数か?は示されていないと不親切だろう。[5]

催眠の深さは指向しない》第三に、エリクソニアン・アプローチは<深い>催眠を目指しているのではない。ゴールは何らかの治癒なり行動パターンの改善だ。「ミルトン・エリクソン心理療法」[6] にこんな記述がある「早くも1948年には、直接暗示はなんらかの形でクライエントに影響を与えるけれども、治癒はそういった直接暗示の結果ではなく、その問題の特定のコンテクストで必要とされる体験を再結合させることによって生じるものであることを認識していた」のように重要なのは<経験の再結合>をリソースにすることであって、ハーバードやスタンフォードの催眠尺度[7]でいう<深い>催眠状態に導入することは目的としていない。

   逆に、ソリューション・フォーカスト・アプローチのコーピング・クエスチョンなどを駆使して<経験の再結合>ができれば催眠などなくても効果が得られるという理屈でもある。一例だが<経験の再結合>とは、「あの時なんとかなったのだから、今回もなんとかなる」という確信を引き出し、自己効力感を高め、具体的に機能しそうなアイディアを実行してみる、というようなことだ。

 《マイケル・ヤプコの比較表》 こんな感じでやっていくと、小一日話していても終わらなくなるのだが、エリクソニアンのマイケル・ヤプコがまとめた各アプローチの違い[8]は非常に参考になるだろう。余談だがつまらないコーチングや自己啓発にありがちな「答えはすべてあなたの中にあります」とならずに「外からの関係性によっても答えはもたらされる」と考えているのもエリクソニアンだと分かってくるのだが(笑)。何れにしてもエリクソンは開放系(オープン・システム)につながることで、この力を最大限利用するように促しているように思える。


項目古典標準(学術研究)      
エリクソニアン
個別対応
NO
NO
YES
催眠状態は日常の延長と考える
NO
NO
YES
自然主義的
NO
NO
YES
セラピストのスタンス
権威主義的
権威主義的/許容的
権威主義的/許容的
クライアントを指示に従わせる
高い
高い
低い
クライアントとセラピストとの力関係
セラピストが強い
セラピストが強い
対等
コンテンツ指向かプロセス指向か?
コンテンツ指向
コンテンツ指向
コンテンツ指向とプロセス指向の両方
催眠導入の成功率
一部
一部
基本的に全員
抵抗の源泉
自己のみ
自己のみ
対人/自己の両方
※家族療法への応用
抵抗への対処
対立もしくは解釈
対立もしくは解釈
利用(ユーティライゼーション)
催眠の深さを強調
YES
YES
NO
正規の非暗示性テスト
実施
実施
実施しない
治療プロセスの構造
直線的
直線的
モザイク
セラピストの洞察の価値
低い
低い
高い
症状の意図の見方
否定的
否定的
肯定的
症状の原因
自己
自己
自己もしくは対人間
※人間関係への介入の理由
症状に対処?活力を上げるアプローチ?
両方、あるいはいずれか
症状に対処
両方、あるいはいずれか
二次利得の認識
NO
NO
YES
無意識の性質
否定的(問題の原因)
否定的
中立(問題の原因にも解決の資源にもなる)
無意識の役割
受動的
受動的
能動的


(つづく)

文献
[1]http://ori-japan.blogspot.jp/2016/08/blog-post_23.html
[2]http://ori-japan.blogspot.jp/2012/05/vs_31.html
[3]http://ori-japan.blogspot.jp/2016/08/blog-post_8.html
[4]http://ori-japan.blogspot.jp/2012/04/blog-post_29.html
[5]http://ori-japan.blogspot.jp/2012/07/blog-post_16.html
[6]http://ori-japan.blogspot.jp/2014/05/blog-post_13.html
[7]https://en.wikipedia.org/wiki/Hypnotic_susceptibility
[78]https://www.hypnosisalliance.com/articles/What%20Is%20Ericksonian%20Hypnosis%20-%20Michael%20Yapki%20-%20Bernie%20Zilbergeld%20-%20Gerald%20Edelstein%20-%20Daniel%20Araoz.pdf

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