2016年10月30日日曜日

ファシリテーションの技術:ミラノ派家族療法を応用する(その15)


                                                                                                                             
 システムを変化させるには、レバレッジ・ポイントを探せ。

 そして、システムから抵抗を受けないようにレバレッジ・ポイントに

 間接的に介入せよ。

 <ひとりごと>



仮説-検証で得られた「秘孔」を突け

  備忘録として書いておく。

 《おまえは既に・・・》システム思考の考え方に、「レバレッジ・ポイント」というのがある。システムを変化させるための「秘孔」のことだ。ここを突くと少ない労力でシステムに大きな変化が起こる。「秘孔」の引用元は、『北斗の拳』だが(笑)。

 もちろん、「秘孔」というぐらいだからすぐには見つからない。だから、システムとしての人や組織をまじまじと観察し、仮説を立て、そして「秘孔」と思しきポイントを突いてみる。こういった「仮説-検証」のアプローチが必要になる。当然、見立てがよいと試行錯誤は少なくて済む。ここで、「お前はすでに変わっている!」と言いたいところだが、この変化は当然クライアントの要望にあったものでなければならない(笑)。

見立ての仕組み》さて、ミラノ派家族療法について書いてきた。ひとつの理由は、これが心理療法家のミルトン・エリクソンの形式知になっているからだ。つまり、エリクソンが暗黙的にやっていたことが明示されているところがある。だから、ミラノ派を学ぶとエリクソンの理解が進むことになる。余談だが、ミラノ派を学ぶとオープンダイアローグが分かるのも副作用の一つだ(笑)。

ミルトン・エリクソンは誤解されているところも多い。例えば、「猫も杓子も最初から催眠誘導する」というようなものだ。

 これは誤解だ。詳細はこのあたりで書いた。まず、エリクソンはクライアントと充分な面接をする。共著者のアーネスト・ロッシによれば、面接の成果物が30ページ程度のメモ書きになる。そして、エリクソンは推敲に推敲を重ね、そのクライアントだけに適用できる、わずか数行程度の間接的な示唆を取り出す。そして二回目以降のセッションで、エリクソンはこれをクライアントにデリバーする。こういう手はずになる。

 要は、この「数行程度の示唆」がシステムのレバレッジ・ポイントに働きかけるように意図されていることだ。エリクソンのコトバは、一見、魔法の呪文のように思える。しかし、「数行程度の示唆」のその背景には膨大な「仮説-検証」があるということだ。

 では、エリクソンはこれをどのように行ったのか?

 MRI(Mental Research Institute)やミラノ派の家族療法を学ばないと永遠の謎ということになる。もちろん、100%ではないが、こういった技法には(第二次サイバネティックスなどの)システム論をモノサシに取り出したエリクソンの見立てが反映されているからだ。

さて、おしゃべりが過ぎた、

介入の質問》ミラノ派は円環的質問をすること自体が介入となる。これはエリクソンの間接アプローチの継承だ。セラピストは中立的な視点から質問だけを行う。これは、セラピストに対するクライアントの抵抗を回避することにつながる。ただし、介入はセラピストが介入を意図して行い、同じ円環的質問で充分な見立ての後、仮説にもとづいて実施する。介入の質問の中には、さりげなく、パラドクスやリフレーミングを挿入しておく。もちろん、クライアントが変わりたい方向に即している必要がある。

 一例だが、介入のための挑戦的な質問は、このあたりで書いた、ベイトソンの(統合失調症的)ダブルバインドをぶつけてみるとよいだろう。「奥さんに暴言をはくのはいつ止めるのか?」という具合。

 もちろん、逆に円環的質問の中に、エリクソンの(治癒的)ダブルバインドを入れておくとよいだろう。詳細はこのあたりで書いた。余談だが、家族療法の場合は意識/無意識のダブルバインドを「意識=あなた自身」「無意識=集合としての家族」ような感じで使うとよいように思う。例えば、「家族が問題の解決に取り組んでいる間、あなた自身は何かそのことに気づいているのかもしれません、で何かに気づいていますか?」のような質問。

さて、本題。

 








 個人的には、家族の個々の構成員の関係が「コンプリメンタリー」と「シンメトリカル」のどちらの傾向にあるか?また、それを強めるのか弱めるのか?[1] で眺め、関係性そのものにパラドクスを当てるような介入を考えているところがある。もちろん、家族や組織をシステムとして見ているのだが、案外役に立つのは言うまでもない。

余談だが、ミラノ派は1990年前後から日本に導入され、期待とは裏腹に急速に衰退していったという記事を何かの心理療法の本で読んだことがある。理由は、おそらく、エリクソンの技法やグレゴリー・ベイトソンの理論を深いところまで理解せずミラノ派の表面的なフレームワークを当てはめて使うということだけに終始した結果のようにも思える。もちろん、推測に過ぎないが。

 個人的には、ミルトン・エリクソンの暗黙知を説明するために都合がよいので書いているだけであり、実際に使っている技法はエリクソニアン・アプローチだ。ただし、やはりミラノ派のような形式知があると自分のエリクソンへの理解が広がるのも事実だ。

(つづく)

文献
[1]http://ori-japan.blogspot.jp/2016/10/blog-post_6.html

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